トヨタ「クラウン」がSUV化し再注目されていますが、先立って日産も同様の戦略を取っており、かつて「スカイライン」をSUV化したモデルを販売していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■スカイラインをSUV化したクルマとは?
トヨタは長年にわたって高級セダンとしての地位を築いてきた「クラウン」をSUV化したことで、大きな話題を呼びました。
こうした動きは、近年の自動車市場におけるSUVの圧倒的な人気を反映したものであり、多くのメーカーがセダンやクーペからSUVへの移行を進めている現状が背景にあります。
そんななかトヨタに先立って日産も同様の戦略を取っており、高性能スポーツセダンやクーペを展開する「スカイライン」をSUV化したモデルを販売していました。
一体どのようなクルマなのでしょうか。
そのクルマとは「スカイライン クロスオーバー」です。
スカイラインは長い歴史のなかで多彩なボディタイプを展開してきましたが、基本的にはセダンやクーペとしてのアイデンティティを守り続けてきました。
しかし、スカイラインクロスオーバーはその伝統を大きく変え、SUVという新たなジャンルに挑戦したモデルです。
このモデルは12代目スカイライン(V36型)の派生車として、2009年に登場しました。
ボディサイズは全長4635mm×全幅1805mm×全高1575-1600mmと、日産が現在販売しているSUV「エクストレイル」(全長4660mm×全幅1840mm×全高1720mm)と近いサイズ感です。
エクステリアは、エレガントなクーペのフォルムとSUVの躍動感をひとつにした美しいプロポーションを実現。
最低地上高は150mm-165mmを確保し、荒れた道を走行できるようなSUVらしい特性を備えています。
またスカイラインの代名詞の1つである丸形のテールレンズについては、バックゲートの開口部を広げて実用性を優先するために、あえて採用されなかったようです。
インテリアは、セダンやクーペなど他のスカイラインとは別に、専用に設定された優雅な弧を描くデザインが特徴です。
特に上級グレードは、シート地やダッシュボード、アームレストに至るまで手触りの良い上質な本革を惜しみなく使用した、まさに贅を尽くした仕様となっていました。
センターパネルには深みのある本木目パネルが採用され、高級感と色気を醸し出しています。
パワートレインには最高出力330馬力・最大トルク361Nmの3.7リッターV型6気筒エンジンを搭載。
トランスミッションは7速ATを採用し、駆動方式はFRまたは4WDから選択できました。
このように、セダンやクーペ、SUVの長所を取り入れたスカイラインクロスオーバーは一見魅力的なモデルでしたが、当時はまだSUVブームの黎明期であり、結果として販売は伸び悩みました。
また、高排気量エンジンしか設定がなかったことも、燃費や税金の面で消費者に敬遠される原因となり、最終的に2016年には生産が終了。
スカイラインクロスオーバーは1世代限りで市場から姿を消すこととなりました。
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近年SUVはその多目的性とアウトドア志向の高まりから、セダンやクーペに代わって自動車市場の中心的な存在となりつつあります。
その一方で、伝統的なセダンブランドの衰退が顕著になっています。
例えばスカイラインは2024年10月現在、日本市場で日産最後のセダンとしての地位を守っていますが、セダン全体の人気は低下傾向にあり、SUVやクロスオーバーモデルの台頭が避けられない状況です。
トヨタのクラウンがSUV化して再注目されたように、スカイラインも再びSUVという形で展開することで、より大きな栄光を掴む可能性があるかもしれません。