2025年3月から、高速道路の深夜割引の制度が見直しされるとのことです。どう変わるのか、変更のポイントをまとめてお届けします。
■現在の「深夜割引」における「課題」とは
高速道路の深夜割引制度が、2025年3月から変更されます。
新しい深夜割引制度はどうなるのでしょうか。そのポイントについて紹介します。
筆者(佐藤亨)がNEXCO中日本に取材したところ、新しい深夜割引制度に関する資料が提供されました。
その冒頭には、なぜ高速道路の深夜割引があるのか、今回の割引の見直しがなぜ行われたかの説明が記載されています。
割引の目的については「一般道の沿道環境を改善するため、交通容量に余裕のある高速道路の夜間利用を促進」となっています。主に一般道の深夜帯の騒音対策に配慮するものでしょう。
現行の深夜割引精度は、午前0時から4時の間にETCで高速道路を通行した料金を一律「3割引」するものです。
制度見直しが行われる理由については、この割引適用待ちの車両がインター手前に滞留する問題が発生していることと、ドライバーなどの労働環境の悪化を招くといった課題があるため、としています。
現行の深夜割引では、0時から4時の間に「料金所を通過すること」だけが条件になっています。
そのため午前0時00分にETCゲートさえ通過できれば、どんなに長距離を走っていても高速料金が3割引になります。
しかしこの制度を逆手に取り、荷主が深夜割引適用前提とした運送費とぎりぎりのスケジュールで下請けに発注をするというケースも出てきています。
前述のように、インター手前で0時ちょうどを待つ滞留車両の増加に加え、時間に間に合わせるための無謀運転や、ドライバーに過酷な労働を強いるといった諸問題が発生しているのです。
■見直しで「深夜割引」は「どう変わる」のか
見直し後は、深夜割引対象時間帯を22時から翌5時に拡大し「走行分のみ」を3割引とします。
またこれにあわせて、高速道路走行距離400kmを超えた分の長距離割引を拡充するとともに、割引見直し運用開始後5年程度の激変緩和措置が行われます。
ただしNEXCO各社によると、この見直しは2024年7月時点で予定されているものであり、今後変更の可能性がないとは言えないとのことでした。以下に記す内容についても同様です。
まず「深夜割引対象時間帯を22時から翌5時に拡大し“走行分のみ”3割引」とする計算はどのようにして算出されるのでしょうか。
これまでの深夜割引で行われている「ETC料金所」通過時点だけではなく、高速道路内に新たに「ETC無線通信専用アンテナ」を設置することで、各アンテナを通過した時間を収集して行われるようになります。
深夜割引見直し後は、各ETC無線通信専用アンテナないしはETC料金所の間を走行する平均時速が計算されることになります。
ETC無線通信専用アンテナがどの間隔で設置されるかの説明はありませんでしたが、各インターの間に1つは必要になってきそうです。
深夜割引対象時間帯に実際に走行した距離の計算方法は、ETC無線通信専用アンテナ「A」と「B」があるとして、AB間の所要時間を計測し、AB間の距離から割って平均速度を求めるものとなっています。
また、22時および5時の時点で、車両位置が特定されます。
例えば、深夜割引の適用時間が終わる3分前の午前4時57分にAを通過した場合「平均速度×3分」の計算で、5時ちょうどまでにAから何km走行したかを求めて、割引高速料金が算出されます。
高速道路の料金設定は、インター間で設定されているのではなく「(利用距離×1kmあたりの料金+ターミナルチャージ150円)×消費税率」で計算されるため、前述の細かい割引高速料金の算出が可能となっています。
見直し後は、割引料金の計算が複雑になって処理に時間がかかるため、現在の料金所通過時のようにすぐに算出されず、後日「ETCマイレージサービス」または「ETCコーポレートカード」への還元する形での割引制度に変更されます。
なお見直し後は、実際に走行した距離に対しての割引が細かく計算されてしまうため、できるだけ速い速度で走ったほうが得になってしまいます。
これに対してNEXCOでは、上限距離を設定することで、無謀運転の防止を図っていると説明します。
軽自動車・普通車・中型車・乗合型自動車は、高速道路利用1時間あたり105kmを上限に、乗合型以外の大型車・特大車は90kmを上限とします。
利用時間が4時間を超える場合は、休憩時間に相当する30分相当が上限距離から減らされます。
ただし減らした後の上限距離が、4時間分の上限420kmないし360kmを下回らないことが条件です。
この計算は、22時から翌5時ごとに行われる制度となっています。
■新しい割引制度で「損する」ケースとは
新しい割引制度は平等的で合理的に感じますが、新東名などの最高速度120km/h制限区間では損してしまいそうです。
またSAやPAで夜間に休憩した場合、対象時間内の走行距離が稼げなくなってしまいます。疲労しているのに「損だから」という理由で朝まで無理やり運転継続するドライバーが出てくる可能性もあります。
さらに長距離走行では、実質的に高速料金の負担増となってしまいますが、これに対しては「激変緩和措置」が実施される模様です。
激変緩和措置は、深夜割引が適用される場合で1000km以上走行したとき、1000kmを超える部分が割引対象走行分に追加されます。
また22時台にインターから出た場合は、22時台に走行した分について最大20%を還元するというもので、期間は5年程度を予定しているとのことです。