2024年10月31日に「交通事故ゼロ社会実現に向けた」共同の記者会見をNTTとトヨタは行いました。これまでも様々な取り組みを行ってきた2社ですが、今回はどのような協業内容が明かされたのでしょうか。
■NTTとトヨタが「交通事故ゼロ社会実現」に向けた協業を更に深化
NTTとトヨタは、2024年10月31日に「交通事故ゼロ社会実現に向けた」共同の記者会見を行いました。
どのような内容だったのでしょうか。
昨今、自動車メーカーは様々なジャンルの企業と協業を行い、これまでの「クルマ屋」から「モビリティカンパニー」へと変革する動きを見せてきました。
そうしたなかでNTTとトヨタは、2017年3月27日にまずは「コネクテッドカー」の分野で協業を発表。
この際、協業の狙いについては「持続可能なスマートモビリティ社会実現を目指し、事故や渋滞 などの 社会課題の解決、新たなモビリティサービスの提供に必要となるコネクティッドカー技術の研究開発に取り組む」としていました。
具体的な内容としては、まずNTTグループ各社が保有するICT技術とトヨタが持つクルマの技術を組み合わせることでコネクティッドカーの分野で技術開発や検証を行うというもの。
さらには、多くのクルマから送られてくる大量のデータ格納や分析を行う仕組み、クルマのデータを収集などのネットワークの構築を推進するとしていました。
実際に2018年から実証実験を3年間行い、コネクティッドカー向けの基盤システムを進化させ、技術的に難易度の高いユースケースの検証などを実施しています。
その後、2020年3月24日には「次世代都市の基盤づくりを目指し業務資本提携」を発表しました。
これは、人々のライフスタイルやビジネス、さらにはインフラ(公共サービス)など街の様々な領域で価値提供を行うスマートシティプラットフォームを共同で構築するという内容です。
このスマートシティプラットフォームは、スマートシティ内のデータの管理・流通に加え、デジタルツインやその周辺のネットワーク機能により構成されるもので、進化し続ける基盤となります。
この業務資本提携の狙いとしては、「スマートシティ実現のコア基盤となる『スマートシティプラットフォーム』を共同で構築 ・運営し 、 国内外の街に展開していくことで、都市の課題解決や価値向上の効果を最大化し、地域力・国家力の向上につなげる」としていました。
なお発表時には、NTTとトヨタが約2000億円ずつ出資し、第三者割当による自己株式の処分により 、相互の普通株式を取得しています。
またこの発表時にNTTの澤田社長(当時)は「クルマがスマートシティの要素として入り、それらを繋ぐのがNTTの提供するICTやソフトウェアです。NTTが取り組む 様々なスマートシティ 事業 の『コアとなる新結合』それが今回の提携だと考えています」とコメント。
対してトヨタの豊田社長(当時)は「街という社会システムと結びついたクルマの未来をつくっていくもので、ソフトウェアファーストの考え方でクルマをつくる会社からモビリティカンパニーにフルモデルチェンジする」と話していました。
NTTとトヨタは、日本発信のこの取り組みを人中心、そしてグローバルで展開していき、2社以外の仲間づくりを進めてきたのです。
こうした2社の取り組みですが、今回新たに「交通事故ゼロ社会」の実現に向けた、協業を更に深化させる内容が発表されました。
同記者会見には、NTTの島田社長とトヨタの佐藤社長などが登壇。協業案件についてのプレゼンなどが行われました。
その内容は、交通事故ゼロ社会の実現に向けて、モビリティ分野におけるAI・通の共同取り組みに合意するというもの。まずトヨタの佐藤社長は次のように述べています。
「この度、NTTとトヨタは交通事故ゼロ社会の実現を目指して、モビリティ分野における AI 通信の基盤を構築していくことに合意をいたしました。
私からは今回の新たな協業に至った背景をお話しさせていただきます。NTTとトヨタの原点は『人々の暮らしをもっと豊かにしたい』という志です。この思いのもと、両者は長年安全安心で便利な社会づくりのお役に立つために移動価値を高める製品やサービスをお届けしてまいりました。
コネクテッド技術の進展によってクルマが社会とつながっていく時代に入りますと、クルマと情報通信が一体となって、社会基盤をつくる重要性が高まってまいりました。
