街中では、バイクがクルマとクルマの隙間をぬって道を通り抜ける、「すり抜け行為」を見かけることがあります。この行為は交通違反に該当するのでしょうか。
■すり抜けに対しては「マジで危ない」「クルマの後ろで待て」との声も
クルマで信号待ちをしているとき、バイクがクルマのすぐ横をすり抜けていくことがあります。
「クルマに当たるのでは…」とヒヤヒヤする場面も少なくありませんが、このようなすり抜け行為は交通違反に当たらないのでしょうか。
クルマで信号待ちをしていると、バイクがクルマの横をすり抜けて前に出てくるケースがあります。
時にはバイクがクルマの横スレスレを通過するため、「ぶつけられるのではないか」と心配に思う人も少なくないでしょう。
バイクのすり抜けに対してはSNS上でも「マジで危ないので即刻免許返納してほしい」「クルマの後ろで待てば良いのに」など批判的な声が寄せられたほか、「すり抜けバイクにミラーをぶつけられた」という当て逃げ被害の報告も聞かれました。
バイクが狭いスペースですり抜けをすると周囲のクルマに接触したり、左折するクルマに巻き込まれたりするおそれもあります。このように危険の多いバイクのすり抜け行為ですが、交通違反に当たらないのでしょうか。
結論から言うと、すり抜け方法によっては交通違反となってしまう可能性が十分にあります。
そもそも道路交通法には「すり抜け」という言葉は明記されておらず、法律上は「追い越し」または「追い抜き」として扱われます。
追い越しとは車両が『進路を変えて』前方の車両を追い抜き、そのまま直進または再び進路を変えて追い抜いた車両の前方に出ることを意味します。
その一方、追い抜きは『進路を変えずに』前方の車両を追い抜いて、そのまま直進または進路を変えて追い抜いた車両の前方に出ることをいいます。
なお進路変更と車線変更は混同されやすいですが、車線変更が進路変更の一種であり、特に車線をまたぐものを車線変更と呼びます。
つまりバイクのすり抜けが交通違反に該当するかどうかは、バイクの追い越し・追い抜き行為が適切か否かで決まります。
■これが「バイクのすり抜け」で交通違反になる行為です
X(旧Twitter)においては2024年7月3日、埼玉県警察本部交通部交通総務課がバイクのすり抜けに関連する交通違反の一例として、次の違反を挙げています。
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1 通行区分違反(歩道・路側帯、右側通行)
2 割込み等
3 進路変更禁止違反
4 追越し違反
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まず1の「通行区分違反」は道路交通法第17条に規定されており、同条第1項によると車両は歩道または路側帯と車道の区別のある道路においては、原則として車道を通行することが義務付けられています。
加えて同条第4項では、車両は車道の中央から左側の部分を走行する「左側通行」が定められています。
これらのルールにより、バイクがすり抜けをするために歩行者用のスペースである路側帯を走行したり、一時的に反対車線を逆走したりすると交通違反となります。
次に2の「割込み等」については道路交通法第32条に定めがあり、信号待ちで停車している車両や渋滞中の車両の間をすり抜けて先頭に出る、クルマとクルマの間に割り込むといった行為を禁止しています。
また、バイクが信号待ちの先頭車の前に割り込んで停止線を越えた場合は「信号無視」とみなされる可能性もあります。
たとえ信号待ちや渋滞している場面であっても、バイクは無理に割り込まず他の車両の後ろで待機することが大切です。
さらに3の「進路変更禁止違反」は道路交通法第26条の2に基づく違反です。
たとえば車両通行帯が黄色線で区画されている道路では進路変更が禁止されているため、バイクがすり抜けの際に黄色線をまたいで隣の車両通行帯に移動すれば、この違反に当たります。
そして4の「追越し違反」は道路交通法第28条~第30条にルールがあり、他の車両を追い越す際は原則「右側追越し」をすること、道路の曲がり角や横断歩道付近といった特定の場所で追越しを禁止することなどを定めています。
もし仮にバイクが前方のクルマを左側から追い越したり、道路の曲がり角付近でクルマを追い越したりしてすり抜けをすると、この追越し違反に該当する場合があります。
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信号待ちや渋滞時にはバイクによる「すり抜け」がよく見られます。
このような行為はさまざまな交通違反に抵触する可能性があるほか、何より周囲のクルマとの接触事故につながるおそれもあるため、可能な限りおこなわないよう注意しましょう。