バブル景気に乗って絶大な人気を誇ったトヨタ「ソアラ」。一時代を築き上げた「ハイソカー」に復活の可能性はあるのでしょうか。
■バブルの好景気とともに人気を集めた「ソアラ」とは
昭和の終わりに人気を博したトヨタ「ソアラ」は、今や死語となった「ハイソカー」の火付け役で、日本のクルマの歴史を語る上で外せない1台となりました。
ふたたび復活する可能性はあるのか、考察します。
初代ソアラ(Z10型)は、1981年(昭和56年)にデビューしました。
ソアラは当時のトヨタが持つ先端技術を集め、数多くの「トヨタ初」の装備、システムが採用されました。
またその後のトヨタ車で大人気を獲得する、明度の高い「スーパーホワイト」のボディカラーを初採用したのもソアラでした。
1986年1月に2代目(Z20型)にフルモデルチェンジされます。
成功を収めた初代のコンセプトを引き継いだデザインで、流麗なスタイリングでまとめ上げられました。
ちょうどバブル景気が始まった頃と重なり、高い車両価格設定でありながら、約5年間のモデルライフで30万台を超える大ヒットを記録しました。
1991年(平成3年)5月に3代目(Z30型)にフルモデルチェンジしますが、バブル崩壊の時期と重なり、販売は振るいませんでした。
スタイリングは初代・2代目から大きく変わってしまったことも要因の1つとされています。
この背景には、アメリカでスタートした「レクサス」ブランドの初代「SC」を、トヨタブランドで販売するものとして、デザインは米国カリフォルニア州で行われたという経緯がありました。
3代目ソアラの販売が10年続き、2001年(平成13年)にようやく4代目(Z40型)へのフルモデルチェンジを果たします。
4代目もレクサス SCのトヨタブランド国内モデル版としての販売でしたが、2005年からレクサスの日本国内展開に合わせ、同年8月にソアラの車名は消滅し、マイナーチェンジを実施した上でレクサス車として国内販売されました。
4代目ソアラ/2代目SCは、スポーツカーや2ドアクーペ人気そのものの低迷の影響が大きく、2010年で日本国内販売を終了します。
■トヨタの「ラグジュアリークーペ」を復活させるなら「クラウン」しかない!
このように4世代に渡ったソアラは、一貫して「ラグジュアリークーペ」として販売されてきました。
スポーツカーの要素と高級セダンの要素を兼ね備え一世風靡をしたものの、時代の流れと変化に流されてしまいました。
現在、ラグジュアリークーペのカテゴリーを担うのは、レクサス「LC」「RC」となりますが、ソアラのような雰囲気のものではなく、スポーツカーの要素も感じるものです。
現在、レクサスではなくトヨタブランドから次期「ラグジュアリークーペ」を開発しているという噂は、特に聞かれません。
もうトヨタからソアラのようなクルマの復活は絶望的なのでしょうか。
ただ、現行型で大きく路線変更を遂げた「クラウン」ならば、あり得ることかもしれません。
現行のクラウンは、2022年にフルモデルチェンジを受けた16代目となります。
その前の15代目クラウンは、今では珍しいわずか4年のモデルライフでバトンを次世代に渡しました。
保守的な高級セダンとして知られるクラウンは主なユーザー層が年々高年齢化しており、販売成績も良いとは言えずこのままでは先細るいっぽうでした。
そのためトヨタが、ユーザー層の若返りを狙い大刷新を急いだ経緯があったのです。
16代目クラウンは、SUVとセダンを融合した「クロスオーバー」から始まり、オーセンティックな「セダン」、スポーツSUV「スポーツ」、ラージSUV「エステート」の4モデル構成となっています。
トヨタの「フルラインナップ」戦略をクラウンシリーズにも当てはめれば、第5のモデルがクーペになるだろうという期待が持てます。
なかでも4代目ソアラ/LCのような「オープン」にも「クーペ」にも変化する「クーペカブリオレ」スタイルはいまも優雅な印象があり、現代に蘇らせて欲しいと筆者(自動車ライター 佐藤 亨)は思います。
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トヨタの目論見通り、16代目クラウンは人気が復活し好調なセールスを記録しています。
ラグジュアリークーペの復活を望む声が大きくなれば、トヨタも考えてくれるのではないでしょうか。
そんな淡い期待と、かつての名車ソアラに思いを馳せながら筆を置くことにします。