主にスポーティなクルマのリア後端(トランクリッド上部など)に、「羽」のような板状のパーツが取り付けられているのを見たことがある人も多いでしょう。これは「リアスポイラー」や「リアウイング」と呼ばれるエアロパーツですが、実際に効果はあるのでしょうか、検証してみました。
■クルマについてる謎の羽、意味ある?
主にスポーティなクルマのリア後端(トランクリッド上部など)に、「羽」のような板状のパーツが取り付けられているのを見たことがある人も多いでしょう。
これは「リアスポイラー」や「リアウイング」と呼ばれるエアロパーツで、ダウンフォースなど“空力的効果”が期待できるパーツ。ですが、空力というのは目に見えないものでもあるので、その装着に対し「意味あるの?」「日常領域では特に意味ない」などといった意見も多く見られます。
今回はそんなリアウイングについて検証する機会を、ホンダの純正アクセサリーなどを手掛ける「ホンダアクセス」が用意してくれたので、レポートします。
クルマは走行すると風を前から受け「空気抵抗」を生みますが、この空気抵抗をスムーズに車体後方へ流すことで、操縦安定性や最高速度、燃費の向上などに寄与します。
このため各メーカーは、ボディ形状を工夫し流線型にしたり、ボディ各所に空気の流れを整えるパーツを装着したりします。
前方からの風は、前へと進むのに対して空気抵抗となるだけでなく、車体を浮き上がらせる揚力にもなります。
リアスポイラー及びリアウイングは、これを整え、車体を地面に押し付ける『ダウンフォース』という力を発生させ、車体の浮き上がりを減らすことを防止するとともに、安定性を高め、タイヤからの駆動力を路面に伝わりやすくする効果を担います。
そんなリアウイングはスポーティなクルマに採用されることが多く、サーキットのような高速域でならまだしも、実際の“生活領域”ではあまり意味がないのではないかという声も聞かれます。
リアウイングやリアスポイラーは、仮に搭載されていたとしても元からついていたり、オプションで選択したりと、納車されるときには最初からついている状態となっていることが殆どで、“ある状態”と“ない状態”を比較する機会はほとんどありません。
なので、このパーツがついているという人でさえ、実際の効果というものが、分かりづらいという人も少なくないはずです。
筆者(編集員B)もそんなユーザーの1人ですが、この“リアウイングの効果”を今回、“実効空力(じっこうくうりき)”にフォーカスし続けてきた、ホンダアクセスのModulo(モデューロ)エアロパーツとともに体験する機会を得ました。
Moduloが提唱する実効空力とは、「日常領域でも体感できる空力効果」のことです。
Moduloパーツを開発するホンダアクセスはこれをエアロダイナミクス開発のキーワードとしているといいます。
リアだけでなく、前後のリフトバランスを整えることで、4つのタイヤとサスペンションのパフォーマンスを最大限引き出すことが目的とのことですが、この実行空力を提唱し始めたのは、2008年に登場した「シビックタイプR」用のエアロパーツからで、現在までその開発を継続してきたといいます。
まず体験したのは、2022年に登場した「ヴェゼルModuloXコンセプト」で初めて採用されたシェブロン(鋸刃形状)の効果。
現在では現行型のシビックタイプRのテールゲートスポイラーに用いられているほか、2024年11月発売予定とするシビック用のテールゲートスポイラー(ウイングタイプ)にも採用されています。
今回は、このシェブロン形状を簡易的にマグネットで再現したものを、2代目「N-BOX」のリアのルーフ後端に装着し、ないときとあるときで同じテストコースを走行し、実際にどのような変化があるのか試して見ました。
マグネットで再現されたシェブロンは本当に簡易的なもので、見たときは正直「本当にこんなので変わるのだろうか…」と疑問に思えるものでした。
しかし、比べてみるとその差は歴然。5〜60km/hの速度域で試しましたが、ないときでは、やはり背が高い軽スーパーハイトワゴンは不安定になりやすく、コーナーからの脱出時などに、アクセル開度を挙げていくのに躊躇が生まれますが、つけたときではピタッと安定しているので、気持ちよく踏んでいけます。
まるでサスペンションを変えたような、上質な走りに変身を遂げていましたが、これはシェブロン形状によって空気の流れを整流し、ヨーを低減しているためだといいます。
次に体験したのは、シビックの従来モデルのテールゲートスポイラーと、2024年11月に発売予定している新たなテールゲートスポイラー(ウイングタイプ)を同じクルマ(シビック RS)で付け替えて体験するというもの。
前述の通り、新たなテールゲートスポイラーには、N-BOXで体験したシェブロン形状が翼面裏側に掘られています。
今回のテストコースは、群馬サイクルスポーツセンター。多数のタイトなコーナーが続くほか、路面には落ち葉が堆積する不安定になりやすい難コースです。
従来モデルのテールゲートスポイラーをつけた状態で走行してみると、これでも十分安定した走りを見せますが、やや不安な場面もあります。
一方新たなテールゲートスポイラー(ウイングタイプ)を装着して走ると、路面が変わったかのような安定性を見せます。
ウイングを変えただけとは思えない…FFながら4WDのような安定性を感じます。
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クルマにあまり詳しくない人にとっては、リアウイングはクルマについている“謎の羽”というレベルの存在かもしれません。
筆者(編集部員B)も日常領域で大きな効果が期待できるものとは思っていませんでしたが、5〜80km/hの速度域でも、安定性を高め、走って楽しいという感覚だけでなく、安全性も高めてくれる装備のひとつなのだと認識できました。
なかなか試せるものではありませんが、脱着可能なリアウィングが装備されているオーナーの方々は、一度リアウィングありの状態となしの状態の比較検証してみるのも面白いかもしれません。