トヨタが1989年に発売した「デリボーイ」に注目が集まっています。30年も前のクルマがなぜ令和の時代に求められているのでしょうか。
■トヨタの「小型商用バン」なぜ大人気に!?
昨今のアウトドアブームの影響で、車中泊に適した室内空間の広いクルマに注目が集まっています。
中には、20年や30年も前のクルマを探し出して、アウトドア仕様にカスタマイズする強者も存在。
例えば、トヨタが1989年に発売した「デリボーイ」も、広い荷室を持つことからアウトドアシーンで再注目を浴びているクルマの一台です。
デリボーイとは、トヨタが「個人商店の小口集配送に適したクルマ」として、1989年7月に発売した小型貨物自動車です。
車両のベースとなったのは、インドやアフリカなど新興国向けに生産していたワゴンタイプの乗用車「キジャン」の3代目モデル。
しかしベース車は5ドアでしたが、デリボーイは3ドアに変更されており、右側がヒンジタイプ、左側がスライドタイプ、リアドアが観音開きとなっています。
デリボーイのボディサイズは、全長4385mm×全幅1650mm×全高1985mm。
似たようなモデルとして、トヨタがヤマト運輸と共同開発した配送用バン「クイックデリバリー」が存在しますが、デリボーイはひとまわり小さなサイズを採用しています。
コンパクトながらも小口集配送に利用できるよう広い荷室を備えており、ウォークスルーも可能な構造でした。
そのため、発売当時の資料では「日本初の大衆クラスのウォークスルーバン」であるとアピールしています。
初期ラインアップのグレードは、2人乗りタイプの「201」「202」と、シートアレンジによって2人乗りと5人乗りが切り替えられる「501」「502」を用意。
この「202」と「502」は、それぞれの乗車人数におけるデラックス仕様という位置付けです。
あくまでも配送業務に徹するために開発されたため、助手席はすべて折り畳み式。
「501」と「502」に設けられた後部座席は左右分割式となっており、左半分は側面に折り畳むことができます。
パワーユニットは、当初1.5リッターエンジンと5速MTの組み合わせのみでしたが、後に2.0リッターのディーゼルエンジンや3速AT、4速ATといったモデルも追加され、選択肢が増えました。
そんなデリボーイですが、発売当時はコンセプトのとおり小口配達用として利用されたものの、内装や装備が簡素すぎたことや、配送用にはもっと大きな荷室スペースが望まれていたことなどの理由から、思いのほか販売が伸びず、1995年に生産が終了となりました。
このようにわずかな期間しか生産されなかった不遇なデリボーイでしたが、令和の時代に再び注目を集めます。
コンパクトながらも広い荷室を備えていることから、先述のように、キャンプカーのベースとして活躍することになりました。
しかし現存数が少ないため、希望してもなかなか手に入れることはできないとのこと。
まさかかつての不人気モデルがお宝として扱われ、趣味の1台として愛される日が来るとは、デリボーイ自身も当時は思いもしなかったでしょう。