近年、ガソリン携行缶の販売を中止するガソリンスタンドが増えているのですが、一体なぜなのでしょうか。また、もしガソリンを携行缶に入れる時はどのようなことに注意すべきなのでしょうか。
■ガソリン携行缶の販売はなぜ禁止なった?
ガソリンは私たちの生活に欠かせないエネルギー源ですが、その取り扱いには多くのリスクが伴います。
特に災害時やガス欠などの緊急時には、携行缶を使ってガソリンを一時的に保管・輸送する必要が生じることがあります。
しかし、近年、多くのガソリンスタンドで携行缶への給油が禁止されるケースが増えています。
なぜ、このような規制が強化されているのでしょうか。
まず、ガソリンスタンドで携行缶への給油が禁止されるようになった背景には、主に安全性と犯罪防止が挙げられます。
ガソリンは非常に可燃性が高く、取り扱いを誤れば大きな事故や災害につながる危険性があります。
特に、2019年に発生した京都アニメーションの放火事件では、犯人が携行缶を使用して大量のガソリンを購入し、それを放火に使用したことで、36人が死亡、69人が負傷する大惨事となりました。
この事件を受け、ガソリンの取り扱いに関する規制が全国的に強化されました。
ガソリンの危険性はこの事件を契機に再認識されましたが、携行缶を使ったガソリンの販売に対する規制強化は、このような犯罪防止だけでなく、一般の安全対策の一環としても進められています。
従来は、有人のガソリンスタンドであれば携行缶への給油が比較的容易に行われていましたが、2020年2月よりガソリンの容器への詰め替え販売を行う場合、本人確認(運転免許証等)、使用目的の確認、販売記録の作成が消防法で義務付けされています。
このため確認作業が増加し、時間や手間がかかることから、携行缶への給油を中止するガソリンスタンドが増えているのです。
実際に都市部では、多くのガソリンスタンドで携行缶での給油が禁止されています。
その理由の1つは、規制強化に伴う手続きの複雑化や確認作業の増加です。
これにくわえて人手不足が影響し、セルフ式のスタンドでは元々携行缶への給油ができないため、有人店舗でも同様に販売を中止する店舗が増えています。
ただし、地方や物流が行き届きにくい地域では、携行缶を使用する需要が高いため、まだ販売が継続されているケースもあります。
■もし携行缶にガソリンを入れる時に、守るべき事項とは?
また携行缶への給油が許可されている場合でも、いくつかの注意点があります。
まず、ガソリンを携行缶に入れる際には、必ず耐火性や耐圧性のある国の規格に適合した専用の携行缶を使用することが求められます。
実際にガソリンの給油が認められている容器は、性能試験に合格した22リッター以下の密閉できる金属性容器です。
なお、性能試験に合格した容器には必ず「試験確認済証」のシールが貼られており、このシールが貼られていない場合は給油できません。
これは一般的なプラスチック容器や不適切な容器を使用すると、ガソリンの揮発性によって引火のリスクが高まるためです。
しかし、性能試験に合格した10リッター以下のプラスチック容器であれば給油可能とされています。
また、給油中は必ず静電気対策を行うことが重要です。
携行缶と給油ノズルの間に静電気が発生すると、火花が飛んで発火する恐れがあります。
静電気を防ぐため、給油の前には静電気除去シートに触れて放電を行うことが重要です。
なお、携行缶を地面に置いてから給油することで、静電気を減らす効果もあります。
そして給油する時は風通しの良い場所で行い、近くに火気がないことを確認しつつ、適切な容量を守ることも大切です。
携行缶は、満杯まで入れると膨張による圧力が缶内にかかる危険が増すため、容量の90%程度に留めることが推奨されています。
空間を残すことで、ガソリンの揮発による圧力を調整する余裕ができ、安全性が向上します。
なお、携行缶に入れたガソリンは、できるだけ早く使用するように心がけることが大切です。
ガソリンは時間が経つと劣化し発火点が下がるため、長期間保存すると引火のリスクが高まります。
もし保管する場合は、直射日光の当たらない風通しの良い冷暗所を選び、子どもの手が届かない場所に置くようにしましょう。
※ ※ ※
携行缶への給油が禁止される背景には、このような安全対策の強化と犯罪予防の観点があることが分かります。
ガソリンは便利なエネルギー源である一方、その取り扱いには多くのリスクが伴います。
携行缶を使用する場合は必ず規定の手続きを守り、安全に使用することが大切です。
またガソリンスタンド側のルールに従い、適切な手続きを行うことで、トラブルや事故を防ぐことができます。
今後も、ガソリンの取り扱いに関する規制は厳格化されることが予想されますが、それは私たちの安全を守るための措置です。
適切な知識と対策を持って、ガソリンの安全な利用を心がけましょう。