軽自動車とほとんど変わらないボディに3列シートレイアウトを備えた「超小型」ミニバンが三菱から発売されていました。どのようなクルマなのでしょうか。
■スズキ、ダイハツもラインナップした「低価格&狭小ミニバン」とは
現在コンパクトな3列シートミニバンといえば、トヨタ「シエンタ」とホンダ「フリード」がツートップです。
しかしこの2車種が登場する少し前には、さらに小さな小さな3列シートミニバンが存在していました。
ファミリーカーの主役が、セダンからミニバンへと移行しつつあった2000年前後。
この頃は過渡期ならではのさまざまなクルマが登場しました。
中でもユニークだったのが、軽ワンボックスワゴンをベースとした3列シートミニバンです。
ミニバンよりも小さな“ミニミニバン”ともいうべきこのクラスには、スズキ「エブリイ+(後にエブリイランディに改称)」、ダイハツ「アトレー7」とそのOEMであるトヨタ「スパーキー」、そして三菱「タウンボックスワイド」がありました。
なお先駆者ともいうべきスバル「ドミンゴ」は1998年に生産を終えています。
車名からわかるように、各ミニミニバンのベースは、スズキ「エブリイ」、ダイハツ「アトレー」、三菱「タウンボックス(ミニキャブ)」といった軽ワンボックスモデルですが、なかでも特に異彩を放っていたのがタウンボックスワイドです。
何が“異彩”だったのかというと、大きく2つ。まずはスタイリングです。
寸法は全長3605mm×全幅1535mm×全高1810mm。軽モデルと比べても全長で210mm、全幅は60mm大きくなった程度の超コンパクトサイズとなっています。
エブリィ+とアトレー7が、ベース車両をそのまま上級化したようなデザインだったのに対し、タウンボックスワイドは当時販売していたラリー競技向けのベースモデル「パジェロエボリューション」のような派手なオーバーフェンダーを強調したスタイルで登場。
2トーンカラーも設定され、ライバルたちとは一線を画する雰囲気を放っていました。
バンパー中央に配置されていたリアのナンバープレートが、四輪駆動車「パジェロ」のようにバックドアの左にオフセットして取り付けられたのも、ユニークなところ。
もうひとつの注目点は、インテリアです。
インストルメントパネルなどは、ベースとなるタウンボックスやミニキャブと同様で目新しいものはなかったものの、前から2名/2名/2名となる3列シートの6人乗車(セカンドシートは独立したキャプテンシート!)になっていました。
サードシートは、ライバルたちが一般的なベンチシートを採用して快適性に重きをおいていたなか、タウンボックスワイドは荷室の広さを重視した格納式となっていたことも特徴。
荷室の両壁面に格納される折りたたみ式で、ヘッドレストもなくまるでバスの補助席のような簡易なものでした。
三菱のプレスリリースには、「荷物を積載する場合は、クォータートリム内に収納し、最大限の荷室を確保できる構造とするなど多彩なシートアレンジメントを実現してホビーワゴンとしての使い勝手を追求した」と書かれています。
なお、パワートレインは1.1リッターの3気筒ガソリンエンジン(4A31型)で、当時ラインナップにあった「パジェロジュニア」と同じものを搭載。
2WDと4WDがあり、4速ATのみの設定でした。発売時の価格は、2WDが139.8万円、4WDが151.8万円と廉価だったことも注目されます。
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この微妙な3列シートが災いしてか、アクの強いエクステリアが不評だったのかは、今となっては判断しづらいところではありますが、結果的に成功したとはいえず、およそ2年で販売を終了。
販売台数は、わずか3450台程度だったと言われています。なお2024年9月現在、大手中古車情報サイトの掲載は2台のみでした。
ライバルがまっとうな乗用ワゴンを目指した中、パジェロや「RVR」「シャリオ」などのRV(今でいうSUV)がヒットしていた三菱は、他社とは違う路線で勝負したといえるでしょう。
またホビーワゴンとしての使い勝手を追求したという意味では、「デリカミニ」の原点といってもいいかもしれません。
同様のコンセプトで今、デリカミニを少しだけロングにした3列シートミニバンが出たら……と考えると、ちょっと楽しいですね。