オートライトの義務化など法規制の変更や技術の進化により、ヘッドライトの使い方やマナーがこれまでとは少し変わってきています。一体どのように変化したのでしょうか。
■対向車のライトが眩しいのは光量アップだけが理由じゃない!?
夜間にクルマを運転していると、対向車のヘッドライトが眩しいと感じることがあります。
LEDなどの普及にともない、ヘッドライト自体が明るくなったこともありますが、法規制の変更や技術の進化により、ヘッドライトの使い方が以前とは変わってきているというのも理由のひとつとされています。
2018年に、車検時のヘッドライトの検査方法がハイビームからロービームでの測定に変更され、2024年8月には「ロービーム計測が困難なクルマではハイビームで測定」という特例が廃止されました。
一見、夜間走行ではロービームが基本になったと受け取れる法改正ですが、実際には逆にハイビームを点灯して走るクルマが増えている印象を受けます。
これについて首都圏の教習所で指導員だったI氏は、次のように説明します。
「2017年の改正道路交通法の施行にあわせ国家公安委員会が告示する『交通の方法に関する教則』も改正されました。
これまでにはなかった『交通量の多い市街地などを通行しているときを除き、上向き(ハイビーム)』という文言が加えられたのです」
道交法には夜間走行時は前照灯をつけなければいけないとありますが、ハイビーム(走行用前照灯)もロービーム(すれ違い用前照灯)も「前照灯」という言葉が含まれるため法解釈的に少々曖昧さが残ります。
ですが、教則の改正により国が「ハイビームでの走行が基本」という“お墨付き”を与え、これにともない教習所の指導でもハイビームの使用を原則とするようになったそうです。
こうした経緯から、対向車のヘッドライトを眩しく感じるのは、ハイビーム走行のクルマが増加し、すれ違う際にロービームに切り替え忘れたというケースが増えたからではないかと推察されています。
夜間はずっとハイビームで走行して良いわけではなく、交通量の多い市街地を通行するときや対向車や前走車がいるときは、減光するか下向き(ロービーム)に切り替えなければいけません。
これはマナーではなく法で定められていることであり、遵守しなければ「減光等義務違反」などの交通違反の対象になり、悪質な場合は妨害運転(あおり運転)として罰せられる可能性があります。
あるいは、「オートハイビーム機能」や「アダプティブヘッドライト」搭載車で、速度超過や天候など何かしらの理由で対向車の検知が遅れ、照射範囲の切り替えのタイミングがズレてしまったことも考えられます。
■信号待ちでヘッドライトを消灯しない意外な理由
夜間に他車のヘッドライトが眩しいのは、走行中に限った話ではありません。交差点で信号待ちをしているときも、対向車や後続車の放つ光に眩惑されることも増えています。
これまで信号待ちの際は周囲のクルマに配慮しヘッドライトを消灯するのがマナーとされていましたが、近年は少々様子が違うようです。
そうした変化について前出のI氏(教習所の元指導員)は以下のように話します。
「信号待ちで消灯して車幅灯(スモール)だけにしてしまうと、他車や歩行者に見落とされてしまう危険性があります。
また、青信号になり再発進する際に点灯を忘れてしまう可能性も否定できません。そうした不安要素を少しでも減らすために『ヘッドライトはつけたまま』を基本としています」
安全への意識が高まっているなか、信号待ちでヘッドライトを点灯したままのクルマが増えているのは当然の流れといえそうです。
一方で法的な見解では、道路交通法の第52条では「夜間、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯(ヘッドライト)、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない(一部抜粋)」と定められ、ヘッドライトの点灯は必須であるとされています。
しかし、道交法施行令では「夜間、道路の幅員が五・五メートル以上の道路に停車し、又は駐車しているときは、車両の保安基準に関する規定により設けられる非常点滅表示灯(ハザード)又は尾灯(テールランプ)をつけなければならない(一部抜粋)」と、ヘッドライトについては言及されていません。
解釈次第でどちらとも受け取れるため「信号待ちで消灯している=交通違反」とは言い切れないのですが、万が一にも違反とならないように消灯しないというドライバーも多いようです。
また、オートライト機能の普及によりヘッドライトのオン・オフにあまり気をかけないドライバーが増え、信号待ちでも“つけっぱなし”のクルマが増加。
こうした積み重ねで、ヘッドライトを消灯しない派が現在は多数派になっているのでしょう。
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明るさの感じ方には個人差があり、ハイビームとロービームを切り替えるタイミングや点灯・消灯の選択など、トラブルに発展する危険性もあり難しいものです。
法令も機能もそしてマナーも「より安全に」という指標で変化しているといえそうです。