そのような中、両者の具体的な協業がスタートいたしました。2020 年からはクルマから街へスコープを広げて、『スマートシティの基盤づくり』をテーマにモビリティ社会という大きな視点で協業関係を深めてまいりました。
そして今回次のステップとして両者でモビリティ社会を支えるAI通信基盤を構築し、クルマの未来を変える取り組みを加速してまいりたいと思います」
対してNTTの島田社長は次のように述べています。
「暮らしを豊かにする社会基盤を作るということは、以前からの両者の協業ビジョンで、さらなる進化を図りたいというふうに考えているところです。
今回、そのビジョンを具現化するステップをトヨタとともに踏み出します。トヨタ佐藤社長は、主にビジョンやコンセプトを中心にお話しされましたが、私はそれを実現する技術を中心にご説明させていただきます。
我々もAIと通信でクルマの未来を変えていきたいと考えています。より賢くより安全にクルマ、ドライバー、道路などのインフラ情報を切れ目のない通信で絶えず収集し、そのデータを学習したAIによりクルマをより賢く、より安全なものにしていきたいと思っています。
モビリティを支える AI通信基盤をよりサステナブルに。地産地消の再生エネルギーを活用した分散型データセンターや、低消費電力のネットワークとAI基盤でサステナブルな社会を実現していきます」
交通事故ゼロ社会の実現には、クルマ側でのデータドリブンによる運転支援技術の高度化や将来的な自動運転技術の開発に加え、ヒト・モビリティ・インフラが「三位一体」で絶えず繋がるインフラ協調の取り組みが必要だと言います。
これを実現するために、まずトヨタは安全安心を第一優先とした「SDV(Software Defined Vehicle)」の開発を進めています。
SDVの進化と並行して、高速・高品質な通基盤と、膨大な情報を収集し賢く処理するAI基盤や計算基盤といったインフラの構築がより重要です。
そうしたなかで今回、通信に強みを持つNTTとトヨタは、切れ目のない通信基盤と、大量のデータを賢く処理するAI基盤や計算基盤を組み合わせた「モビリティ AI基盤」を共同で構築。これにより、ヒト・モビリティ・インフラを繋げ、交通事故の無い安全安心でサステナブルなモビリティ社会の実現を目指していくとしています。
具体的な共同の取り組み内容としては、「モビリティAI盤」を共同で開発/運用し、交通事故ゼロ社会の実現に向けた取り組みに活用。そしてモビリティAI基盤は以下の複数要素により構成されています。
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1.分散型計算基盤(データセンター)
AIで膨大なデータを分析/処理するための計算資源(データセンター)を、IOWNの光通言技術を活用し、分散した場所に設置。再生可能エネルギーが豊富な地域に立地させることで電力の地産地消の実現と、分散した計算資源やAIの連携・処理における高い電力効率を実現することで、データ分析/処理に必要となる膨大な電力のグリーン化を推進。
2.インテリジェント通信基盤
市街地や地方・郊外などの様々な交通環境・状況に適した切れ目ない通信により、ヒト・モビリティ・インフラを協調させる仕組みを構築。言頼性が高いことに加え、大容量のデータに対する低遅延な通信を実現。
3.AI基盤
「分散型計算基盤(データセンター)」と「インテリジェント通信基盤」を土台にして、ヒト・モビリティ・インフラからの多様なデータを学習・推論するモビリティAIを実現。
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このモビリティAI基盤はモビリティ分野での標準化を目指しているといい、今回の2社だけでなく将来的には交通事故ゼロ社会の実現に共感した産官学のパートナーに広く活用いただくことを想定しているようです。
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なお今回の取り組みに関して、2030年までに5000億円規模の投資を見込んでいるといい、2025年以降モビリティAI基盤の開発をスタート。
そして2028年頃から様々なパートナーと三位一体でのインフラ協調による社会実装を開始し、2030年以降の普及拡大を目指していくとしています。