三菱にはかつて、全長4mを切るコンパクトなボディに3列シートとスライドドアを備えるミニバンがありました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■各シート独立で使い勝手サイコー! サイズも魅力的すぎる
SUV全盛の現在ではありますが、多人数乗車が可能でスライドドアを備えたミニバンも、使い勝手の面ではまだまだ人気のジャンルです。
そんなミニバンも、年を追うごとにボディサイズが大型化。5ナンバーミニバン“御三家”と言われたトヨタ「ノア/ヴォクシー」、日産「セレナ」(標準モデルを除く)、ホンダ「ステップワゴン」は、すべて3ナンバーサイズにサイズアップしました。
そこで人気を集めつつあるのが、トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」といったコンパクトなボディサイズの3列シートミニバンです。
しかし、過去には全長3605mmというコンパクトサイズにもかかわらず、6人乗車を可能としたモデルが存在していました。それが三菱「タウンボックスワイド」です。
タウンボックスは、現在も三菱のラインナップにある軽自動車のワンボックスワゴンで、現行型はスズキ「エブリイワゴン」のOEMモデルとなっています。
一方、タウンボックスワイドは1999年に登場し、1.1リッターの排気量を持つ直列4気筒エンジンを搭載する普通車(小型車)となっており、2名×3列の6人分の座席が用意されていました。
名前からも推察できるように、軽自動車のタウンボックスをベースとした普通車であり、全長や全幅はバンパーなどの外装部品によって大型化しているものの、室内空間はほぼ軽自動車と同等となっていました。
ベースとなった当時のタウンボックスは、まだ三菱が自社開発をしていた頃のモデルで、6代目「ミニキャブバン」の乗用タイプ。
ちなみにこの6代目ミニキャブバンは、今ラインナップされている電気自動車の「ミニキャブEV」のベースともなっているため、かなりのロングセラーモデルということになります(途中販売休止期間を含む)。
エクステリアのデザインは前後のバンパーやブリスター形状のボディパネルのほか、ヘッドライトの形状も専用品を用意する力の入れようで、ツートンカラーではこのバンパーやボディパネルが別のカラーになることで、よりワイド感が演出されていました。
また、リアデザインもタウンボックスがテールランプ間にナンバープレートを設けていたのに対し、リアゲート左下にオフセットして配置する個性的な専用スタイルとなっており、リアから見たインパクトはかなりのものでした。
インテリアは、デザインについてはタウンボックスとほぼ共通となっているものの、荷室部分に3列目シートが備わるのが最大の違いです。
ただこの3列目シートは観光バスなどに備わる「補助席」のような簡素なものとなっており、シート横の内装パネルには座席を格納するスペースが用意されていました。
カタログでも「4+2」という文字が躍っていたこともあり、当初から3列目シートはエマージェンシー用に用意されていたものと言えそうです。
とはいえ、実はシートが全て独立していたため、どちらか片側の2列目、3列目シートを格納すれば、長尺物と4人を同時に乗せて移動することができるなど、使い勝手は決して悪いものではありませんでした。
新車時の価格は、2WDが139万8000円、4WDが151万8000円と、比較的安価だったことも大きな魅力です。
そんなタウンボックスワイドは販売面では非常に苦労し、登場からわずか2年、3500台弱を販売して早々に姿を消すこととなってしまいました。
しかし現在、大きくて豪華な3列目シートミニバンが多い現代こそ、このような簡素なモデルが1台くらいあってもいいのかもしれません。