かつてホンダは3列シートを搭載する巨大な「7人乗りSUV」を日本市場で販売していました。一体どのようなクルマなのでしょうか。
■全幅2mの巨大な「ホンダSUV」
「海外では人気なのに、日本で発売するとあまり良い評価が得られなかった…」というクルマは数多くあります。
その代表的なモデルと言えるのが、ホンダが2003年に発売した「MDX」です。
MDXとは、ホンダが海外で展開している高級車ブランド「アキュラ」で販売されている大型SUVです。
初代モデルは2001年に登場し、北米仕様の「オデッセイ」(2代目モデル)をベースとしていますが、SUVとしてボディ剛性を高めるために4リングシェル構造を採用するなど、オデッセイとは全くの別物といえるほど大幅に手が加えられています。
また、SUVでありながら3列シートの7人乗りという点も大きな特徴。
MDXのように「モノコックボディを採用する“3列シート7人乗り”のSUV」というモデルは当時極めて珍しく、この特徴からもMDXは発売直後から大きな注目を集めました。
駆動方式は全車4WD。初期モデルのパワーユニットには、最高出力は260馬力を発揮する3.5リッターV型6気筒VTECエンジンを搭載しており、これに5速ATのトランスミッションを組み合わせます。
このように、SUVでありながら3列シートを採用し、さらに力強い走りも兼ね備えていたMDXは、自動車専門誌で表彰されるなど高い評価を受け、一躍高級SUVカテゴリにおける人気モデルとなりました。
その後、2006年には2代目が、2013年には3代目が登場し、3代目でハイブリッドモデルも追加されるなど、時代に合わせてバリエーションを拡大。
2022年には4代目がリリースされ、現在もアキュラブランドのフラッグシップSUVとして扱われています。
そんなMDXですが、初代MDXが北米市場で高い評価を得たことを受け、2003年に日本市場にも投入されました。
基本的には北米仕様のMDXと同じですが、日本市場向けにハンドルを左から右へと変更しているほか、サイドアンダーミラーの追加やシフトレバーをストレート式に変更するといった改良がくわえられています。
また当初は北米仕様における最上級グレードのみを導入し、その後ベースグレードの追加や、オートライトコントロールなどのオプション装備を標準化するなど、日本の自動車ユーザーに受け入れられるよう細かな処置も取られていました。
しかし、MDXの車内空間の広さや走りの良さは評価されたものの、やはり大きすぎるボディがネックになります。
じつはこの初代MDXの車体サイズは、全長4790mm×全幅1955mm×全高1820mm。
さすがに全幅が約2mという巨体は日本の道路事情には厳しかったようで、ホンダは1700台の販売を想定していたものの、1500台ほどしか売れず2006年に生産が終了。
わずか3年間で日本市場から撤退となってしまいました。
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このようにMDXは、日本では3年間しか新車販売されなかったマイナーSUVです。
その販売台数の少なさゆえに、中古市場に出る台数も少ないレアカーですので、「他の人が乗っていないような珍しいSUVが欲しい」という人には、垂涎の一台かもしれませんね。