最近は「スポーツカー待望論」もあって、ホンダ「CR-Z」が再評価されています。そしてCR-Zの元祖でもある「CR-X」も注目を集めているようです。一体どのようなモデルだったのでしょうか。
■「シビック」の兄弟車としてデビューした「CR-X」
近年、「スポーツカー待望論」が巻き起こっていますが、そんななか、ハイブリッドでも運転を楽しめるコンパクトスポーツとして2010年に登場したホンダ「CR-Z」が再評価されはじめています。
そしてこのCR-Zの元祖ともいうべきモデルがスポーツクーペ「CR-X」です。
最近では「ネオクラシック」としてCR-Xの人気も徐々に高まってきているのですが、一体どのようなモデルだったのでしょうか。
今から約40年前の1980年代前半は、日本車がアメリカで認められはじめた時期で、1972年の「マスキー法(環境汚染を考慮して厳格化された排ガス規制)」をクリアした世界初の量販車として誕生したコンパクトハッチ「シビック」も、1983年の3代目シビックあたりからデザイン性にもこだわりはじめた時代でした。
当時のアメリカは女性の社会進出が叫ばれ、自ら運転する「セクレタリー(秘書)カー」と呼ばれるコンパクトハッチやコンパクトクーペが大流行。
この流れを受けてシビックの派生車種として登場したのが「バラードスポーツCR-X」でした(バラードはシビックの姉妹車)。
空力性能に優れるリアにハッチゲートを搭載しテールエンドをスパッと断ち切ったスタイル(コートダロンガ形状)のファストバッククーペとしてデビュー。このスタイルの空力性能の良さは現在のハイブリッド車でも多く採用されている手法であり、バラードスポーツCR-Xがいかに時代を先取りしていたかがわかります。
短いホイールベースと低められた車高、そして何より760kgから860kgという超軽量ボディもあって、「FFライトウェイトスポーツ」と評されました。
また、固定式ながら上半分のみ稼働するセミリトラクタブルヘッドライトも特徴的でした。
そして1987年にベースとなるシビックが4代目(通称:ワンダーシビック)へフルチェンジ。これに合わせてCR-Xも2代目へと全面刷新しました。
フラッシュサーフェス化(表面の段差が少ない)されたスタイリングはワイド&ローを強調したものとなり、シャープなデザインと相変わらず短いホイールベースもあって、日本市場ではむしろ男性ユーザーから圧倒的な人気を獲得。
ほぼ2シーターとも言える狭い車内も、当時は「デートカー」として逆に評価されるほどでした。
何より、この2代目CR-Xの人気を不動なものにしたのが1989年に追加された最強グレード「SiR」です。
「可変バルブタイミング&リフト機構」というF1にも通じる最先端技術を活用した1.6リッターVTECエンジンを搭載。自然吸気エンジンでありながら160馬力(リッターあたり100馬力)を発揮する高性能エンジンは、高い注目度と人気を誇りました。
元オーナーのTさんは2000年前後にアメリカの大学へ留学中で、日常のアシとして大人気だったCR-X SiRを購入。超高回転まで回るエンジンと軽い車体で、現地のマッスルカーを凌ぐスポーティな走りを実現していたそうです。
「当時(2001年前後)は『The Fast & Furious(ワイルドスピード)』の影響で日本車が『ライスカー』と呼ばれて人気がありました。
CR-XをMTで乗っていましたが、コンパクトなボディは女性1名で乗るのにも丁度いいし、何よりカッコいいと評判も良かったです」
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中古市場ではCR-Xが人気になっており、当時の新車価格(154.7万円)を超える200万円台前半から350万円前後ものプレミア価格で販売されています。
30年以上前のクルマだけに、実際に乗るには補修パーツが残っているのかなどメンテナンスが気になるところですが、もっとも勢いのあった頃のホンダの技術が詰まったスポーツカーなので、走る楽しさを存分に体感できるでしょう。