広大な室内空間と利便性が魅力のミニバンですが、かつて日産はメーカー純正チューニングが施されたミニバンが存在していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■家族では乗れない爆速ミニバン「エスパスF1」とは?
昨今、広大な室内空間と利便性がユーザーの心を掴み、家族層を中心に人気を博しているミニバン。
そんななか過去にルノーは、利便性を度外視し、パフォーマンスを追求した奇想天外なミニバンを発表していました。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマとは「エスパスF1」です。
エスパスは、1984年に登場したルノー初のミニバンで、スチール製シャシに樹脂製パネルを組み合わせた斬新なデザインが特徴です。
1991年には2代目が登場し、初代のコンセプトを維持しつつ、より洗練されたデザインで欧州市場での成功を収めました。
そして1995年にエスパスの誕生10周年を記念して、2代目をベースに製作されたのが「エスパス F1」です。
一見するとエスパスのデザインを踏襲しているように見えますが、その実態はまさにF1マシンと呼べるほどの性能を誇ります。
この特別モデルは、F1チーム「ウイリアムズ・ルノー」が1993年シーズンで使用した最高出力800馬力・最大トルク520lb-ftの3.5リッターV型10気筒エンジンをミッドシップに搭載。
そこに、トランスミッションは6速セミATを組み合わせるという前代未聞の仕様でした。
さらに軽量化を図るため、カーボンファイバー製のパーツが多用され、0-100km/h加速はわずか2.8秒、最高速度は310km/h以上に達するというミニバンとは思えないスーパーカー並の驚異的なパフォーマンスを実現しています。
この高性能を支えるために、ワイドボディや極端なローダウン、巨大なリアウィングなどが装備され、エクステリアはもはや標準のエスパスとはかけ離れていますが、ミニバンらしいシルエットはわずかに残されています。
一方インテリアは、4つのバケットシートが備えられた4人乗り仕様となっているのにくわえて、ロールケージも装備されるなど、もはやファミリーカーの要素はほとんど見られません。
そして、2列目の中央にエンジンが剥き出しで搭載されているという斬新なレイアウトとなっています。
このため、車内の静粛性はほぼ皆無で、まさに走るレーシングマシンそのものです。
エスパス F1は、ワンオフのコンセプトモデルとして製作されたため市販化はされませんでしたが、その衝撃的な存在は今なお伝説として語り継がれています。