現在、「自動車整備士不足」が叫ばれていますが、若い人材育成のために日産・自動車大学校は様々な取り組みを行っています。そのひとつに実際のユーザーのクルマを無料で点検するというものがありますが、どのような形で行われたのでしょうか。
■八丈島で学生達が島民の愛車を無料点検!
2024年10月5日に八丈島で学生達の手による「愛車無料点検」が行われました。
この「愛車無料点検」とは、どのような取り組みなのでしょうか。
昨今、様々な業界で人材不足が叫ばれてます。それは自動車業界も同様です。
とくに整備士が不足している他、現在の全国における整備士の平均年齢は約47歳と若い人材が少ないと言います。
一般的に整備士になるには、自動車整備士の資格を取るための学校に入学することになります。
こうした自動車専門学校は全国に多く存在しますが、入学希望者が年々減り続けていると言います。
今回八丈島で「愛車無料点検」を行った「日産・自動車大学校」もその課題を持っています。
日産・自動車大学校は全国に栃木校、神奈川校、愛知校、京都校、愛媛校を展開。
そんな日産・自動車大学校では「学生を集める施策」のひとつとして、「整備士はかっこいい職業」、「憧れる職業」ということを発信することに。
同時に学生達の知識・経験を蓄える場としての活用という目的もあり、「愛車無料点検」を行うことになったようです。
また前日の4日には、八丈島にある八丈高校&富士中学校の生徒に対して、日産・自動車大学校の学生達による「整備士とは」というプレゼン&交流会も開かれ、さらに若い世代にも「整備士の魅力」を発信していました。
そんな今回の「愛車無料点検」に参加した日産の常務執行役員 兼 日本マーケティング&セールス担当、そして日産学園の理事長も務める神田昌明氏は、整備士不足や今回の取り組みについて次のように語りました。
「整備士不足については、2014年、2015年くらいから言われていて、各販売会社と協力をして職場環境のカイゼンなどを色々とやってきました。
さらには『若者の自動車離れ』と言われるなかでも日産・自動車大学校も色々な学生募集の取り組みをしています。
今回の八丈島での取り組みは、学生には学校だけでは学べない部分として島民との接客や、様々なコンディションのクルマに触れることで成長できる機会をつくりたいということでやっています。
また事前に八丈島の役場や整備工場にも相談して、『愛車無料点検』は町役場、そして学生達が指摘した点検内容については島の整備工場に入庫するように促すなど、島の人達と連携した取り組みになっています」
今回、舞台となった八丈島は、伊豆諸島に属する東京都の島のひとつ。人口は約7000人となっています。
島には一周できる道路などがあり、クルマがなければ生活が出来ない「車社会」の場所です。
一方でクルマにとっては過酷な場所でもあり、周りが海のための塩害や山道が多いためアップダウンの道で日常的に使われています。
今回の「愛車無料点検」では、そんな島民が日常で使うクルマに「異常がないか」を学生が見ることで、学校や今後の社会(多くはディーラーでの整備)では、あまり見ることの出来ないクルマと触れる場所にもなっています。
また今回の「愛車無料点検」には、国土交通省 物流・自動車局 自動車整備課の担当者も視察に訪れていました。実際に学生達が点検する様子について次のように語っています。
「現在、全国の自動車整備士では『若手がいない』という課題があります。
国土交通省としては『若い人に整備士になってもらう』という部分も重要なことだと思っています。
そうした中で今回のような取り組みはあまり例がありません。
普段、学生達が授業を受ける学校とは異なる場所で実際のクルマを見ることが『どう学生のモチベーションにつながるのか』『その後に繋がっていくのか』というのを見てみたいと思い来ました。
実際の様子を見ると学生達がどんな状況でも真剣に取り組んでいること、島には様々な状態のクルマがあることがわかりました。
今後、国土交通省でもなにか今回のような取り組みを後押し出来ないか検討していきたいと思います」
■実際に学生達はどう感じた? 一方で島民の反響は?
今回の「愛車無料点検」は、日産・自動車大学校の2級自動車整備士の資格を持つ学生が以下のような日常点検の内容を確認していきました。
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・ウインドウ・ウォッシャー液の量
・タイヤの溝深さ
・ブレーキ液の量
・ランプ類の点灯・損傷など
・バッテリ液の量
・パーキングブレーキの引き代
・冷却水の量
・ウォッシャーの噴射状態
・エンジンオイルの量
・ワイパーの拭き取り状態
・タイヤ空気圧
・エンジンのかかり具合・異音
・タイヤの確認、損傷など
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このような点検内容ですが、実際に八丈島で使われるクルマには、電気自動車やミニバン、軽バンなど様々な個体が存在。
さらに、ボディがサビだらけ、エンジンルームを開けたらヤモリがいた、さらにはフロアに穴が空いてたクルマなど学校の実習車では見られない症状が多数見受けられました。
そんな島のクルマを見た学生達は今回の取り組みについて、次のように話してくれました。
「今回、八丈島の取り組みに期待と希望してきました。普段の授業では見られないクルマに触れられることや、実際のユーザーの声を聞きながらクルマの状態を見るなど新鮮でした」
「実際に見たクルマではブレーキのパイプが錆びついている個体や空気圧が全然入っていない個体など、危険な状態のものもありました。こうしたクルマに対して責任を持って安全の話などができるなど有意義な取り組みになったと思います」
「いつもの実習車はあくまで授業で使うだけですが、今回のクルマは島の人が実際に使っているクルマです。そのため日常点検の内容とはいえ、安全に関する部分なので『責任感』を持って点検に取り組みました」
一方で実際に自分のクルマを点検してもらったユーザーからは次のような話が聞けました。
「日常的にクルマに乗っていますが、あまり状態は気にしておらず、車検くらいしかやっていませんでした。今回、学生達に丁寧に教えてもらいクルマの点検は大切だということがわかりました」
「あまり空気圧を気にしたことがなかったのですが、タイヤにとって空気圧は重要だということを教えてもらい、今後は日常的に気にしようと思いました」
「今回、なんとなく来てみたのですが、学生達がクルマを真剣に点検している姿はかっこよく、そして分かりやすく説明してくれました。このようなイベントにこれて良かったです」
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今回、八丈島で行われた「愛車無料点検」。
朝は10月とは思えない暑さ、昼にはゲリラ豪雨、そしてまた晴れて暑くなるという目まぐるしく変わる天候のなかで学生達は1台1台のクルマを真剣に点検していました。
巷では整備士は、大変な職業と思われている部分もありますが、日本の基幹産業となる自動車を支えている大切な仲間です。
そしてユーザーが乗るクルマは、その整備士が真剣に責任感を持って点検・整備をしてくれているからこそ乗れている、そうした「整備士は大切な職業、かっこいい職業」ということが認知されれば、整備士不足の解消にも繋がるかもしれません。