かつてスズキが公開していた、「隼プロトタイプ」というスポーツカーのコンセプトモデル。同車は一体どのようなクルマだったのでしょうか。
■スズキが公開した「FRスポーツカー」が凄い!
スズキは2002年の東京オートサロンで、「隼プロトタイプ」という魅力的なスポーツカーのコンセプトモデルを初めて公開しました。
このモデルは、当時スズキのモータースポーツ部門だった「スズキスポーツ(現:モンスタースポーツ)」が開発し、ベースには「フォーミュラ・スズキ隼」というレーシングカーが使用されています。
フォーミュラ・スズキ隼とは、2002年から市販され、「全日本ジムカーナ選手権」で活躍したレース専用のモデル。
また、参加者全員がこのフォーミュラ・スズキ隼に搭乗する「スズキスポーツカップ・ワンメイクレースシリーズ」も2006年まで開催され、これを見た人や参加者などから「このクルマが公道を走りたい」という要望が上がります。
そしてこの声の高まりを受けて、公道走行用モデルとしての隼プロトタイプの開発がスタート。
開発はスズキスポーツが担当し、優れた走行性能やデザインを活かしつつ、公道を走れる内容に仕上げています。
最大の特徴は、スズキ最速のバイクとして名高い「GSX-R1300隼」のエンジンを搭載していることにくわえて、車重が550kgと非常に軽量であることです。
この極端な軽量化は、先述したバイク用エンジンの性能を最大限に引き出すために行われ、同時にハンドリング性能も高めることに成功しました。
車体はフルオリジナル設計ですが、要所要所にスズキの純正部品を用いることでコストを抑え、かつオリジナリティを追求しています。
ボディサイズは全長3790mm、全幅1760mm、全高1100mmで、ホイールベースが2200mmです。
空力特性を考慮したスタイリングは個性的のひと言で、特徴的なガルウィングドアや黄色のボディ、カーボンファイバーを使用した外装も注目を集めました。
インテリアはシンプルかつレーシーな雰囲気を持ち、GSX-R1300隼用の1.3リッターエンジンを、フォーミュラ・スズキ隼とは異なりフロントに搭載。
このエンジンは最大出力175馬力・最大トルク138Nmを発揮し、後輪を駆動します。
安全装備は搭載されていませんが、フレームの衝突性能を高めるため、スズキ本社の協力でシミュレーションと解析を行いました。
このように、隼プロトタイプは大幅な軽量化を実現し、ユーザーの期待に応える形で開発されましたが、残念ながら市販化は実施されず、今後の発売もほぼ無いと考えられます。
しかし、このような過激なスポーツモデルが、公道を走る一歩手前まで開発が進められたことは、多くのスポーツカーファンにワクワク感を与えました。
そのため、再びスズキの技術を示すモデルとして、隼プロトタイプのような夢のあるクルマの登場を期待する声は、今でも少なくないのです。