「小さなクルマ」のイメージが強いスズキですが、その想像を上回る「小さすぎる」クルマを販売していた過去があります。どのようなモデルなのか、実際のオーナーからの声とあわせて紹介します。
■全長2.7m! スズキの「めちゃ小さいクルマ」が凄い!
スズキは「小さなクルマ」を得意とするブランドとして知られ、歴史のある軽自動車「アルト」やスポーティなコンパクトカー「スイフト」などを展開しています。
しかし過去には、そんなイメージすら上回るほどの「極めて小さなクルマ」を販売していました。
そのクルマの名は「ツイン」。
ボディは全長2735mm、ホイールベースにいたっては1800mmという極端な短さで、大人2名が乗れる設計です。
一般的な軽自動車の全長は3395mmですので、比較するとより小ささが際立つツインは、役割をシティコミューターに特化させることでリアシートや荷室スペースを削減。
そのぶん自由で斬新なデザインを採用し、大胆な丸みを持たせたボディスタイルを完成させました。
またこの短い全長は、最小回転半径3.6mという驚異的な値の達成にもつながり、小回り性能も優れたモデルとなっています。
さらにツインは軽量で、ベースグレード「ガソリンA(FF、5MT)」において570kgという軽さを実現。
これは燃費の良さにも繋がり、先述のグレードは複雑なハイブリッドシステムなどを搭載しないにも関わらず、26km/L(10・15モード)の低燃費性能を誇ります。
そのほか、ツインには上級グレードに先進的なハイブリッドシステムを搭載したモデルも用意されるなど、かなり意欲的なクルマだったことが分かります。
そんなツインの車両価格(消費税抜)は、49万円から139万円。
当時の新車価格としても手頃な設定でしたが、意外にもツインの販売は低迷しました。
実はこの49万円の最安グレードには、エアコンやパワーステアリングすら搭載されておらず、機能面での不満が多かったのです。
一方で、ハイブリッドシステムを搭載した上級グレードは、小さなボディにバッテリーやモーターを搭載したことで重くなり、車内スペースも圧迫されるなど使い勝手が悪くなりました。
結果的に、ツインは登場から3年未満となる2005年で販売終了し、明確な後継モデルも登場しなかったため、スズキの挑戦の歴史の1ページとして消えてしまったのです。
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多くの自動車ユーザーは、ツインを「2人しか乗れないエアコンのない軽自動車」として考えたため、同車の販売は奮いませんでした。
しかしこれが「雨に濡れずに安全に乗れる4輪スクーター」として評価されていたなら、その後の結果は異なっていたかもしれません。
また現在では、その独特なデザインや小ささが評価され、ツインの中古市場での価格は高騰しています。
カスタムも人気で、エンジン交換やタイヤの大径化、サンルーフ取り付けなど、多様な楽しみ方をされている個体も見られます。
この様子を見ても、ツインを単なる「失敗作」と見なすのはいささか早計かもしれません。