三菱が2024年9月6日から8日まで開催したオートキャンプイベント「スターキャンプ2024 in 朝霧高原」では、最新モデルに混じって25年以上前に販売されていた「オープンSUV」の姿もありました。名車「パジェロ」のなかでもとくに硬派な「Jトップ」について紹介します。
■むかしのSUVはめちゃ「硬派」なクルマだった
三菱自動車工業(以下、三菱)は2024年9月6日から8日まで、オートキャンプイベント「スターキャンプ2024 in 朝霧高原」を開催。富士山のふもとに広がる草原の大きなキャンプ場「ふもとっぱら」(静岡県富士宮市)の会場には、前年の倍となるおよそ600組の参加者が集まるなど、例年以上に盛況なイベントとなりました。
最新の「アウトランダー」「デリカD:5」「トライトン」などが揃うなか、25年以上も前の希少な「オープンSUV」の姿もありました。どのようなクルマなのでしょうか。
街ゆくクルマの多くが「SUV」という現代ですが、厳密に分けるとクロスカントリー車(クロカン)という4輪駆動車を含んでいます。
悪路に強いラダーフレームを持つヘビーデューティ指向を持ちつつ、快適な装備を持つため、アウトドアブームの高まりもあって、市場で高い人気をキープしています。
しかし1970年代のクロカンといえば、三菱「ジープ」やトヨタ「ランドクルーザー40系」、日産「パトロール」、ダイハツ「タフト」(初代)、スズキ「ジムニー」(初代)など、オンロードよりも悪路走破性を重視し、内装はトラックのようなデザインで装備も少ないという、タフでハードな多目的車でした。
そんな中、1981年にいすゞが初代「ビッグホーン」(当初はロデオ ビッグホーン)を、翌年には三菱が初代「パジェロ」を相次いでリリースしました。
この2台の特徴は、従来のクロスカントリー車と同様にラダーフレーム構造を持ちつつ、乗用車的な快適性・居住性・装備を重視していたことです。
乗り心地や舗装路での走りにも留意が払われており、折からのレジャーブーム・RV(レクリエーショナルビークル)ブーム到来も相まってヒット作となりました。
とはいえ、まだまだ“ジープ的”な無骨さや、「多目的車」らしさは多分に残り、両者ともに4ナンバーの商用仕様をラインナップしていました。パジェロでは、先に商用登録版が発売されたほどです。
登場時の車体は2ドアのみで、金属製屋根の「メタルトップ」と、ドアから後部をホロにした「キャンバストップ」が設定されていました。
キャンバストップでは前席上ルーフのホロも開閉可能だったので、フルオープンのジープには至らずとも、それに近い開放感を得ることができました。
外観や装備は上位モデルと比べると全体的に質素で、まだ「硬派な乗りもの」という印象を残していました。
■2代目パジェロきってのハード路線「Jトップ」
そしてパジェロは、1991年に2代目へと発展しました。
2代目では、直線的なデザインだった初代に比べて丸みを帯びた車体にチェンジ。大型化やV6エンジンの搭載、さらなる内外装の上質化・高級化が図られ、大ヒット作となりました。
もはやハードな多目的車のイメージはなく、乗用登録車が主体に移行しました。
しかし、屋根がホロのタイプは「Jトップ」と名前を変えて残りました。
しかも2代目パジェロでは、リアにはリクライニング可能なシートを備え、商用登録から乗用登録に変更。ルーフのホロは電動キャンパストップに進化したほか、後部ホロはサイドキャンバスを外したのちにオープンカーのように折りたためる「フォールディングキャンバス」を採用して、気軽で容易な開閉を可能としていました。
とはいえ、Jトップは2代目パジェロきっての「ハード路線」担当。
そのためJトップには2代目パジェロで唯一、リアデフロック・18インチホイールなどの装備を備えていました。
登場時のバリエーションは、2.5リッターディーゼルターボエンジンを積む「XS」と、3リッターV6ガソリンエンジンを押し込んだ「VS」を設定。トランスミッションは、どちらも5速MTのみ、バンパーも黒樹脂のままというのもワイルドでした。
のちに3.5リッターV6エンジンの搭載や、オーバーフェンダー付きのワイドボディも設定されました。
その後2代目パジェロは、1997年にフェンダーをブリスター形状に変更した大掛かりなマイナーチェンジを敢行していますが、Jトップに関しては従来の車体のまま生産を継続しました。
1999年に3代目へとバトンを渡した際には、パジェロから伝統のオープンルーフ仕様が消滅。Jトップは引き継がれませんでした。
■25年以上維持し続ける「パジェロ Jトップ」オーナーはどう思う!?
最終モデルでも25年前のクルマという、もはやネオクラシックの域に達したパジェロ Jトップですが、いまでも大事に乗られている方がいます。
2024年9月上旬に開催されたオートキャンプイベント「スターキャンプ2024 in 朝霧高原」会場にも、最新のモデルに混じって“Jトップ”の姿がありました。
オーナーの根本 道久さんは、30数年前にパジェロで「パリ-ダカールラリー」にコドライバーとして参戦した経験を持つという凄い方でした。
今もモータースポーツに関わり、国内外のラリーにナビとして参戦しているといいます。
1998年に中古車で購入したという根本さんのパジェロ Jトップは、オーバーフェンダーを備えた豪華仕様のモデル。製造から26年が経過していますが、オドメーターはわずか10万キロほど。
幌は途中で新品に交換したところ、何かしらの対策が施されたのか、以前より耐候性も上がったそうです。
本業では自動車整備業界に関わっていることもあってか、愛車の機関や外観の程度も上々。不満は燃費くらいだといい、まだまだ大事に乗っていきたいとのことでした。
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洗練されたSUVが多い現代の視点では、2代目パジェロは十分にタフでワイルドな印象があります。中でもJトップは、その雰囲気がより強烈に感じられます。
パジェロの復活が渇望されている昨今、もし復活が叶った暁には、Jトップの再登場を願わずにはいられません。