かつてダイハツは、軽自動車規格よりも小さい「ひとり乗りトラック」を販売していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■めちゃ小さい!ダイハツの「極小トラック」
超小型モビリティ、いわゆる「マイクロカー」の需要が世界的に高まっており、日本でも配達用のひとり人乗りマイクロカーが走行しているシーンを目にする機会が増えました。
しかし、現在のようなマイクロカー需要が高まるずっと以前の1990年代に、ダイハツは軽自動車規格よりも小さい「ひとり乗りトラック」を販売していたのです。
そのクルマとは、1996年にダイハツが発売した軽貨物自動車の「ミゼットII」です。
同車のボディサイズは、全長2790mm×全幅1335mm×全高1705mm。
これは現在の軽自動車規格(全長3400mm以下×全幅1480mm以下×全高2000mm以下)よりも遥かに小さく、また現在よりも軽規格が小型だった当時でも驚くほどの“極小サイズ”。
これに乗員1名と荷物を載せる構造となっていました。
また「ミゼットII」という車名は、ダイハツが1957年に発売したオート三輪「ミゼット」を由来としています。
ちなみにミゼットのボディサイズは、全長2540mm×全幅1200mm×全高1500mmと、なんとミゼットIIよりもさらにひと回り小さな三輪自動車でした。
そんなミゼットIIはパワーユニットとして、660ccの直3SOHCエンジンをフロントミッドシップレイアウトで搭載。
実は前期型と後期型ではエンジンが異なり、前期型は最高出力31馬力、後期型は33馬力と、後期型の方が若干パワーが向上していました。
トランスミッションは初期モデルは4速MTのみでしたが、後に3速ATを追加。
4速MTは1人乗りですが、3速ATモデルでは定員が2名に増えたことで、実用性が大きく向上します。
初期ラインアップは3グレード用意され、車両価格は廉価グレードが約58万円、標準グレードが約60万円、ドレスアップが施された上級グレードが約73万円でした。
また先述した3速ATを搭載したモデルは価格が少し高くなっており、ドレスアップモデルでは100万円近い価格になっています。
このようなミゼットIIは、他に類を見ないほど小さなボディサイズや、スペアタイヤをフロントボンネットに装着した独特のデザインが話題となり、発売間もなく大きな注目を集めました。
しかし、当時はマイクロカーのような小さなクルマの需要は低く、また手作業で製造されていたこともあり、ダイハツでも当初から少量生産モデルとして販売。
それでも合計1万台以上を販売したといわれており、多くの人が想像した以上に支持を得たクルマでもあるのです。
また肝心の実用性ですが、非常にコンパクトなサイズゆえに最小回転半径は3.6mと小さく、狭い路地でもスイスイと走ることが可能。
極端な登り坂を除けば、パワー不足も感じさせませんでした。
現在のマイクロカーのように、日常のちょっとした足として使うにはちょうど良かったのかもしれません。
そんなミゼットIIは現在でも根強い人気を誇り、中古市場でもノーマル状態のものからカスタマイズを施した状態のものまで、様々な個体が出品されています。
日本の自動車史に残る個性的なミニ軽トラックですので、機会があれば乗ってみるのも良いでしょう。