近年はスズキ「ハスラー」やダイハツ「タフト」、三菱「デリカミニ」といった、軽SUVが人気を集めています。一体どのような人に選ばれているのでしょうか。
■男性ユーザーに好まれる「軽SUV」
「ワゴンR」譲りのトールボディに、高められた最低地上高を加えたスズキ「ハスラー」や、実用性や走破性を考慮してダイハツ「タフト」、人気車種の名前を冠してイメージを一新した三菱「デリカミニ」など、近年「軽SUV」への注目度と人気が高まっています。
軽自動車の新車販売台数を見ると、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」、ダイハツ「タント」といった「軽スーパーハイトワゴン」がトップ3を占めていますが、トップ10圏内にはハスラー、タフト、デリカミニの軽SUVもランクインしています(2024年7月時点・全国軽自動車協会連合会調べ)。
軽SUVはどのような人に選ばれているのでしょうか。自動車販売店のスタッフ Y氏に話を聞いてみました。
「(軽人気の中心である)軽スーパーハイトワゴンは、ファミリーカーとして女性も運転するケースが多い印象ですが、軽SUVは意外にも男性オーナーが自らハンドルを握るケースが多い気がします。
弊社で購入されたお客様では、それまで普通乗用車に乗っていた人が乗り換えることも多く、特にアウトドアを趣味としている人に選ばれています。
軽くて燃費も良く、維持費も安く、長尺ものも積めますし、いざとなれば車中泊もできるのですから、わざわざ使いにくいセダンに乗り続けるメリットは少ないのかもしれません」
以前は走行性能や安全面で劣ると言われていた軽自動車ですが、現在では安全装備も充実していることに加え、ターボエンジンの普及で走りもなかなかパワフルになっています。
さらに個性的なデザインや燃費の良さ、税金の安さなど経済的な負担の少なさもあって、実用性を確保しつつも週末の趣味用クルマとして魅力的に感じている人が多いようです。
「アウトドアスポーツの現場までは多少のラフロードも多いのですが、かといって本格的な悪路走破性は必要ないケースがほとんどです。
それよりも普段使いもできて、それなりに荷物が積めて、高級車やスポーツカーほど神経質にならなくていい“適度な道具感”がある軽SUVは、ユーザーにとってとっつきやすさを感じるのではないでしょうか」(自動車販売店 Y氏)
また、アフターパーツが充実していることも重要なポイントだといい、本格的クロカンの「ジムニー」でもそうですが、豊富に販売されている社外パーツなどを組み合わせて自分なりの1台に仕上げる楽しさも、軽SUVが人気の理由のひとつとなっているようです。
実際のオーナーは、なぜ軽SUVを選んだのでしょうか。そして普通車と比較して不満などはないのでしょうか。
ハスラーに乗るSさんに話を聞いてみました。
「ハスラーを選んだ理由は、まずは見た目です。トールワゴン的なボディを持ちつつ、最低地上高も少し高められているけれど、ゴツゴツした印象を抱かせない。また丸型のヘッドライトは愛らしく周囲に対して威圧感がないのも、令和にふさわしいというか。今では経済性を含めて乗り換えて良かったと思っています」
かなり満足感は高い様子ですが、市街地でも、アイポイント(着座位置)が少し高いこと、横幅こそないものの存在感が大きく周囲から認知されやすいこと、それでいて狭い道や段差なども気にしない走破性と、不満はあまりないといいます。
「ターボとはいえ排気量の小ささによる絶対的なパワー不足は否めませんが、法定速度であれば十分満足できます。
強い横風やキツいカーブなどでちょっとふらつくことはあるものの、それも速度を緩めれば安定しますし。クルマにロマンやモテ要素を求めない人にはお勧めですし、乗り換えによる『精神的な軽さ』を感じてほしいです」(ハスラーオーナー Sさん)
また、多人数乗車による長距離の高速走行はさすがにちょっと辛いそうですが、市街地であれば問題ないとのこと。
ちなみに大型スーパーで大量の買い出しなどは、コンパクトで駐車が容易なうえ、荷室も思いのほか広くて実用的なので、以前のセダンよりも使いやすいというのも、気に入っているポイントのひとつだそうです。
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パワーや速さを求めた時代と違い、クルマに求めるものも多様化しています。
近年はフレンドリーなデザインが好まれる傾向にあり、高い実用性とアウトドアでの利便性を併せ持つ軽SUVへの評価も高くなっているようです。