ホンダには、かつて「バモスホンダ」というユニークな軽トラックが存在しました。
■ホンダの作った「屋根なし 軽トラ」!
ホンダには、かつて「バモスホンダ」という非常にユニークなクルマが存在しました。
一体どのようなクルマだったのでしょうか。
バモスホンダは、1970年から1973年まで販売されていた、オープンカータイプの軽トラック。
軽トラックでありながら屋根もドアもなく、座席がむきだしになっている、あまりにも奇抜なクルマでした。
バモスホンダには3種類のモデルがあり、1つ目は座席部分のみに幌がついた2人乗りの「バモスホンダ2」、2つ目はおなじく座席部分のみに幌がついた4人乗りの「バモスホンダ4」、3つ目は荷台まで幌で覆われた4人乗りの「バモスホンダフルホロ」です。
シートは前後ともにベンチシートとなっており、シートベルトは2点式。
また上述のようにドアはありませんが、ドアの代わりとして乗員の重心より高い位置に、転落防止用のガードパイプがついています。
そのほかオープンカーならではの安全、盗難対策として、ハンドルロックと鍵付きのグローブボックスを搭載。
車内のメーターやスイッチ類はすべて防水仕様で、急な雨が降ってきても故障せず、車内を水洗いすることも可能でした。
ボディサイドから後部にかけてのセットバック部分に手すりを設けることで、積み荷の飛び出しを防ぐとともに、ロープフックとしても使えるようになっているほか、車体後部左側にはけん引フックも付いています。
用途としては警備用、建設現場用、工場内運搬用、電気工事用、農山林管理用、牧場用、その他移動をともなう屋外作業用、配達用など、ビジネスで使用されることをおもに想定したクルマでした。
そんなバモスホンダのボディサイズは、全長2995mm×全幅1295mm×全高1655mm。ホイールベースは1780mmで、車両重量はわずか520kgしかありません。
エクステリアは、フロント部分にスペアタイヤがついているのが特徴で、正面か見るとオフロード車のようなデザインとなっています。
しかし、特段悪路の走破性に優れているわけではなく、駆動方式にも4輪駆動は用意されていません。
このようにルックスと性能がかみ合っておらず、よくわからない立ち位置のクルマになってしまったため、当初は月産台数2000台を想定していましたが、約3年間でわずか2500台しか売れず、そのまま販売終了となりました。
バモスホンダのインテリアは、ウィンカーの作動状況を表示するインジケーターランプが、矢印ではなく「turn」と書かれた左右兼用のランプになっているのも特徴です。
パワートレインは、強制空冷4サイクル2気筒OHCエンジンを搭載。
最高出力30馬力/8000rpm・最大トルク29Nm/5500rpmを発揮し、最高速度は90km/hと公表しています。
1970年代のクルマなので安全装備はとくに付いていませんが、実は上述したフロント部分のスペアタイヤは、衝突時のショックを吸収する目的で採用されたとのこと。
また、フロントバンパーは高剛性に仕立てられており、大型オーバーライダーという補強部品が取りつけられているため、ある程度ラフな乗り方にも耐えられました。
そしてボディカラーは、「マッキンレーホワイト」「キャラバングリーン」「アンデスイエロー」「アペニンブルー」の全4色を用意。
車両価格は当時、31万5000円から36万3000円となっていました。
※ ※ ※
独特で画期的なコンセプトで登場した、バモスホンダ。
見た目通りオフロード向けのクルマとして、悪路の走破性を重要視して開発されていれば、また違った結果になったかもしれません。
また残念ながら、発売後に改正された道路運送車両の保安基準を満たせなかったことも、生産終了になった理由の1つと言われます。
もうこのようなクルマが出てくることはないと思われるだけに、ホンダの個性的かつ挑戦的な歴史の1ページとして知っておきたいクルマのひとつです。