警察車両の一種である覆面パトカーには、ある特徴がありますが、愛車を覆面パトカー“風”にカスタムするのは違反になるのでしょうか。
■パトカー“もどき” 違反になることも…
警察車両の一種である覆面パトカーは、交通違反を取り締まるものや内偵捜査に用いるもの、要人警護に用いるものなどがあります。
いずれの覆面パトカーでもアンテナや格納/脱着式の赤色灯、サイレンアンプといった専用装備が取り付けられていますが、個人の趣味でマイカーを警察車両や覆面パトカー風にカスタムすることは違反にならないのでしょうか。
2024年2月、福岡県で覆面パトカーを装い赤色灯を装着したクルマが赤信号の交差点に侵入し、タクシーと接触する事件が発生しました。
4人がケガを負ったこの事件は、覆面パトカー風のクルマに乗車していた2人の男が危険運転致傷の罪に問われ、10月はじめに執行猶予5年懲役2年2ヵ月(1人は2年)の判決が言い渡されました。
男らは「パトカーが好きだった」などと言い、いわゆる「パトカーマニア」だったことが発覚しています。
今回の事件は緊急車両ではないのにもかかわらず、赤色灯を点灯させ緊急走行の真似事をし、さらに赤信号を無視しているため、趣味の範疇を超えた違法行為であり、断じて許される行為ではありません。
では、個人で楽しむ範囲では、どこまで警察車両に似せることができるのでしょうか。
まずパトカーの装備のうち、最も特徴的なのが赤色灯です。パトカー以外でも消防車や救急車なども装備しています。
屋根に付いている赤色灯は、周囲にいる人の視覚と聴覚両方に訴えて注意喚起するものですが、赤色灯は緊急車両にのみ使用が許されるもので、一般車両が公道で使用することはできません。
これは道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第218条(灯火等の制限)で、緊急自動車以外の車両に赤色灯を装着することが禁止されています。
緊急自動車とは、パトカー、消防車、救急車などを指します。このほか、臓器や輸血用血液製剤の運搬車両、自衛隊車両、ガス・電気の応急作業車両、JAFのレッカー車なども含まれます。
ただ、一般車両でも公道を走る際に赤色灯にカバーを掛けるなどの措置を取れば、赤色灯を搭載しても問題はありません。
映画やドラマに使われるパトカーも、撮影現場までは赤色灯にカバーを掛けて走行します。走行するための赤色灯は搭載できないということです。もちろん、赤色灯を点灯し、サイレンを吹鳴させて緊急走行まがいの行為をするのは違法です。
そして、パトカー風のカスタムで禁止されているのは赤色灯だけではありません。
例えばボディの側面に「◯◯県警」や「POLICE」など、警察組織を示すロゴを入れることも禁止されています。これは、刑法第166条第2項の偽造公記号使用罪や各都道府県の道路交通規則に抵触する違反です。
一方、クルマをパトカーのように白と黒にペイントすることは違法ではありません。例えば、警備会社や防犯パトロールカーなどにも用いられているほか、パターンは異なれど、乗用車などでも時折見られます。
このように、公道を走行するぶんにはいくつかの決まりを守れば問題はなく、警察無線風のアンテナや警察車両と同型のモデルに乗るといったことは可能ということになります。
ではこれとは逆に、パトカー風のカスタムをしたクルマは公道を走らなければ法に触れないのでしょうか。
郊外など速度の出やすい道路で見かけるような、防犯対策のパトカー風車両を私有地内に置くことは問題ありません。
ただし、公道と同様にボディに警察組織のロゴを入れることや、警察のシンボルである「旭日章」を取り付けることは禁止されています。
※ ※ ※
クルマの楽しみ方は人それぞれであり、パトカーマニアによる警察車両風のカスタムもそのひとつです。
しかし、クルマのカスタムであっても、周辺の人を混乱させるような行為は避けるべきでしょう。パトカーに酷似させると「称号詐称・標章等窃用の罪」に問われる可能性があります。
また、もしパトカー風のカスタムをする場合、緊急車両であることをもう一度認識する必要があります。事故や事件が発生した際、カスタムカーと緊急車両を混同させることがあってはいけません。
混乱を招くと警察を騙った事件の原因になりかねないからです。過去には、白バイ隊員を装った人物が現金を強奪した三億円事件も発生しています。
カスタムを楽しむ前にはルールをよく調べ、周囲の人への安全や配慮を忘れないようにならないように心掛けましょう。