クルマのインパネやセンターコンソールなどに、クルマがダンスをしているかのような表示のスイッチがあることがあります。いったいどんなときに使うスイッチなのでしょうか。
■謎のスイッチは「非常時にこそ役に立つ」ものだった!
クルマのセンターコンソール付近やインパネの端などに、クルマがダンスをしているかのような表示のスイッチがあることがあります。
多くの人は「特に使ったことがない」と思いますが、実はこれ、知っておくと非常時に役に立つかもしれないスイッチなのです。
このスイッチは「トラクションコントロール」をオフにするものです。
そもそもトラクションコントロールとは、雪道や濡れた上り坂のような滑りやすい路面で、タイヤがスリップしてしまったとき(グリップしないとき)に、エンジン回転を抑えることで駆動トルク(前に進もうとする力)を絞り、タイヤが路面を確実に捉えることができるようにするもの。
高度なシステムになると、車速やハンドルの切れ角なども検知して、4輪それぞれを制御するものもあります。
たとえば、急加速してタイヤが空転してしまったときや、雨の日などの路面が滑りやすい状況でカーブを曲がるタイミングで、アクセルを踏んでタイヤが横滑りしてしまいそうなとき、このトラクションコントロールが作動することで、タイヤがスリップするのを抑制します。
ABSなどと同様に、姿勢制御システムの一部に組み込まれており、VDCオフスイッチ(日産)やVSCオフスイッチ(トヨタ)、VSAオフスイッチ(ホンダ)など、メーカーによって名称が若干異なりますが、機能の内容はほぼ同じです。
安全装備ですので通常はONにしておくのが望ましいのですが、このトラクションコントロールが邪魔になることもあります。
たとえば、未舗装路のぬかるみにはまってしまったり、雪道でタイヤがスタックしてしまった場合などは、駆動力を抑制してしまうとむしろ脱出が難しくなるケースがあります。
そこでトラクションコントロールの「オフスイッチ」を押して機能を切ることで、駆動輪が回転しやすくなり脱出できる可能性があるのです。
自力でどうしようもなくなると、JAFなどのロードサービスに救援要請が必要となりますが、このトラクションコントロールをオフにすることで、自力で脱出できる場合もあります。
非常時のためにぜひ覚えておきたいスイッチのひとつです。
※ ※ ※
タイヤが空転してしまったときに使える技としてはほかにも、「スノーモード」や「2速発進」などに切替えることで脱出できることがあります。
またアクセルペダルをゆっくり踏み込んで小刻みに前進と後退を繰り返し、振り子のようにクルマを動かすことでも脱出できる可能性があります。
トラクションコントロールは、知らずに安全走行を支援してくれる機能。その機能を止める“オフスイッチ”は、いざというときにピンチからの脱出を支援してくれる、ドライバーにとって心強いスイッチなのです。