トヨタは過去に「シエンタ」よりも遥かに小さな3列シートミニバンを販売していました。一体どんなモデルだったのでしょうか。
■“新車149万円”のトヨタ「価格破壊ミニバン」
クルマの歴史には、「デキはよかったのに売れなかった」というモデルが数多く存在します。
例えば、トヨタが2008年に発売したとある小型ミニバンも、評判が良かったにも関わらずデビューから3年余りで消えてしまったクルマでした。
そのモデルの名は「パッソセッテ」。
同車は、トヨタから2008年12月にデビューした7人乗りの小型ミニバンで、初代「シエンタ」の後継モデルという位置付けで展開されました。
パッソセッテの特徴は、「3列シートを備えた、7人乗りが可能な広い車内空間」と「コンパクトなボディゆえの乗りやすさ」を兼ね備えている点にあります。
ボディサイズは全長4180mm×全幅1695mm×全高1620mmとコンパクトですが、全長は初代シエンタよりも80mm長く設計。
これにより、この手のモデルでは狭く感じやすい3列目シートでも、しっかり座れるように調整されています。
また、この3列目シートは運転席側に倒すことでフラットになる構造を採用しており、3列目シートを使わないときには畳んでおくことで、広いラゲッジスペースとして活用することができました。
運転席と助手席シートは、グレードによってセパレートとベンチシートに分かれており、2列目シートは中央分割式の3人掛けタイプを採用。
この後部座席も用途に応じて様々なシートアレンジができるので、パッソセッテはあらゆる人にとって使い勝手の良いモデルに仕上がっていました。
また、シート以外のインテリアに目を向けると、全体的にすっきりとしたシンプルなデザインを採用しており、これも車内が広く見えるポイント。
運転席周りにはセンターメーターを採用していてるのがいるのが特徴的で、スイッチ類も全て中央にまとめており、スマートな造りです。
パワーユニットには、最高出力109馬力を発揮する1.5リッターエンジンを搭載。この小型ミニバンとしては力強いユニットに4速ATを組み合わせることで、7人が乗ってもストレスを感じさせない走りを実現しました。
さらにこのトランスミッションには「シーケンシャルシフトマチック」も採用しており、スポーティな走りを楽しむことも可能なのはパッソセッテならではの魅力です。
安全装備も充実しており、デュアルSRSエアバッグやEBD付ABSなど、安全装備も充実。
これらの内容を取り揃えながら、パッソセッテの車両価格は149万円からと、驚くほどお手ごろな価格設定で発表されました。
しかし意外なことに、パッソセッテの販売は思わぬ不振に見舞われます。
その原因のひとつと言われるのが、近いコンセプトを持つホンダの小型ミニバンである 初代「フリード」の存在です。
初代フリードは広い車内空間を備えるだけでなく、ヒンジ式ドアのパッソセッテには採用されなかった「後列スライドドア」を搭載。
その使い勝手などが評価されて初代フリードが大ヒットする一方、パッソセッテは逆風を受け、販売数が伸びませんでした。
そうしてわずか約3年半で、パッソセッテは販売を終了。
後列ドアがヒンジ式という不利な面はあったものの、全体的に「良いクルマ」と評価された一台でしたが、それ以上にライバルが強力だったのが不運でした。
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ちなみにこのパッソセッテは、ダイハツが製造していた小型ミニバン「ブーンルミナス」をトヨタに供給するかたちで展開されるOEMモデルでしたが、パッソセッテ同様にブーンルミナスも短期間で販売を終了。
この事態を危惧したトヨタは、やむなく先代モデルに当たる初代シエンタを再販するという異例の措置に出て、コンパクトミニバンの需要に対応します。
これが、現在3代目モデルが販売され人気を得ているシエンタの再興に繋がっていくのです。