現在の車速を示すスピードメーターは輸入車では200キロを超えるものが多いなか、ほとんどの国産車のスピードメーターは上限が180キロなのが一般的です。一体なぜなのでしょうか。
■なぜ「180キロ」メーターが普通になった?
アナログ式のスピードメーターを持つ国産車は、普通車は180キロ、軽自動車では140キロが上限の表示となっています。
最近のクルマは性能が向上し、それ以上のスピードを出すことも可能なようですが、メーターの上限表示が変わらないのには、なにか理由があるのでしょうか。
最近の国産車はエンジン出力だけでなく、ボディ剛性や足回りなどの全体的な走行性能が向上し、欧州などの世界各国でも非常に高く評価されるようになりました。
特に自動車大国のドイツでは最高速度無制限区間がある高速道路「アウトバーン」があったり、その他の国や地域でも日本の道路交通法以上にスピードが出せるところもあります。
そうした国でも必要十分な性能を出せるようになっており、それに合わせて国内モデルでもスピードメーターの表示を180キロ以上にしても良いと思うかもしれません。
しかし、そうしないのには理由があるようです。日本自動車工業会(自工会)の担当者は以下のように説明します。
「昭和50年代から60年代に、スピードリミッターに関する議論がなされているため、180キロ表示が始まったのはその頃かと思います。
180キロの規制は自工会による規制ではなく、あくまでも各社の判断による制限なのです。
議論を行った当時(昭和50年代から60年代)の規格に基づいたものにはなりますが、高速道路で6%の最大勾配を走行した場合を、平坦での走行に換算すると、180キロになるためです」
つまり、スピードメーター最高値の変更がないのは、昭和50年代から60年代に始まった表示がベースということです。
日本の道路での法定速度は、基本的に一般道で60キロ、高速道路では100キロ(一部120キロ区間あり)以下での走行が定められていますが、そもそも、このルーツも昭和にさかのぼるわけです。
一方で、輸入車の速度メーター表示が200キロ以上なのは、先述の通り高速道路の法定速度が日本よりも速いためです。欧州車の多くは、当初からアウトバーンの走行を想定してつくられているため、かねてより200キロ以上のメーターが備わるのです。
同様にクルマ社会のアメリカでは、州単位で速度制限がそれぞれ違うものの、最も速いところでは時速136キロ(85マイル)です。
このように、クルマはその国の速度制限に応じたメーターが備わるため、国産車は180キロまで、輸入車では200キロ以上になっています。
■「フルスケールメーター」は高性能の証? しかし見直しの動きも
実は、スピードメーターの最高値が180キロ以上のクルマは、国産車でもいくつかあります。
例えばレクサスのほとんどのモデルは260キロ、スズキ「スイフトスポーツ」も260キロ、マツダ「ロードスター」は200キロです。
当初は北米や欧州の高級ブランドとして展開していたレクサスなど、海外への輸出が前提とされているクルマは、製造時から輸出を見据えてフル表示(フルスケール)の200キロ以上のメーターを装備するメーカーもあります。
国内向けモデル・輸出向けモデルとメーターを何種類も作る必要がなく、製造ラインでの作業工数も減りコストカットができるためです。
さらに、輸出向けを想定しているということは、外国車と対等にあるという意味で「高性能車」の証だったといっても過言ではなく、オーナーの所有欲を満たすものとなっていたことも事実です。
こうしたことから、カスタムパーツメーカーなどから輸出モデル用のフルスケールメーターが販売されていたりしたこともありました。
ところが近年、電動化や低燃費といった環境負荷低減に加え、安全性能の向上が喫緊の課題となっています。
自動車大国であるドイツは環境先進国でもあり、気候変動を考慮して脱炭素化による速度制限の見直しの動きもあるようです。
さらに、クルマの安全性が世界トップクラスといわれるスウェーデンのボルボは、2020年5月に、2020年以降のすべてのボルボ車の最高速度を180キロに制限すると明かしています。
今後、クルマの速度制限に関する動きはどのようになっていくのか、注目したいところです。