石川県小松市には日本最大級の自動車博物館「日本自動車博物館」があります。国産の名モデルから現存台数僅少の極めてレアなモデルまで、非常に多彩な車種が収蔵されています。なかでもホンダ「コニリオ クーペ」は1台のみしか存在しないクルマなのです。
■真っ赤な「軽量ボディ」は軽量化の証!
石川県小松市の「日本自動車博物館」は、歴史的に名高い国産の名モデルからすでに存在しない海外メーカーの希少車まで収蔵されており、日本最大級の自動車博物館となっています。
なかでも、ホンダ「コニリオ クーペ」はほかの自動車博物館では見られない、きわめてレアなモデルです。
コニリオ(Coniglio)は、1960年代後半に登場したレーシングカー。乗車定員は2名となっています。
ボディサイズは全長3430mm×全幅1460mm×全高1200mm。現行車両と見比べると、ダイハツの軽2シーターオープンカー「コペン」が全長3395mm×全幅1475mm×全高1280mmとなっており、かなり近いサイズ感といえます。
このコニリオのベースになっているのは、ホンダがかつて生産していた小型スポーツカー「S800」です。ホンダ「Sシリーズ」として、「S500」「S600」から受け継ぐ2ドアオープンのライトウェイトスポーツで、国内GTレースなどで主に活躍していました。
しかし、S800は少々重かったため、レースで勝つためには軽量化が必要となります。そこでS800のシャシに軽量のFRP素材などを用いて参戦するチームもありました。
今回のコニリオ クーペはまさにその1台で、レーシング クォータリー(現:ノバ・エンジニアリング)が製作。これに「コニリオ」と名付けられ、販売されました。
外観は往年のレーシングカーらしいロングノーズ・ショートデッキのスタイル。フロントヘッドライトは風防に覆われ、空力性能の向上を目指しているほか、ライト間には異型のダクトを2つ設け、“鼻”のようになっています。
レーシングカーがベースですが、ボディサイドはシューティングブレーク形状となっており、ルーフやドアも装備。サイドウインドウはスライド式で使い勝手も良さそうです。
リアは台形のような形をしており、非常に近代的なリアウインドウと、S800風の小ぶりなテールランプが目をひきます。マフラーは左右2本出しです。
ちなみにこのデザインを手掛けたのは、FRP造形のパイオニアとなる工業デザイナーの濱 素紀氏。デザインに優れながらも優れた軽量化を図ることができ、その車両重量はわずか550kg前後を達成。
パワートレインは、最大70馬力・最大トルク約6.7kgf-mを出力する水冷直列4気筒DOHCエンジンと4速MTの組み合わせ。駆動方式はFRとなっています。
そんなコニリオですが、通常はオープンモデルのみで計10台製作。価格はボディのみで35万円となっていました。
しかし、わずか1台のみがクローズドボディ(クーペボディ)で製作され、その極めてレアな車両が日本自動車博物館に収蔵されているこの赤い個体となっています。
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FRPを手掛ける名デザイナーによる、わずか1台のみ現存のコニリオ クーペ。単にレアなだけでなく、レースで勝つために徹底した軽量化の追求や、当時はまだ画期的だったFRP素材の先行採用など、非常に興味深い個体です。
ほかの自動車博物館にはない貴重な車両ですので、博物館を訪れた際にはぜひ注目して欲しいと思います。