クルマの車体に「ちょうちょマーク」のステッカーが貼られていることがあります。これは何を意味しているのでしょうか。また、このマークのついたクルマを見かけたら、周囲のクルマは何をすべきなのでしょうか。
■意外と知られていないマークの意味とは!
若葉を模した「初心者マーク」や、高齢者ドライバーを意味する「高齢者マーク(もみじ・四つ葉マーク)」がクルマに貼られているシーンはよく見かけるものですが、“緑地に黄色のちょうちょ”を描いたマークの貼られたクルマも存在します。
先述の2つより少し珍しいこのマーク、一体どのような意味で、もし見かけたら周囲のクルマは何をすべきなのでしょうか。
このちょうちょマークの正式名称は「聴覚障害者標識」。
耳が不自由な人は、補聴器を装着することで不自由さを緩和していますが、その場合、運転免許証には“メガネ”と同様に「補聴器条件」が課されており、補聴器が無ければ周囲の交通状況を「音で察知する」ことができず、安全な運転判断ができる状態ではないとみなされます。
しかし、補聴器を使用しても聴きとるのが困難な人も存在します。
そういった人々でもクルマを運転して生活できるよう、「特定後写鏡(ワイドミラーまたは補助ミラー)」を装備することで、運転が可能になるという仕組みが道路交通法にはあるのです。
この対象となるのは「両耳の聴力が、10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音が聞こえない場合」あるいは、「補聴器条件が付されていて、準中型車と普通車に限って『補聴器なし』で運転を希望する場合」と定められています。
そしてこの対象となるドライバーは、クルマに「聴覚障害者標識」を掲示することが義務つけられています。
これが冒頭の“ちょうちょマーク”の正体なのです。
なぜステッカーの掲示が義務化されているのかというと、周囲に知らせることで、「周囲の交通はこのクルマにきちんと配慮しなければならない」という規定があるためです。
道路交通法第71条第5号を見ると、「マーク掲示車に対し、幅寄せや急な割り込みをしてはならない」と書かれており、初心者マークや高齢者マークなど同様に配慮が義務付けられているのです。
そしてこれを守らなかった場合、「初心運転者等保護義務違反」という交通違反に該当する可能性があり、違反点数1点にくわえて反則金は大型車7000円、普通車・二輪車が6000円、原付が5000円。
さらに刑事罰も適用され、5万円以下の罰金も課されてしまいます。
実はこれらの情報は、免許取得時や更新時などに配布される「交通教本」にも明記されていますが、知らないという人は少なくありません。
実際にSNS上では「そういう意味だった!?」「なんとなく配慮が必要っぽいマークと思ってたけど詳細は知らなかった」など、正確に認識していなかったという投稿が見られます。
一方で「このマークのクルマに平気で距離を詰めているクルマを見た」「分かんないなら免許返納して下さい!」というコメントもありました。
うっかり交通違反とならないよう、第一に周囲への思いやりを常に意識しつつ、安全運転を心がけましょう。