ホンダの主力モデルが続々とモデルチェンジするなか、「フィット」の次期モデルはどうなるのでしょうか。
■“キャラ被り”する「フィット」 今後はどうなるのか
ここ1年の間に、「N-BOX」「WR-V」「アコード」「フリード」と立て続けに新車攻勢が続いているホンダ。
そんななか、コンパクトカーの主幹モデルでもある「フィット」は現行型が2020年に登場し、4年が経過しました。今後どうなるのでしょうか。
フィットは2001年に初登場した、ホンダのコンパクトカー。欧州ではBセグメントに分類され、国産車ではトヨタ「ヤリス」「アクア」、日産「ノート」、マツダ「MAZDA2」、スズキ「スイフト」などがライバル車となります。
ミニバンやSUVがラインナップを占めていくなかで、フィットはホンダ伝統の小型ハッチバックを守り続ける基幹モデルです。Cセグの「シビック」、Dセグのアコードとともに、世界中で展開されるグローバルモデルでもあります。
かつては販売台数ランキングでトップを争う人気モデルだったものの、現行の4代目になってからの国内販売はやや伸び悩んでいますが、それでも月平均で5000台前後の販売台数を稼いでいることを考えれば、間違いなくホンダの稼ぎ頭であり続けています。
そんなフィットですが、同じプラットフォームを使ったヴェゼルやフリードのほうが人気だからといって、今後統合されてしまったり消滅したりすることはまずありえないでしょう。
それは、グローバルモデルということも理由になります。国内の販売状況だけでは簡単にやめられないくらい、海外の需要もあるのがフィットの強みでもあります。
次期モデルが出るとしても、世界中の市場が求めるものと考えればスタンダードなBセグハッチバックとなることが濃厚です。Bセグ市場は、いまやCセグ市場と同じくらい重要視される扱いであり、世界中のメーカーがしのぎを削っているカテゴリーでもあります。
では、ライバルにはないフィットの強みは何でしょうか。
それは、なんといってもBセグコンパクトとは思えないインテリアの広さです。これは、ホンダの伝統でもある「M・M(マンマキシマム・メカミニマム)思想」が関係しています。
M・M思想とは、エンジンなどクルマのメカニズム的なパーツを最小限のスペースにまとめ、乗車スペースやラゲッジをその分広くするという考え方。ホンダが他社に先駆けてFFレイアウトを採用してきた理由の一つでもあります。
M・M思想のパッケージングによる室内の広さは、フィットを選ぶユーザーのほとんどがメリットに感じているでしょう。特にラゲッジスペースの余裕さは、ライバルとは一線を画すもの。この便利さを知ったら、フィット以外選べなくなるでしょう。
しかし、モデルチェンジを機にガラッとキャラクターを変えるという方法も考えられなくもないというのが、現状のホンダのラインナップです。
室内スペースのことに言及してしまえば、フリードやヴェゼルにも当てはまり、軽自動車のN-BOXも該当してしまいます。
特にN-BOXの好調ぶりはフィットの犠牲の上に成り立っているともいえます。室内幅こそ軽自動車規程があるので限界はありますが、室内高に関しては完全にN-BOXがフィットを上まわっています。
乗り込むとわかりますが、縦方向の空間が広いだけでN-BOXのほうがフィットより広く感じてしまうのです。
そしてN-BOXは、高剛性シャシや内外装各部のハイクオリティな仕上げにより、登録車顔負けの高品質さを誇ることでも知られています。もう品質は登録車のコンパクトクラスと同等。
これでは、いくらフィットが燃費の良いハイブリッドを揃えていても、軽自動車のN-BOXのほうが維持費的には有利です。
そのため次期モデルでは、路線を大きく変更してN-BOXの客層と被らないようにすることも必要になるかもしれません。
例えば、シビックの弟分という名目で思いっきりスポーティな路線に変更するとか、ワゴンボディの「シャトル」復活にクロスターをミックスしてクロスオーバースタイルにするとか、他車とは違った魅力の発信も十分に考えられます。
2026年からはホンダは再びF1へのパワーユニット供給が決まっていますので、スポーティなイメージをもっと強くすることもひとつの作戦といえるでしょう。
クルマ好きには刺さる部分が強い、例えば「タイプR」や「タイプS」といったスポーツグレードの設定があれば、こうしたユーザーから人気が出そうです。
いずれにせよ、今までのやり方では苦戦を強いられることは明らかです。ホンダのフィットにかける思いがどのように形になるのでしょうか。次期モデルの発表を楽しみに待ちましょう。