ボンネットに謎の穴(ダクト)があるクルマがちらほら存在します。この穴は一体どのような意味があるのでしょうか。
■ボンネットの「謎の穴」はなんのため?SUBARUの答えとは
一部のクルマには、ボンネットに穴(ダクト)が設けられているものがあります。
たとえばスバルでは、「レヴォーグ」や「WRX」など複数の車種でダクトが採用されていますが、一体この穴はどのような役割があるのでしょうか。
ボンネット上にある穴の正式名称は「エアインテーク」です。
エアインテークの役割は、空気(走行風)を効率よく取り込み、エンジンルーム内に設置されたインタークーラーの冷却を担っています。
インタークーラーとは、ターボ搭載エンジンなどで過給された空気を冷却するための熱交換器のこと。インタークーラーの多くはエンジン上部に備わっており、これに空気を取り込むために、直上にエアインテークが設けられているのです。
しかし、多くのターボ車に搭載されていたエアインテークですが、現在は技術の進歩によって小型化していき、やがて廃止するクルマが増えていきます。
少数派となったエアインテークですが、スバルでは現在も採用車が多く、2023年に登場した新SUV「レヴォーグ レイバック」にも搭載されています。
では、なぜスバルは現在もエアインテークを採用しつづけているのでしょう。
これについて、スバルのメーカー担当者は次のように話しています。
「スバルのターボエンジン搭載車両は全て同じ位置(エンジン上後方)にインタークーラーを設置しています。
アウトバックやフォレスターなど、ボンネットが比較的高い位置にある車両は、インテークのダクトをボンネット裏スペースに収めており、フロントグリルから冷却空気を取り込みます。
しかしレヴォーグ、WRX S4などボンネット前端が低いデザインの車両は、ダクトを収めるスペースがないこと、また、ボンネット上のエアインテークが『スバルのハイパワーターボ車』のアイコンとして受け入れられていることから、引き続きエアインテークを採用しています」
このように、クルマの構造の問題だけでなく、高性能なターボを搭載する“象徴”として引き継がれていることから、今でも一部モデルでエアインテークを採用しているようです。
また、フロント部分に極力余計な構造を設けていないことで、衝撃を吸収し衝突時の安全性を保護するという意図もあるようです。
■スバル車の「ダクト」実は2種類ある!?
SUBARUのターボ搭載車には、全てエアインテークが搭載されています。
スバルのターボ搭載車には、実は全てエアインテークが搭載されています。
搭載場所は2パターンあり、ボンネット上にインタークーラーが設けられている「ボンネット上置き(フードダクト)」型と、エンジンの前にインタークーラーがある「前置き(インナーダクト)」型に分かれています。
「ボンネット上置き」型は、ボンネットに穴が空く昔ながらのタイプです。これにはメリットがあるといいます。
「上置きのメリットは、ボンネット中央の負圧が発生する部分にエアインテークを配置することで、効率的に空気を取り込める点です。特に低中速域(100km/h以下)では、前置き型のインタークーラーよりも優れています。
また、前面衝突時の安全性能を損なわずに設置可能であり、スバル特有の水平対向エンジンのインマニ後方スペースを有効活用できるのも利点です」(スバル担当者)
さらに、インタークーラーを通過した空気の流れをトランスミッションの冷却にも活用できるため、冷却性能が全体的に向上します。
また、先述のように高性能をデザインで表現できるメリットがあります。
しかし、ボンネット上置き型にはデメリットも存在します。
高速域(100km/h以上)では、ボンネット表面の空気流が剥離し、冷却性能が低下する可能性があります。これを改善するためにダクトの高さを上げると、反対に風切り音の増加やデザインへの影響が懸念されます。
また、スペースの制約から、インタークーラーの容量を確保しにくいという課題も。
一方の「前置き(インナーダクト)」型は、ボンネット上に開口部をもたないものです。メリットについて先出のスバル担当者は以下のように話します。
「(メリットは)フードデザインをシンプルに保てる点です。また、車速にかかわらずインタークーラー通過流速を確保しやすいという利点があります。また、前面衝突性能を悪化させることなく設置可能です」
ただし、前置き型にもデメリットがあります。フード下にダクトを通すため、フード前端の高さが一定以上必要となり、車両デザインに制約が生じます。
そのため、フードに十分な高さがあるレガシィやアウトバック、フォレスターのような車高が高いモデルで採用され、デザインと機能を両立させることが可能となっています。