2024年9月3日から14日まで学生フォーミュラ2024が開催されました。自動車メーカーやサプライヤーなどが注目するこのイベントとはどのようなものなのでしょうか。
■学生の熱い戦いに企業が注目する理由とは
学生が競い合う競技といえば、様々なスポーツ、そしてイベントが存在。有名なものでは高校野球の甲子園が挙げられます。
またものづくりの観点から言えば「ロボコン」や「鳥人間コンテスト」も有名です。
一方で様々な企業も注目する自動車業界においては「学生フォーミュラ」というものがありますが、どのようなものなのでしょうか。
学生フォーミュラは、公益社団法人 自動車技術会が主催するイベント。
その名の通り、大学や高専、自動車大学校などの学生が自らがチームを組み約1年間でフォーミュラスタイルの小型レーシングカーを企画から開発・製作、そして競技に挑みます。
これらの活動により、学生がものづくりの本質やそのプロセスが学べること。
さらには、車両製作におけるマーケティング、企画、設計、製作、コスト等のクルマをゼロから開発するという総合力が身につきます。
こうしたことにより、学生は自分のスキルを向上させる場として活かせる他、企業は将来を担う有能な人材を発掘出来る場として注目されています。
なお学生フォーミュラ自体はこれまで静岡県で開催されていましたが、2024年は場所を「Aichi Sky Expo(愛知県)」に変更。セントレア空港に隣接することもあり、多くの来場者がありました。
大会スポンサーでは、四輪・二輪メーカーからトヨタ、日産、ホンダ、スバル、スズキ、マツダ、三菱、いすゞ、ダイハツ、日野、カワサキ、ヤマハなど。
完成車メーカーではトヨタ車体、トヨタ東日本、日産車体など。サプライヤーでは大小様々なメーカーがありデンソーやアイシン、豊田自動織機、ジャトコ、ボッシュ、パナソニックオートモーティブ、小糸、ヤザキなどが名を連ねました。
会場は、動的審査(走行など)をする屋外エリアと各チームピットや企業ブースが置かれる屋内エリアに大きく分かれています。
各チームピットでは、学生がゼロから作り上げたフォミュラーカーが置かれている他、ピットレイアウトもそれぞれの学校による特色が見られたのが印象的です。
では、企業から見て学生フォーミュラの魅力とはどのようなものなのでしょうか。
まず自動車メーカーA社の担当者は「以前から学生フォーミュラの存在は知っており、社内にも何人も学生フォーミュラOBが在籍しています。今回、愛知県開催ということもあり、もう少し力を入れて企業のPRをすることになりました。今回初めて来ましたが、個々の学生と直接交流出来るので、未来の人材を発掘するには良い場だと思いました」と語ります。
別の自動車メーカーB社の担当者は「これまでは弊社の総務系の部署が企業PRの担当をしていましたが、それでは魅力が伝わりきらないと思い、今回モータースポーツに参戦している車両を持ち込んでPRに力をいれることにしました。若い学生達が熱く頑張っているのを直接見られるのが良いですね」と話しています。
またサプライヤーC社の担当者は「弊社の人材は、その多くが学生フォーミュラOBだったりします。そうしたこともあり、この場所はリクルートに直結するので、他の就活イベントよりもスキルがある人材を見つけやすいと思っています」と話していました。
また別のサプライヤーD社の担当者は「一般ユーザーや取引会社向けの展示イベントと違い、企業側も即戦力になりそうな人材を見つけられる、学生側も早いうちから気になる就職先を見つけられるという部分で言えば、単純な競技というだけでなく魅力のあるイベントだと思っています」と語っています。
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なお企業の出展内容も様々で、トヨタでは約200km離れた東富士研究所にあるクルマを会場から遠隔操作が出来る実演を行い、注目を集めていました。
またスバルでは学生フォーミュラ出身の社員が自社の魅力を伝えるなど、それぞれ創意工夫を施した内容となっているのも学生フォーミュラの特徴と言えそうです。
■実際に学生フォーミュラに参戦する「大変さ」とは? 日産京都校に聞いてみた
学生フォーミュラ2024は、9月3日から6日がオンライン開催となり、コストと製造審査・デザイン審査などが行われます。
そして9月9日から14日にリアル開催で車検・動的審査・プレゼン審査が行われる流れとなっています。
競技としては、単純に製作したフォーミュラカーが速いだけではなく、「車検」「静的審査」動的審査」という様々な項目を競っていきます。
また車両は主に「ICV(ガソリン車)」と「EV(電気自動車)」に分かれています。
また表彰自体も様々なものがあり総合的なものから動的、静的、特別賞など多角的な視点で審査されているのです。
では、どのような形で学生フォーミュラのものづくりは行われているのでしょうか。
全国に5校の自動車大学校を展開する日産。その中で京都校は、日産から「リーフ」のモーターやインバーターなどを譲り受け、イチからEVフォーミュラを製作して参戦しています。
なおマシンは毎年、英語で書かれたレギュレーションを読み解き、ドライバーの体型に合わせてイチからフレーム構造のボディを製作。
そして、それに合わせたパワーユニットの製作なども行っています。
ゼロから作るフォーミュラカーについて担当する学生は「学生フォーミュラは速さはもちろんですが、車両コストなども重要です。難しい部分はモーターなどの制御を行う回路の製作が難しいです」と話しています。
学生フォーミュラ2024について京都校の担当者は「様々な大学や自動車大学校などが参戦しており、各校それぞれに個性があります。日産校では日産からの技術支援などもありリーフのユニットを活用し、見た目も美しい車両製作を行っています。なお去年は途中でリタイアとなってしまったので、今年はエンデュランスの完走を目標にしています。またすでに今年は見た目が参加校の中で1番綺麗だと評価を頂いております」と語ってくれました。
しかしながら京都校は、エンデュランス自体は完走できていたものの、基準タイムより遅く走っていたことから完走扱いにはならないという惜しい結果となってしまいました。
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このように学生フォーミュラというものは、学生達からすればゼロからのクルマづくりを見せる場として盛り上がっています。
一方で企業側から見れば、単純な学生達のものづくり技術を競うだけではなく、企業が課題としている「人材不足」や「リクルートの難しさ」を解決する「優秀な人材を発掘する」という部分がこのイベントの大きな魅力と言えそうです。