横浜市港南区の環状2号線でことし夏ごろ、珍しい植物「リュウゼツラン」が開花を迎え、「数十年に1度だけ咲く花」として全国的に話題に。実はその後、数奇な運命を辿っていました。
■道路に勝手にニョキニョキ 「最後の別れ」とは
横浜市港南区の環状2号線でことし夏ごろ、珍しい植物「リュウゼツラン」が開花を迎え、全国的に話題になりました。
「数十年に1度だけ咲く花」として、ワイドショーでも連日取り上げられたこのリュウゼツラン。
実はその後、数奇な運命を辿っていました。
現場は、地下鉄上永谷駅近くの中央分離帯です。道路の真ん中に、高さ8mにもおよぶ茎が伸びていました。
リュウゼツランは長い年月をかけて成長し、一度花が咲けば枯れてしまいます。今回、その開花の時期を迎えていました。おりしも今年は猛暑の夏で、同様に全国でもリュウゼツランの開花の兆しが現れていました。
テレビでは「珍しい花がついに咲きます!」として、7月はじめごろから開花まで注目。そして同月16日ごろ、ついに開花を迎えました。
それから8月にかけて、リュウゼツランの花は咲き続け、上永谷の新たな名所として、通行人を楽しませました。
さて、花がついに咲いたリュウゼツランですが、そのままシナシナと枯れていったという結末ではありませんでした。
折しも首都圏には、大型で勢力の強い台風10号が接近。リュウゼツランは高さ8mに達し、茎も「木の幹」のように太く硬いため、風で倒れると周囲に危険を及ぼす可能性があります。
そこで、環状2号線を管理する横浜市港南土木事務所は、8月29日にこのリュウゼツランを伐採、撤去しました。
じつは同事務所は、台風が来る前からやきもきしていました。というのも、枯れたら枯れたで、いつ道路上へ倒れてくるかわからないからです。
そもそも、このリュウゼツランは市が植えたものでなく、行政側にとって本意ではない存在。倒れて危害が及べば、管理責任を追及されかねません。通常は伐採するしかありませんが、思わぬ人気の高さに、ひとまず「支柱を立てて倒れないようにする」という保全措置を取りました。
それでも、台風の前にはなすすべもなく、伐採を決めたということです。伐採の現場では、別れを惜しむ見物者であふれていました。
さて、伐採されたリュウゼツランですが、実は今も見ることができます。近隣にある「港南図書館」で展示が行われています。
展示されているのは、リュウゼツランの「根元の茎」と、約100個にのぼる「実」、そして「子株」です。根元の茎は直径20cmにもおよび、その断面はもはや「木」のようです。
図書館によると、後日さらに「葉」も追加で譲りうけたとのこと。「葉はアロエのような感じで、厚みはありませんがトゲトゲしているのが特徴です」(同館長)
伐採した29日からはじまった展示ですが、生の植物のため、腐敗などが始まった場合は展示終了となる予定です。しかし、なるべく長く楽しんでもらうため、横浜市こども植物園から助言をもらい、ふだん包んでいるラップを閉館後に開き、扇風機で乾燥処置しているといいます。
「とはいえ、実を中心に、そろそろ黒ずんできました。なるべく早く見に来ていただければと。実の一部は冷凍保存しておりまして、こちらはまだ青々としています」(同)
港南図書館の公式サイトでも、リュウゼツランの様子が紹介されています。「これを見て来た」という親子連れも多く、この3連休も賑わっていたといいます。今後、伐採されたときの様子も追加で紹介していく予定だとか。
実や子株を活用して「新世代」を伸ばす予定は今のところ無く、「自然に任せるままにしています」とのこと。
全国をにぎわした珍花リュウゼツランですが、まだもう少しその姿を見ることができそうです。