日産が世界に誇るスポーツモデル「GT-R」の人気を確固たるものにした立役者「R32型」。同車には、“ひな型”といえるマシンが存在していたといいます。
■日産「GT-R」は「ミッドシップ・スポーツカー」になる予定だった!?
日産が世界に誇るスポーツモデル「GT-R」は、「スカイラインシリーズ」から独立する形で登場した「R35型」はもちろん、「スカイラインGT-R」では先代の「R34型」や先々代の「R33型」も高い人気を誇ります。
しかしGT-Rの人気を確固たるものにした立役者は、レースシーンで活躍し、ストリートでも最強のマシンとして君臨した「R32型」といっても過言ではないでしょう。
そんなR32型ですが、実は“ひな型”といえるマシンが過去に存在していました。
R32のひな型といわれているクルマの名は「MID4(ミッド・フォー)」。
MID4は、日産が研究開発の成果を発表するための実験車両として開発されたモデルで、エンジンをミッドシップレイアウトで搭載し、さらに四輪駆動であることから“MID4”と命名されました。
ボディサイズは、全長4150mm×全幅1770mm×全高1200mmと、ワイド&ローを体現したスタイルで、車両重量は1230kgと軽量。
リトラクタブル・ヘッドライトを備えたボディは、フェラーリやランボルギーニを思わせるクサビ型となっており、サイドからリアに掛けての流れるようなラインと、近未来感のある複雑なリアデザインが特徴的でした。
パワーユニットには、新開発の3.0リッターV型6気筒DOHCエンジンを搭載し、最高出力230馬力を発揮。組み合わされるトランスミッションは5速MT。
このエンジンを先述のとおりミッドシップレイアウトに横置き配置して、日産が開発した電子制御四輪操舵「HICAS」を採用したフルタイム四輪駆動となっていました。
そんなMID4は、1985年のフランクフルトモーターショーで初公開され、「このまま近いうちに発売されるのでは」と大きな注目を集めます。
そしてショーで大きな反響を受けたことから、日産はMID4の市販化を検討。
さらにブラッシュアップを行った2世代目を開発し、1987年の東京モーターショーで発表しました。
「MID4-II」と名付けられたこの新型モデルは、旧モデルの直線的で荒々しいスタイルから一新、まるでフェラーリ「348」のような、全体的に丸みを帯び洗練されたラインへと進化しているのが特徴です。
また、エンジンのマウント方式も横置きから縦置きに変更。エンジン自体もインタークーラーツインターボ化したVG30DETT型になり、最大出力が330馬力にアップしました。
かつてマクファーソンストラット式だったサスペンションも、フロントをダブルウィッシュボーン、リアをマルチリンク式に改められています。
ますますファンからの市販を望む声は大きくなり、実際にほぼ市販レベルと呼べるほど開発が進んでいたMID4-IIですが、残念ながら市販には至りませんでした。
しかし、MID4およびMID4-IIのために開発された新技術は、後に登場するクルマへと受け継がれることになります。
例えば、フルタイム四輪駆動方式と四輪操舵システムの組み合わせはR32型へと受け継がれ、VG30DETT型エンジンはZ32型の「フェアレディZ」に搭載されました。
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このようにMID4シリーズは、市販されることは無かったものの、R32など日産が誇るスポーツカーの礎となった偉大な一台です。
日産も同車のことを大切に扱っており、ときどき日産のギャラリーやイベントに展示されることがあるので、その際には足を運んでみてはいかがでしょうか。