ホンダの新型「CR-V e:FCEV」を北海道にあるホンダのテストコースでアクセル全開で試乗しました。
■ホンダ「CR-V e:FCEV」をテストコースで全開試乗
ホンダが2024年7月に販売を開始した、燃料電池車「CR-V e:FCEV」を北海道にあるホンダのテストコースでアクセル全開で試乗しました。
場所は、旭川市の北部に位置する、本田技研工業・四輪事業本部ものづくりセンター・鷹栖(たかす)ブルーミンググランドです。
ここは、冬季を含めてホンダの新車開発の舞台になるところ。
CR-V e:FCEVは、7月に販売が始まっていますが、国内でのデリバリーが本格化するのはこれからというタイミングです。
生産は全数がアメリカで、生産能力は年間約600台で設定しており、そのうち日本向けは年間70台。
いまのところ日本向けの受注総数は58台。そのうち約78%が個人、約22%が法人という内訳です、
ホンダとしては、2016年に国内導入した「CLARITY FUEL CELL」以来となる燃料電池車であり、さらにアメリカのGMと共同開発した次世代FC(燃料電池)システムを搭載する量産第1号。
そのため、クローズドコースでの思い切った走行体験に合わせて、ホンダの水素関連事業の説明を行うため、メディアを対象とした今回の試乗会を実施したというわけです。
ベース車である6代目「CR-V」はアメリカなどで発売されていますが、日本では未発売。
その燃料電池バージョンのボディ寸法は、全長4805mmx全幅1865mmx全高1690mmと、ベースモデルと比べて全長が約110mm伸びています。
これは、衝突安全に関するアセスメントへの対応や、燃料電池システムに対する冷却効果などを目的として、フロントバルクヘッドを新作したため。
また、燃料電池関連部品や水素タンクなどによる重量増によって、車重は2030kgと2t超え。
そのため、最低地上高は北米仕様CR-V Hybrid 2WDの198.2mmに対して169.0mmと、どっしりとした構えになっています
燃料電池車のキモである、FCスタックは車体の前方に搭載。そのすぐ下方にPDU(パワードライブユニット)一体型モーターとギアポックスを配置しました。
水素タンクは2本あり、リアシート下部とリアカーボスペースにそれぞれ配置しています。
また、CR-V e:FCEVの特徴である外部給電機能のために、車体中央の下部に電池容量17.7kWhのリチウムイオン電池を搭載しています。
これは北米のPHEV(プラグインハイブリッド)仕様と共有化し、車両コストを抑える努力によるもの。
EV電力走行可能距離は、約61km。水素を満充填した航続可能距離は約621kmです。
■ホンダの新型「CR-V e:FCEV」乗るとどう?
さて、今回の試乗コースは大きく2つあります。
ひとつは直線、バンク、そして高速のS字コーナーを交えた1周約6kmの高速周回路。
もうひとつが、ドイツのニュルブルクリンク周辺を想定したような、幅員が狭い欧州ワインディング路でこちらも約6kmの行程となります。
まず、高速周回路でアクセル全開にすると、2トン級ボディとは思えない軽快な加速を見せ、実測で時速160kmでリミッターが効く速度領域に達しました。モーターの定格出力は60kW。
時速120〜130kmていどで高速S字オーナーを旋回すると、重心がドッシリとしていても、けっして重ったるいという印象はありません。
高速走行ですので、ステアリングを操作する量は少ないのですが、くるま全体の応答性がとてもいい。
また、時速150kmていどで、車線変更してみても、サスペ
ンションの動きの収まり方が実に自然なのが分かります。安心感がとても高いくるまという印象です。
そうした安心感には、音の影響のあるでしょう。アメリカの高速道路などで使われる、コンクリート路面を時速100kmていどで走行しても、路面から車内へのゴォーという音がかなり軽減されているのが分かります。
これは、車体前部に搭載しているFCスタック・モーター・ギアボックス・電動ポンプなどを一体化させ、ベース車のCR-Vの骨格をほとんど改良せずに搭載することで、振動や音の低減に役立っているからです。タイヤは日米仕様ともにオールシーズンタイヤを採用していました。
次に、欧州ワインディング路に入ると、取り回しやすさ、そして安心感を改めて実感します。
アンジュレーション(起伏)があって前方の様子が見えづらいブラインドコーナーでも、路面とタイヤの設置感が高いと感じます。いわゆる「路面をなめるように」走るのです。
水素タンクの搭載方法として、トランクフレームをボディ剛性を上げる部材として設計したことで、走行中の車体後部の追従性が増していることも体感できました。
ハンドリングと乗り心地は、スポーティなセダンと大差ないほど、扱いやすくドライビングが楽しくなるくるま、という印象です。
そもそも、6代目CR-Vは、SUV激戦区のアメリカにおいて「多くのお客さんに選んでもらう」ため、高い運動特性を実現したカタチ。
そうした優れたベース車の骨格の優位性が、車重が2トン超えとなっても実証されたと言えます。
このように、一般的なくるまに対する評価では、高いレベルにあるCR-V e:FCEVですが、ユーザーにとってはまだ少し「遠い存在」という印象があるかもしれません。
新車価格は809万4000円と、「シビックタイプ R」(499万7300円)の1.6倍という高級車なのですから。
それでも、国からの購入補助金255万円が活用によりユーザーの負担は大幅に軽減されます。
リース販売のみで4〜5年の契約で月額14〜15万円の支払いとなりますが、購入補助金を加味すると、ユーザーの負担は月10万円程度で収まる計算です、
これまでの、ゼロベースからの作った燃料電池車である「FCX CLARITY」(2008年)や「CLARITY FUEL CELL」(2016年)とは違い、水素社会を見据えて、より使い勝手の良い
大量生産車をベースとして企画された、CR-V e:FCEV。
水素インフラが今後整っていく現段階で、燃料電池車に充電・給電機能をプラスするという、世界的に見て珍しい手法によって、ホンダが多用な使い方をユーザーに提案したカタチです。
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今回の試乗会では、普通充電による外部給電機能を使って、電子レンジでポップコーンを作ったり、コーヒーメーカーでホンダ曰く「水素コーヒー」を用意してくれました。
そうした実車の前で、CR-V e:FCEVの開発責任者・生駒浩一氏は「次の時代に向けて、お客様と一緒にモビリティの未来の可能性を考えていきたい」と、このくるまの魅力と役目を表現しました。
ホンダの新しい挑戦が今後、社会とどのように融合していくのか、その動向を見守りたいと思います。