2008年に開催されたデトロイトモーターショーで三菱が発表したコンセプトカー「MITSUBISHI Concept-RA」。”ランエボ”のクーペ版とも呼べるモデルだといいますが、どのようなクルマだったのでしょうか。
■Xベースのクーペモデル「C-RA」とは?
現在ではSUVを主体にしたラインナップを誇る三菱も、かつては「ランサーセレステ」「ギャランラムダ」「スタリオン」「FTO」「GTO」「エクリプス」などの2ドアクーペを生産していました。
そのひとつであるエクリプスは、北米市場におけるスタリオンの後継車という位置付けで1989年に登場。
1990年には日本への輸入が開始され、「逆輸入車」として販売を開始しました。ギャランをベースにしたFFのクーペで、ギャラン譲りの4WD+ターボで武装した「GSR-4」も人気を博しました。
1995年には、曲面的なデザインに変化した2代目も日本に上陸。4WD版は消えた一方でオープンモデルのスパイダーが登場しています。
その後、北米では1999年に3代目、2005年には4代目へと相次いでフルモデルチェンジしたものの、日本ではクーペ市場の縮小、SUV・ミニバン需要の高まりを受けて、3代目以降の販売は行われませんでした。
そのため、4代目エクリプスは日本にまったく馴染みのない世代ですが、1.8mを超える車幅を生み出す力強いフェンダー、丸くコンパクトなルーフがもたらす広くて低いプロポーションは独特の個性があり、価格の安さもあってヒット作となりました。
そこで三菱は、次期エクリプスのデザインスタディと位置付けた2シータークーペのコンセプトカー「コンセプト-RA(Concept-RA)」を、2008年のデトロイトショーで発表しました。
コンセプト-RAの注目点は、やはりデザイン。「ランサーエボリューションX」を思わせる逆スラントノーズと台形のジェットファイターグリルは、これまで歴代すべてがくさび形だったエクリプスとの大きな違いでした。
長いフロントオーバーハングに対して切り詰められたリアオーバーハング、少し前寄りに載せられた小さなキャビンは、まるでミッドシップスポーツカーのようなプロポーションを作っていますが、ランサーエボリューションXをベースに作られたモデルのため、エンジンは前部に横置きで搭載されていました。
その証拠がボンネットの造形です。なんと、搭載するエンジンの外観をボンネットに造形していたのです。レーシーなイメージのマットフラット塗装も、そのメカっぽさを強調していました。
しかもエンジンは、三菱が得意とするクリーンディーゼル。新開発の2.2リッターDOHCディーゼルエンジン「4N14型」は、MIVEC機構やコモンレールとピエゾ式インジェクターによる燃料噴射装置、最適な過給圧が得られるVD(Variable Diffuser)/VG(Variable Geometry)ターボを採用して、最高出力150kW(204ps)の高出力をマーク。高効率・高出力でありながら環境にも対応していました。
ディーゼルのスポーツカーという発想は、当時では斬新でした。組み合わされるトランスミッションは、ランサーエボリューションXでも採用の「ツインクラッチSST」でした。
4N14型エンジンは、2007年のセダン型コンセプトカー「コンセプト-ZT」にも積まれていたほか、2010年には欧州向け「アウトランダー」、2013年からは「デリカD:5」に搭載され、現在でも三菱の主力クリーンディーゼルエンジンとして製造が続いています。
駆動方式も、ランサーエボリューションX譲りの車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」を搭載。ランサーエボリューションXと同じく「ACD」「AYC」「スポーツABS」「アクティブスタビリティコントロール(ASC)」を備えたほか、さらに「アクティブステアリング」「アクティブダンパー」を追加していました。
4輪の駆動力・制動力の高度な制御を行うことで、さまざまな走行状況における駆動性能・旋回性・安定性を向上させ、ドライバーの意思通りの挙動を行うことが可能、と紹介されていました。
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なお4代目エクリプスは、その後2012年に生産を終え、しかも5代目にバトンを渡さなかったため、コンセプトRAが5代目エクリプスとしての発売されることはありませんでした。
シンプルに「カッコイイ!」と思える高いデザイン性、クリーンディーゼルを搭載、しかもランエボXのクーペ版というコンセプトは、登場後15年以上が過ぎた今でもまったく色褪せることがありません。
魅力的なスポーティSUVを数多く輩出する三菱ですが、コンセプトRAのような「三菱の遺伝子を組み込んだ、三菱らしいハイテク感満載なスポーツカー」の再登場に期待したいところです。