2024年10月10日にホンダは「N-VAN」の新たなモデルとして新型「N-VAN e:」を発売しました。軽商用バンのバッテリーEVですが、一体どのようなクルマなのでしょうか。実際に自動車評論家の国沢光宏氏が試乗しました。
■補助金も魅力的な「N-VAN e:」
我が国における電気自動車の夜明けは軽自動車から始まると思っている。
いや、すでに日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」で東の空は明るくなり始めているのだけれど、いかんせん電池搭載量が少なく、コストパフォーマンスという点でもエンジン車に対しハンデがあったと思う。
しかし、今回発表されたホンダ「N-VAN e:」は、もはやエンジン車と同じか、それ以上に安価な総合コストで乗れるようになった。
N-VAN e:の売れ筋グレードになる4シータ-の「L4」は269万9400円。
同車は自動ブレーキに代表されるADASを始め、オートエアコンやシートヒーターまで標準され、商用バンとして考えると豪華装備モデルである。
このグレードを購入すると、国からの補助金が55万円出るため、214万9400円。
エンジン車の軽バンだと130万円くらいなので割高です。
ただ、このクルマで荷物を運ぶ仕事をするのなら(資格無し。個人でもOK)、黒字に黄色文字のナンバー向けに交付されるLEVO補助金として100万円を受けとることができる。
EV補助金とは併用出来ないものの、これを使うと169万9400円。
自動車税や重量税が掛からず、電気代はガソリン代の半分以下で済むため、10年/10万km走ったらむしろN-VAN e:の方が安く付く。
何を隠そう私(国沢光宏)もN-VAN e:を購入したのだが、東京都は国と別に35万円。
さらに太陽光発電を導入しているためプラス30万円。
トータル120万円の補助が出るので、149万9400円になってしまう。
この価格になると、エンジンで走る軽バンを買うより電気軽バンの方がリーズナブル。
来年(2025年)の補助金については決まっていないものの、東京都の人なら買わないと損に思えるほど。
■気になる走りと乗り心地は?
長い前置きになった。試乗と行きましょう。
試乗車として用意されたN-VAN e:は、私が購入したのと同じ「L4」だ。
クルマ好きにとってN-VAN e:の大きな魅力は、最高出力がターボ車と同じ64馬力あること。
私のN-VAN e:は、引退後のベースにする東京都の八丈島に持って行くのだけれど、火山で出来た島とありアップダウンが厳しい。
なかには100mくらいの標高差ある区間などもある。
現在、乗っているエンジン車の軽バンは50馬力を下回るため、伝達効率の良いマニュアルミッション車でも50km/hをキープするのはアクセル全開に近い。
N-VAN e:を八丈島で走らせていないけれど、今回の試乗では、同じような登り坂を軽々と走ってしまった。
その走りは、アクセルを踏んでからパワーが出るまでのタイムラグがある軽ターボよりパワフルなほど。
また、荷物を積んだ時の余裕だって大きい。
エンジン車の軽バンは大人4人で乗ると明らかに加速や登坂性能が悪化する。
前出の八丈島の長い登り坂は、ギアを1つ下げなければならないほど。
それが、低い速度域から太いトルクを出す電気自動車だと全く苦にならない。
参考までに書いておくと、N-VAN e:の最大積載能力は300kg。
これだけ積めるとなると、誰だって「N-VAN e:最高!」と思うことだろう。
このように魅力的なN-VAN e:ながら、難点は空荷での乗り心地。タイヤが硬すぎるんだと思う。
今回も3人乗車と1名乗車で走ってみたが、乗り心地は全く違った(3人乗車のほうがいい)。
いつも乗っているダイハツ「ハイゼットバン」だと空荷でも乗り心地は悪くならない。
このあたり、ダイハツの方が上手なセットアップを見つけているように思う。
私はN-VAN e:の乗り心地だと辛抱出来ないため、ダンパーを変えるかタイヤを変えるかして改良したい。
とはいえ満足度は相当高い。何より軽バンと思えないほど静かでパワフル。
販売台数が増えれば生産コストだって低くなっていく。
5年もすれば補助金に頼らず、エンジン車の軽バンと同じくらいの車両価格になっていくんじゃなかろうか。
N-VAN e:の満充電航続距離は普通に走って200kmくらい。冬場にヒーターを使っても160kmは走る。
軽バンの用途として考えたら必要にして十分なスペックだと思う。