三重県の揖斐川と長良川にかかる、戦前に作られたアーチ鉄橋「伊勢大橋」が、いよいよ見納め間近となってきています。いったいどのような橋で、今後どうなっていくのでしょうか。
■大渋滞の国道1号・国道23号の救世主
三重県の揖斐川と長良川にかかる、戦前に作られたアーチ鉄橋「伊勢大橋」が、いよいよ見納め間近となってきています。
この橋には、他ではなかなか見られない「珍しい道路構造」もあります。いったいどのような橋で、今後どうなっていくのでしょうか。
伊勢大橋は、国道1号の一部として桑名地区と長島地区をつなぐ、延長1106mの鉄橋です。
完成は1934年で、すでに90年が経っています。いかめしいアーチ鋼材が連続する圧巻の風景は、三重~愛知の国道1号をドライブする際のハイライトでもあります。
しかしこの橋は老朽化だけでなく、旧態依然とした2車線道路のままであり、強烈なボトルネックとして激しい渋滞区間となっています。一般道で揖斐川と長良川を渡る橋は周囲に少なく、三重~愛知の交通流がここへ集中することも課題でした。
さらに橋の高さも、現在の河川整備計画では、最大洪水で橋が水没してしまうことになっているため、かさ上げが必要でした。また、戦前の設計ということもあり、橋の基礎が支持地盤まで到達しておらず、津波や地震で倒壊のリスクもありました。
そこで、現在進められているのが「桑名東部拡幅」という事業で、この渡河区間を4車線の橋に架け替えます。
完成すれば、伊勢大橋周辺の国道1号の渋滞は「ほぼ消滅」レベルまで緩和されると試算されています。
アーチ鉄橋は解体され、新たな伊勢大橋は単純な桁橋になり、見上げるような圧巻の構造物はここで見られなくなります。
さて、伊勢大橋にはもうひとつ変わった風景があります。それは「アーチの横っ腹を貫通する接続道路」の存在です。
伊勢大橋は揖斐川と長良川にかかりますが、揖斐川と長良川は道路1本分の細い堤防で隔てられており、そこを走る県道「桑名海津線」が、伊勢大橋の途中で「中堤交差点」として直角交差しているのです。
巨大なカマボコ型のアーチに、まるでドアが取りつけられたように側面が切り欠かれ、そこを接続道路がくぐっていくヘンテコな風景も、伊勢大橋の架け替えで見納めに。ただの「T字交差点」となります。
工事進捗ですが、現場ではすでに橋脚が下流側にずらっと立ち並び、両岸にも橋台が構築完了しました。2024年度になって、いよいよ橋桁架設の段階に入っています。
着工は2015年。完成めどはまだ未確定で「早期完成に向けて事業推進中です」という段階です。いずれにせよ、近いうちに「戦前生まれのアーチ鉄橋」という骨董品級の土木構造物は、まもなく姿を消そうとしています。