マツダは、かつてV型6気筒エンジンを搭載したスポーツカーを販売していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■当時世界最小のV6エンジンを搭載した「プレッソ」とは?
マツダの代表的なスポーツカーといえば「RX-7」や「ロードスター」の名前が挙がることでしょう。
RX-7にはロータリーエンジンが、ロードスターには直列4気筒エンジンが用いられていますが、かつてV型6気筒エンジンを搭載したスポーツカーが存在していました。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマとは「ユーノス・プレッソ」です。
バブル期のマツダは、複数の販売チャネルを展開し、その一環として「ユーノス」ブランドを立ち上げました。
そんなユーノスブランドから1991年に登場したのが、3ドアハッチバッククーペのプレッソです。
このモデルは、独特なデザインと、当時としては先進的な技術が盛り込まれたことで注目を集めました。
ボディサイズは全長4215mm×全幅1695mm×全高1310mmと、現行ロードスター(ND型)の全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mmと比べると、特に全長と全高に関しては少し大きめのサイズ感です。
エクステリアにおいて、プレッソの最大の特徴は「ラップラウンド・リアウインドウ」と呼ばれる後部のリアウインドウデザインです。
これはボディサイドにまで大きく巻き込まれたガラス面を持ち、リアハッチ部分に一体感を与えています。
また、全体のフォルムは前傾姿勢を強調したもので、スピード感を強く感じさせるスタイリッシュなデザインが魅力で、当時の若者を中心に注目されました。
インテリアは、スポーティでドライバー中心のデザインが特徴です。
シンプルながらも機能的なレイアウトが採用され、コンパクトクーペとしての操作性を重視しています。
運転席と助手席ともにスポーティなシートが装備され、適度なサポートが提供されるため、クルマとの一体感を感じながら運転を楽しむことができます。
そして技術的なトピックとして最も注目すべきは、当時世界最小の1.8リッターV型6気筒エンジンを搭載していた点です。
このエンジンは、最高出力140馬力(後にハイオク仕様で145馬力に向上)・最大トルク16.2kgmを発揮し、コンパクトなボディに高出力を与えるものでした。
しかし実際の出力やトルク値は同排気量の直列4気筒エンジンと大差がないことや、エンジン部品の点数が増えたことによる重量増、前後の重量バランスの悪化、エンジンの機構が複雑かつ細かくなったことによる故障の増加、そして燃費の悪化など、多くのデメリットを抱えていました。
その結果、1993年には最高出力115馬力/120馬力・最大トルク13.5kgmの1.5リッター直列4気筒エンジンがラインナップに追加され、ユーザー層の拡大が図られています。
また、トランスミッションは4速ATまたは5速MTから選択可能で、駆動方式はFFです。
そんな、技術的にかなり力が入っているプレッソですが、マツダの経営状況が悪化するなかで十分な市場の支持を得ることができなかったことにくわえて、1996年にはユーノスブランド自体が廃止されることとなり、プレッソもその影響を受けました。
それでも販売は継続されましたが、最終的には1998年に生産が終了し、後継車の登場もなく、時代の変化のなかでその役目を終えることとなりました。
なお、現在の中古車市場では50万円台から120万円台で販売されています。