国土交通省は、10月1日から始まる「新しい車検」に「電子装置の検査」(OBD検査)が追加されると発表をしました。新しい項目内容にユーザーから様々な声が寄せられています。
■「OBD検査」っていったいナンダ!? 私のクルマも対象?
2024年9月4日に国土交通省は、同年10月1日より開始される「新しい車検」に「電子装置の検査」(OBD検査)が追加されると発表をしました。
その新しい項目内容に、ユーザーから様々な声が寄せられています。
OBD検査が導入される理由について国土交通省(以下、国交省)によると、近年のクルマに搭載されている先進運転支援システムなどの不具合による事故発生が報告されるようになってきているそうです。
従来の車検内容だけでは、このような事故を防ぐことができないため、新たにOBDを使った検査を導入することが法律で決まりました。
対象車種は、「2021年10月(輸入車は2022年10月)以降の新型車」のみとなります。
なお、OBD検査の対象になるクルマには、車検証に「OBD検査対象車」と書かれていますので確認してみましょう。
しかし、車検の日が2024年9月30日以前(輸入車は2025年9月30日以前)である場合、車検の日が形式指定年月日から2年経過していない場合、車検日が初度登録年月または初度検査年月の前月の末日から起算して10ヵ月を経過していない場合は、OBD検査を不要としています。
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OBDとは、「On Board Diagnostics」(オン ボード ダイアグノスティックス)の頭文字をとった略称で車載式故障診断装置のことです。
その役割は、クルマに搭載されている各種電子制御装置「ECU」(エレクトロニックコントロールユニット)の状態を自己判断し、記録することです。
OBDの誕生は1968年にフォルクスワーゲンなどが採用した診断システムが始まりです。
この時からすでにOBDという名称が使われていました。
その後、メーカーによってバラバラだった診断コネクターと診断コードが統一化され現在に至ります。
統一されてからは、OBD2という名称でそれ以前とは区別されていますが、総称としてOBDと呼ばれることが多いようです。
OBDの役割は、目視では判別不可能な点検や検査を可能にして具体的な不具合内容を知ることが出来ることです。
クルマには、多くのECUが搭載されており、それぞれがエアバッグや自動ブレーキ、車線維持機能、横滑り防止装置(ESC)を含む先進運転システムなどをコントロールしています。
これらの装置や制御を担うECUに不具合が発生したとしても、気付かないまま走行してしまう可能性があります。
メーターの警告灯が点灯することで判別できるケースもあるが警告システムそのものに不具合が発生している可能性もあります。
OBD検査は、「検査用スキャンツール」を車両のOBDポートに接続をするとECUに記録されている「故障コード」(DTC)が取得でき、取得したDTCを「特定DTC照会アプリ」で照会をします。
故障内容が特定DTCであった場合は、車検に不合格となり、特定DTCがない場合は、車検に合格します。
特定DTCとは運転支援システムや自動運転機能、排ガス関連装置に関する不具合を示すものです。
OBD検査をすることでユーザーにメリットはあるのでしょうか。
OBD検査が導入されることで目に見えない不具合が適切に修理、整備ができてより安心してクルマに乗ることができます。
従来の車検では、灯火類や足回り、制動力、直進性、排ガス濃度などといった項目をクリアすれば車検に合格しました。
しかし見方を変えると自動ブレーキなどの電子制御装置に不具合があっても合格してしまっていたということになります。
OBD検査が導入されれば、運転支援システムに不具合があった場合、修理や整備を行うのが必須となり必然的に安心・安全で運転することがきます。
さらに今回のOBD検査で先進安全技術の電子制御装置整備(エーミング)作業が追加されており、エーミングを省略した車両は、車検に通らないとされています。
エーミングとは、運転支援システムといった電子制御による装置が正しく機能するように校正や調整を行う作業のことです。
レーダーセンサーやカメラの向きが正しい方向や角度で取り付けられていない場合、運転支援システムが誤作動を起こす可能性があるため、車検時にエーミング作業が必須となりました。
OBD車検の導入にあたり、2021年10月1日から、従来の車検の費用に1台あたり400円が追加されています。
この費用は「技術情報管理手数料」として、車検を受けるすべての車に追加されています。
自動車メーカーが提供する故障診断情報を管理し、全国の検査場や整備工場が利用する情報システムの運用費用として使われています。
さらに、リコール情報の提供などにも使われます。
もちろんOBD検査の結果、不具合が検出された場合、整備・修理する費用も必要になる場合もあります。
技術情報管理手数料の400円は、OBD車検対象外の車両であっても全車が支払う必要があります。
旧車を含め、すべての車両に費用が追加されるため、注意が必要です。
すべての車両に手数料が追加される理由としては、OBD車検の導入により、交通事故が減少することが期待されており、その恩恵はすべての車に及ぶという考えがあるためです。
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今回新たに始まる「新しい車検」に関して、ユーザーから様々な投稿が寄せられていました。
まず、「現代の自動車は高度なコンピュータの塊でもあるので、OBD検査の車検導入は寧ろ遅かったと捉えるべき」といったOBD検査へ理解を示す声とともに、「車検代高くなっても整備士さんの給料が上がるようにしてもらいたい。いい整備士さんが離職しないよう願っています」と整備士に向けたあたたかいコメントが寄せられています。
なかには、「最近のハイテクなクルマに乗ってない自分には関係ないね」「俺のクルマは古いので関係なかった」「ABSすらついてない。ほぼ無縁の話かな…」のようなコメントもあり、対象車でなく一安心されている方々も見受けられました。
また、現場で作業する方々からは、「整備士ですが持ち込みは、時間が全く読めないので大渋滞が発生するでしょうね」「自動車検査員の仕事量も今後増しますし短時間車検なんて短時間と言える時間では終わらない」「OBDを差し込んでの検査となると読み込みによっては約5分ロスします」などと車検にかかる時間を心配するコメントも。
そのほか「外車は未だにセンサー関連の故障が日本車に比べると多いから面倒くさいことになりそう…」「OBD検査でひっかかり高額修理代のために泣く泣く代替えの可能性は出て来るだろう」「輸入車は繋いでもエラー箇所が分からないクルマもあるよね」など、検査結果による乗り換えの可能性や輸入車ユーザーの不安な様子が伝わりました。
様々な意見が飛び交う「新しい車検」は、2024年10月1日より実施されます。
実施直後は、車検場などがいつもより慌ただしくなると思われるので車検を申し込む場合は、時間のゆとりを持って申し込みたいところです。