目を疑いたくなるような、クルマを左右に押しつぶした格好の超ナローボディ「GRスープラ」が販売され、かつて話題を集めていました。どのようなクルマなのでしょうか。
■謎の「目がバグる」GRスープラの正体とは
毎年「今年も残り少なくなった」と思い始める頃、クルマ業界では秋の米国「SEMAショー」、年明けの「東京オートサロン」の開催が近づき、カスタムカーがネットで話題になります。
そんなカスタムカーの世界で2023年3月、「目がバグる」とSNSなどで大注目を集めた「GR スープラ Jr. ロードスター」を改めてご紹介します。
米国トヨタのレース専門部門「トヨタレーシング」公式SNSで「NHRA Jr.ドラッグスターリーグにスープラのかっこいいレースカーを追加!」というコメントとともに、目を疑うスタイルをした小さなGRスープラのドラッグレースカーの画像が投稿されました。
NHRAとは「ナショナル・ホット・ロッド・アソシエーション」の略で、ドラッグレースの団体を指します。
ドラッグレースとは、短い直線コースを停止状態からロケットスタートしてタイムを競うアメリカが発祥の競技のことです。
コースの距離に定めがありませんが、4分の1マイル(約402m)で行われることが多く、レーシングカーや市販スポーツカーの加速性能を表す「0-400m加速」タイムの元にもなっています。日本では「ゼロヨン」と呼ばれています。
ドラッグレースに使用される車種は多岐に渡り、バイク、トレーラー、スノーモービルといった特殊車両もレースカテゴリーに含まれています。
また、レースに参加できる年齢も多岐に渡り、最年少のカテゴリーでは「ジュニアドラッグスター」と呼ばれる6歳から20歳まで(8歳から17歳という情報もあり)の年齢が参加資格となるものがあります。
話題をかっさらった「GRスープラ Jr. ロードスター」は、その名のとおりジュニアドラッグスターカテゴリーの車両になります。
ジュニアドラッグスターで使用される車両も”ジュニア”サイズとなっています。また、このカテゴリーはいくつかのクラスに分かれており、話題となったGRスープラは「ファニーカークラス」に属しています。
■超幅狭GRスープラは「通販サイト」で購入できた!?
ファニーカーとは、ベースとなるレーシングカーに市販車を模したカウルを被せたもので、多くのドラッグレースマシンに共通する前輪より大きな後輪を持ち、エンジンはフロントにマウントされています。
「トヨタレーシング」では、かつては「セリカ」や「カムリ ソラーラ(カムリの2ドアクーペモデル)」を採用し、2012年からは「カムリ」、2021年からは「GRスープラ」をベースにドラッグレースに参戦。
2023年3月に話題となったのは、そのGRスープラのジュニアドラッグスタークラスのファニーカーでした。
同車は小さなボディとなるため、左右にギュッと押しつぶされたような格好となり「目がバグる」と言わしめる独特なスタイルになりました。
ベースとなるGRスープラの縦・横の比率そのままに縮小すれば、違和感はさほど感じないでしょうが、ドラッグレース車両固有の大きなリアタイヤをはじめとする構造を考慮すると、おのずと左右に潰れたような超ナローボディにしかならないのでしょう。
最年少クラスのファニーカーと言えども、仕様は1人乗りの本格レーシングマシンです。
開発を担当したTRDのエンジニアは、ジュニアドラッグスターの担当者と緊密な協力関係をもって開発され、GRスープラ Jr.ロードスターを誕生させています。
このマシンは、米国のドラッグレースマシンやパーツを販売する通販サイト「HalfScale.com 」という通販サイトで、1万3995ドル(当時の為替レートで約182万円)で販売されていました(現在は販売中止の様子)。
興味深いのは、GRスープラ Jr. ロードスターが、トヨタのフルサイズ・ピックアップトラック「タンドラ」の荷台に収まることでした。
トヨタのトップフューエルクラスのドライバーは「開発に携わってきた私たち全員にとっての第一の目的は、ジュニアドラッグスターのドライバーの親が、トレーラーなどのマシンを移送するための費用をかけず、レース会場にマシンを持ち込むことができるようにすることだった」と語っていました。
親子でドラッグレースに参加するケースも珍しくないドラッグレース。なんともアメリカンで心温まるエピソードもありました。