マツダがかつて生産していた3列シートミニバン「ビアンテ」「プレマシー」の生産終了から8年が経過しました。ふたたび新型ミニバンが復活することはあるのでしょうか。その可能性を探ります。
■マツダのミニバンは2018年までに消滅…復活はあるのか!?
マツダ「ビアンテ」は、2008年から2018年のあいだ販売していた8人乗りの3列シートミニバンでした。
生産終了から8年が過ぎましたが、マツダからビアンテのようなスライドドアミニバンが復活する日はやってくるのでしょうか。
ビアンテがデビューした2000年代は、セダンの人気が低迷しSUVがシェアを伸ばしていくいっぽうで、トヨタ「ノア」「ヴォクシー」、日産「セレナ」、ホンダ「ステップワゴン」といった5ナンバーサイズのミドルクラスミニバンがファミリー層を中心に高い人気を獲得していきました。
当時のマツダは「プレマシー」という7人乗り3列シート車を販売していましたが、1600mm台の低い車高で、ノア・ヴォクシー・セレナ・ステップワゴンらと肩を並べる人気モデルとは言い難い存在でした。
マツダは背高なミニバン人気の波に乗るべく、3ナンバーサイズのプレマシーをベースにミニバンを開発。先行するライバル車が5ナンバーサイズに対して、全幅1770mmの3ナンバーサイズでビアンテをデビューさせました。
ビアンテは「最広(サイコー)空間」をキャッチフレーズに、ライバル車よりも広い室内空間を売りにしましたが、ひしめくミニバンライバル車の戦いの土俵に乗れるほどのセールス、人気を獲得できずにいました。
その背景には、ライバル車に比べてボディサイズが大きく、かと言って1つ上のクラスと比較するとメリットが薄い中途半端なモデルの立ち位置がありました。
当時のマツダには、プラス30万円ほどで手に入る「MPV」というミニバンがありました。
ボディサイズが大きい割には割安だったこともあって、人気を食い合っていたのです。
マーケティング的には中途半端な立ち位置になったいっぽうで、それをちょうどいいサイズとするユーザー層は存在し、ライバル車のミニバンとは異なる個性を持ったデザインを好感するユーザーも少なからず存在しました。
ビアンテはその後2012年にスタイリングを進化させた新仕様「グランツ」を追加したほか、2013年にマイナーチェンジを実施し新エンジンを搭載するなど、改良を重ねています。
そんななかマツダは2016年、ミニバン市場から撤退しSUVに集中投資していく戦略を発表しました。
そして2016年から2018年までの間に、ミニバンラインナップのMPV、ビアンテ、プレマシーが順次生産を終了。これを補うべく、入れ替わりに3列シート7/6人乗りのSUV「CX-8」が2017年にデビューします。
室内空間の広さやスライドドアの利便性を失ったSUVでは、ミニバンユーザーの乗りかえが進むとは言い難く、マツダがラインナップからミニバンを落としたのは戦略的に成功かどうかを疑問視する声もありました。
しかしミニバンの3列シート空間に比較すると劣るものの、CX-8は十分な広さと快適性を備え、さらにミニバンではなし得なかった走行性能も有したことで、好評を博します。
ビアンテの生産販売から8年が経過した今、マツダのその戦略が失敗に終わったと指摘する人はほとんどいないでしょう。
またマツダは、トヨタなどと比べれば規模が小さいこともあり、モデルラインナップを絞るこの戦略は今となっては正解だったと言えます。
■トヨタからのOEM供給はあり得るのか
とはいえ、今でも「マツダ ミニバン」などのキーワードでインターネット検索する人は少なくなく、ミニバンの復活に興味を抱いている人が一定数いる状況です。
いっぽうのマツダは、引き継き次世代商品群の新型SUV開発を経営戦略に組み込み、続々とグローバルでリリースしていており、中期計画のなかに“ミニバン”の4文字はどこにも出てきていません。
またマツダから新型ミニバンの開発をしているという噂も一切聞こえてきません。
マツダのミニバン復活を心待ちにしている方には残念ですが、その願いは絶望的かもしれません。
が、1つだけ望みがあります。
それは、トヨタ「ノア」のOEM供給をマツダが受けて販売するというものです。
実際SNSでも「ノアのOEMでもいいから、すぐに欲しい」という声があります。
マツダはかつて、商用1BOXバン「ボンゴ ブローニイ」を自社開発していましたが、今ではトヨタ「ハイエース」のOEM供給を受け、「ボンゴブローニイバン」の車名で販売されています。
この流れの背景には、マツダとトヨタの提携関係があります。
ということは、ノアやヴォクシーにマツダのエンブレムを付けて販売される可能性も、なしとはいえない訳です。
ちなみにマツダ軽自動車のOEM供給元であるスズキでは、トヨタからノアのOEMを受けたミニバン「ランディ」が販売されています。
マツダからも同様にノアOEM車の“新型”ビアンテが復活しても、なんの不思議もありません。
ただ、いまやすっかりSUV主流メーカーとなった現在のマツダユーザーから、そのようなモデルが歓迎されるのかどうかは、また別の話といえそうです。