近年コンパクトカーが人気を博しているなか、かつて日産は東京オートサロン2024で、木目をふんだんに用いたコンパクトカーを披露していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■内外装に木目が沢山使われた謎の「マーチ」とは?
コンパクトカーは、その経済性と使い勝手の良さから多くのユーザーに選ばれており、特に都市部での駐車のしやすさや、ちょっとした買い物での積載性が魅力です。
なかでもかつて日産は2024年1月に開催されたカスタムカーイベント「東京オートサロン2024」で、木目をふんだんに用いたオシャレな2人乗りコンパクトカーを披露しました。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマとは「MARCH Patissier CONCEPT(マーチ パティシエ コンセプト)」です。
日産「マーチ」は、1982年に登場したベーシックコンパクトカーで、約40年にわたり4世代に渡って同社の主力モデルとしてラインナップされました。
しかし、2022年8月に車種整理の一環として生産が終了し、現在は新車として購入することはできません。
それでも、マーチは根強い人気があり、中古車市場では今でもその需要が続いています。
そんななかで、マーチ パティシエ コンセプトは、中古車として再生されたマーチをベースに、さらにカスタムを施した特別なモデルです。
日産は、2023年の東京オートサロンでも同様のコンセプトで、すでに生産が終了している「キューブ」をベースにした「キューブ リフレッシュ&レトロ コンセプト」を展示しており、その展示には多くの反響が寄せられました。
特に市販化を求める声が多かったことから、今回はその第2弾として、マーチを題材にしたカスタムが行われました。
日産の担当者によれば、近年の新車価格の高騰や新車生産の遅延などが、中古車市場の需要をさらに高める結果となっているといいます。
そうした状況を背景に中古車の価値に目を向け、中古車でも品質を保ちながら付加価値を提供するための取り組みを強化しています。
マーチ パティシエ コンセプトは、単なる中古車のリフレッシュに留まらず、カスタムによって新たな魅力を付加し、夢を追う若者のライフスタイルに寄り添うクルマとして設計されました。
このコンセプトカーのデザインには、徳島県阿南市の「UZUKI sweets shop」の代表である若手パティシエール、高橋初姫氏が関わっており、彼女の店舗や仕事での使用シーンを想定してカスタムが施されています。
具体的には、約8万7000km走行の2016年式「マーチ XVセレクション」をベースに、エクステリアやインテリアの各部がリフレッシュされ、新車同様の状態に戻されています。
内外装のデザインには、高橋氏の店舗からインスピレーションを受けたピスタチオグリーンやゴールドのアクセントが加えられ、さらにウッド素材が随所に使われています。
特に、前後のホイールキャップの色使いや、フロントグリルには人気のチョコレート菓子をモチーフにした独特の形状が採用されており、見た目にもユニークな仕上がりです。
また、リアドアやテールゲートには木目風デカールが施され、レトロな雰囲気も演出しています。
さらに、機能面でも高橋氏の店舗運営をサポートするための工夫が施されています。
例えば、ラゲッジスペースにはウッドフロアが敷かれ、さらに「ポータブルバッテリー from LEAF」から電源が供給される冷蔵庫を搭載。
この冷蔵庫は、マルシェなどで使用する際に引き出せるよう、レールが組み込まれています。
また、リアドアサイドには脱着可能な黒板が装着され、店舗のメニューや看板を表示することができる他、ルーフにはルーフラックが設置され、荷物の運搬にも対応します。
日産がこのような中古車ベースのカスタムカーを手がける背景には、中古車のリフレッシュによって新たな価値を創出するという狙いがあります。
このような取り組みは、単なる中古車の再利用にとどまらず、独自のカスタムを施すことで、オーナーにとって特別な1台を提供するものです。
クルマが持つ過去のストーリーを引き継ぎつつ、新たな個性を加えることで、中古車市場の可能性をさらに広げていくことが期待されています。
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2023年に参考出品されたキューブ リフレッシュ&レトロ コンセプトはその後2024年1月、認定中古車「CUBE Retro Renovation(キューブ レトロ リノベーション)」として、実際に商品化されました。
こちらは限定発売による試験的な販売だといいます。
こうした知見を活かしさらに魅力を増したマーチ パティシエ コンセプトの認定中古車化が待たれるところです。