ダイハツの小型商用バン「グランマックス」次期型の姿を示すコンセプトが2023年にインドネシアで公開されていました。一体どのようなモデルなのでしょうか。
■ダイハツの「斬新バン」 しっかり作り込みされていた
ダイハツ「グランマックスカーゴ」は、OEM供給をするトヨタ「タウンエースバン」とともに、小型商用車の定番として現在もラインナップされています。
このグランマックスカーゴの次期型の姿を示唆するコンセプトカーが2023年8月に披露されていました。一体どのようなモデルなのでしょうか。
グランマックスは2008年に登場した小型商用車シリーズです。ダイハツのインドネシア法人であるアストラ・ダイハツ・モーターが生産を担当する輸入車となっています。
小型車枠に収まるコンパクトサイズに、5ドアバンと2ドアトラックの2タイプを用意し、高効率でスクエアな広い荷室や信頼性の高いパワーユニットの搭載など、商用ニーズに合わせ使い勝手のよさを高めています。
登場当初はトヨタの小型商用バン タウンエースおよび兄弟車「ライトエース」の後継モデルとして投入され、グランマックスとしての国内販売はありませんでしたが、2020年に実施されたマイナーチェンジで販売が開始されています。
現在でも小型商用車の定番としてラインナップされていますが、登場から16年が経過してもなお次期モデルなどの情報は一切発表されていません。
しかし2023年8月に製造国であるインドネシアで開催の「ガイキンド(GAIKINDO・インドネシア自動車製造業者協会) インドネシア国際オートショー2023」では、グランマックスカーゴにした「VIZION-F」が世界初公開されました。
VIZION-Fは、現地法人ADM R&Dが企画・製作したコンセプトEVで、グランマックスカーゴをベースに電動プラットフォームを採用しています。
車名は「Vision」「Zero Emission」「Futuristic」「Functional」「Fun & Friendly」を指し、ビジネスでもプライベートでも地域活動をサポートできる、環境に優しい未来のクルマをイメージしたと当時発表されていました。
エクステリアはおおむねグランマックスのボディデザインを残していますが、マット風のシルバーを基調に、EVをイメージしたというエレクトリックイエローのアクセントカラーをあしらっています。
フロントフェイスはグランマックスから大きく変更され、真一文字の精悍なヘッドライトを採用。このライトの左右をつなぐように配されたガーニッシュにはLEDディスプレイが搭載されており、文字を表示することが可能。
ロアグリルはスピーカーのように細かい穴が多数設けられており、こちらもディスプレイとしても機能し、文字などが表示できるデジタルレイヤー機能を持っています。
ボディサイドはリアドアやクオーターウインドウは塞がれ、ドアハンドルもフラッシュ型とするなど段差のない滑らかなボディとし、広告などのラッピングをしやすいようになっています。
リアもサイド同様に、テールゲートのウインドウが塞がれており、デジタルレイヤーを搭載。テールランプはフロントと共通性を感じさせる一文字のユニットを装備しています。
インテリアはグランマックスとは大きく異なり、8インチのデジタルメーターを基本とするデジタル主体のダッシュボードを採用。中心には15.6インチにタッチスクリーンディスプレイを装備し、大幅なデジタル化を図っています。
パワートレインは28kWhの大容量バッテリーと35kWのモーターを組み合わせ、最高時速は100km/h、航続可能距離は約200kmとしています。
このようにパワートレインは現実味があるものの、エクステリアなどはコンセプトモデルらしく、ややリアリティにかけるVIZION-Fでしたが、発表時に明かされた用途は実にしっかりと考えられていました。
目指した用途としては、レスキューユニット(緊急時に電力を供給できるバッテリーを搭載した救援車)、発電機を必要としないフードトラック(移動カフェ)、キャンプ場(キャンピングカー)、公用車などとしていました。
一見すると派手に見えるデジタルレイヤー機能も、フードトラックや公用車などでは広報活動に非常に役に立つほか、EVらしく電力供給でき、かつグランマックスの持つ走破性能や信頼性などを組み合わせれば、レスキューユニットとして十分活用できると考えられます。
VIZION-Fは世界初公開後から現在に至るまで、残念ながら市販モデルなどは一切登場していませんが、全世界的に小型EVの商用モデルが充実しつつあるなか、今後グランマックスやタウンエースのEVモデルが設定されることがあれば、このVIZION-Fがベースになる可能性は高いかもしれません。