多人数乗車が可能な「ミニバン」は便利な一方で、大きなボディが取り回しに苦労することも。そんな人に最適なのが「極小サイズ」のミニマム・ミニバンです。
■使い勝手サイコーの「極小」7人乗りミニバン!
多人数乗車が可能な「ミニバン」は、利便性の高さから過去にブームとなり、現在では完全に人気ジャンルの一角として根付きました。
しかし広い室内スペースを求めたためにボディサイズの大きなモデルも多く、街中を運転した際には“取り回し”に苦労するという意見も少なくありません。
そのように、ミニバンの運転が心配だという人にオススメできるのが、7人乗りでありながら取り回しに困らない「極小サイズ」のミニバンです。
ダイハツは、広い収納スペースが魅力の軽ワンボックスカー「アトレー」をラインナップしていますが、過去には同車の派生モデルとして、7人乗車が可能なモデルも展開していました。
そのクルマこそが、2000年7月に発売した極小ミニバン「アトレー7」です。
同車は当時ラインナップされていた4代目の「アトレーワゴン」をベースに開発され、ミニバン化するにあたってリアのオーバーハングを延長。
同時にサイドモールも広がったため、ボディサイズは全長3765mm×全幅1515mm×全高1895mmに拡大し、ベースのアトレーワゴンより370mm長く、40mm幅広になっています。
そんなアトレー7ですが、ベースのアトレーワゴン自体が広々としたワンボックスカーなので、さらにボディを拡長したアトレー7はさらに広大な車内スペースを確保。
3列目シートの搭載を実現し、1列目2人/2列目3人/3列目2人の合計7人の乗車が可能なコンパクトカーを成立させたのです。
もちろんボディを拡大したうえ、1.3リッターのエンジンを搭載しているので、アトレー7は軽自動車枠を超えており、普通車に分類されます。
このエンジンは当時新開発されたもの。さらに新開発の電子制御2モード4速ATを組み合わせており、大人7人がフル乗車した状態であっても過不足の無い走行を可能としました。
またインテリアも、シートの追加と合わせてユーティリティの充実も図られ、2列目シートと3列目シートを個別に床下へと格納できる「ハイダウェイシート機構」を採用するなど、荷室を広々と利用したいシーンでも活躍するよう工夫が凝らされています。
さらにアトレー7はOEM車として、トヨタでも「スパーキー」の車名で販売されました。
しかしスパーキーはアトレー7の2カ月遅れとなる2000年9月に発売されたものの、ダイハツでのアトレー7の売れ行きと異なり、トヨタ側では販売が苦戦します。
様々なミニバンを取り揃えるトヨタゆえの販売状況の違いでしたが、結果としてスパーキーは2003年8月と早々に販売を終了。
一方でアトレー7の販売は当初は好調でしたが、徐々に販売数が低下して2004年には生産を終了します。
2台を振り返ってみると、スパーキーは3年、アトレー7は4年と、2台とも短い販売期間で姿を消してしまいました。
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「超コンパクトなミニバン」という斬新なクルマとして誕生したアトレー7。
当時は“大きなミニバン”が人気を集めていたため、成功とは言い難い販売結果に終わりましたが、2024年現在では、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」といったコンパクトミニバンが人気ジャンルの一角として高い支持を集めており、自動車販売ランキング上位の常連となっています。
コンパクトなボディと使い勝手を両立しようとしたアトレー7のコンセプトは、あまりにも早すぎた、今の時代にこそ輝くものだったのかもしれません。