日産がかつて販売していたステーションワゴン「ルネッサ」とは、どのようなモデルだったのでしょうか。
■元は「試作EV」… そのデキはなかなか画期的だった
日産が1997年、「乗る人すべてに広々とした快適な室内空間を提供するパッケージングを備えた“マルチ・アメニティ・ビークル”」としてリリースした「ルネッサ」。
文字だけではどのようなクルマなのか伝わりにくいコンセプトでしたが、果たしてどのようなモデルだったのでしょうか。
ルネッサは1997年10月に開催された第32回「東京モーターショー」でお披露目され、即日発売。「“パッケージ・ルネッサンス” ~車輪の上の自由空間~」をコンセプトに開発されました。
ボディサイズは全長4680mm×全幅1765mm×全高1625-1690mm、ホイールベースは2800mmです。
フロントシートからラゲッジスペースまでの室内全体を、一体感のある“一つの部屋”として考え、フラットフロアやウォークスルー、さらには最大で570mmのスライドが可能となるリアロングスライドシートを装着。
さらに、前向き/後ろ向きの2ポジションで使用できるフロント回転対座シートを、一部グレードを除き標準装備。「家族の絆や仲間との繋がりを深める自由な室内空間を実現した」とされていました。
運転席ではコラム式のATや足踏み式のパーキングブレーキを採用し、フラットなフロアを実現。
これにより、リアシートを最前端にセットした「ラゲッジモード」と呼ばれる状態にすると、荷室長が1401mm、荷室容量が1615リッターという広大な荷室スペースを実現することも可能。アウトドアレジャーなどで使用する大きな道具も収納できるようになっていました。
パワートレインには、FFモデルには2リッター直列4気筒DOHCの「SR20DE」型を、4WDモデルには直列4気筒2.4リッターの「KA24DE」型のほか、200PSを発生する「SR20DET」型エンジンを搭載した「GTターボ」グレードが用意されていた点も日産らしいところ。
そしてオーテックジャパン(当時)からは、上級指向のユーザーのために新たに追加された「アクシス」がリリース。
のちに「キューブ」や「ウイングロード」、「エクストレイル」、「ティアナ」など幅広い車種に設定されたアクシスは、このルネッサから始まったモデルとなっていたのです。
そんなルネッサですが、実は電気自動車として開発されたモデルの“内燃機関版”という立ち位置が実際のところでした。
そのため、ルネッサの大きな特徴であるフラットなフロアも、床下に駆動用のリチウムイオンバッテリーを搭載するための副産物だったのです。
一方でフラットフロアではあるものの、“二重底”状態となっていたため、室内空間は高さ方向に不足気味で、回転対座シートも解放感があるとは言えない仕上がりとなっており、開発コンセプトとは異なってやや中途半端な存在となってしまっていたのでした。
そしてルネッサは登場からわずか4年ほどで終売。後継モデルは登場していません。
ちなみに電気自動車モデルは「ルネッサEV」としてリリースされており、10・15モードで230kmの航続距離を実現。
さらに、非接触充電システム、プリエアコン機能、EV 専用デジタルメーター、リチウムイオンバッテリー、ネオジム磁石同期モーター等、現代の電気自動車に通ずる装備を多く持っており、その存在は決して無駄ではなかったといえるでしょう。