中央道の三鷹料金所を抜けて都心方面へ進み、高井戸IC手前の右カーブに差し掛かるところで、トンネルをくぐることになります。山も無いのになぜあんなトンネルがあるのでしょうか。
■新たなトンネルで車線増加
中央道の三鷹料金所を抜けて都心方面へ進み、高井戸IC手前の右カーブに差し掛かるところで、唐突にトンネルをくぐることになります。
すでに23区内に入り、特に山があるわけでないのに、なぜあんなトンネルがあるのでしょうか。
この「烏山トンネル」は全長245m。しかし、その役割からすれば、くぐりぬける「トンネル」というより、道路に蓋をかぶせる「シェルター」という表現が正しいものです。
実はこれ、周囲に騒音や排気ガスを拡散させないための構造物として作られました。全国的にもレアケースで、兵庫県宝塚市の中国道にある「青葉台シェルター」などのほか、あまり見られません。
全国で珍しい事例なのは、当時の世相も反映しています。1960年代後半は高度経済成長の弊害として、公害問題が顕在化。対抗して住民運動も力をつけはじめた時期でした。そんな最中の1970年に着工を迎えたのが中央道でした。
烏山地区では、数年前に完成したばかりの「烏山北団地」の真南をつらぬく形で、中央道の高架が建設されることとなります。当然、騒音や排ガスなどの問題を直接受けるということで、国や公団などに対し激しい反対運動が展開。通常の遮音壁では認められないという主張が行われました。
最終的に建設への合意を取りつけた条件のひとつが、この「シェルター」の設置だったのです。
その後、環境基準や周辺環境をふまえた道路規格などの整備が進められ、行政的に「環境に悪くない状況とは何か」が明確化されていくこととなります。時代にまだ各制度が追い付けていない短い時期に、行政と地域のあいだで歩み寄りを模索した結果が、烏山トンネルと言えるかもしれません。