Infoseek 楽天

ホンダの「ド迫力“ウィング”」の効果がスゴイ!? 日常でも“効果アリ”な「実効空力」ってホント? 進化したエアロパーツを試してみた

くるまのニュース 2024年11月13日 22時10分

Modulo(モデューロ)が提唱する“実効空力”とは「日常領域でも体感できる空力効果」です。今回はそんな実効空力を体験する機会を得たので、筆者(岡本幸一郎)がレポートします。

■実効空力の効果を体感してみた!

 秋深まる中、群馬サイクルスポーツセンターで開催された試乗会で、ホンダアクセスが提唱する“実効空力”を体感してきました。
 
 ここでいう“実効空力”とは「日常領域でも体感できる空力効果」です。

 まず試乗したのは、周辺一般道でホンダ「シビックタイプR」(3代目・FD2型)に「モデューロ(Modulo)」ブランドのエアロパーツとスポーツサスペンションを装着した「Sports Modulo CIVIC TYPE R」。

 また、2024年9月に出たばかりの「シビックRS」に同じく出たばかりのテールゲートスポイラーを装着した車両です。

 ホンダアクセスが“実効空力”を初めてトライしたのが、2008年に発売されたFD2型シビック タイプR用のModuloエアロパーツでした。

 今回、Moduloが30周年を迎えるのに合わせて中古車を取得し、すでに生産の終了している当時のModuloカスタマイズパーツをレストアして装着したのです。

 もう1台、最新のシビックRSには、Moduloの30年の中で培ってきた、“実効空力”のノウハウをフィードバックし、土屋圭市氏とともに走り込んで開発した新しいウイングタイプのテールゲートスポイラーが装着されていました。

 というわけで「最初」の、そして「最新」の“実効空力”を味わうことができたわけです。なつかしいFD2型は、十数年たって走行距離が約25万kmに達した個体ながら、見た目も走りもキレイにリフレッシュされていました。

 2台に乗って印象的だったのは、ベース車が違うのでドライブフィールもそれなりに違いながらも、とても似ていることでした。それは動きが素直でどこにもカドがないところです。

 ステアリング操作に対して、微舵から応答遅れもなく、極めてスムーズにヨーモーメント(車体中心に生じる回転力)を発生させて、イメージしたラインをピタリとトレースしていける点で、16年という時間を超えて共通していました。

 FD2型タイプRといえば、とくに初期型は乗り心地が硬くガチガチだったのは有名な話です。ところがモデュ―ロのスポーツサスペンションは、ひきしまっていながらも絶妙に凹凸を吸収して衝撃がダイレクトに伝わってこないようにされていて、不快に感じられません。

 アシがいいおかげで、自然吸気の2リッターVTECならでは鋭い吹け上がりを、より深く堪能することもできました。

 お伝えしたとおり、装着していたパーツはすでに販売終了となっていますが、根強い人気を誇るFD2型を所有する多くのファンのために、再生産してくれるといいのでは、と思わずにいられませんでした。

 さらに、シビックRSでは純正アクセサリーの既存のテールゲートスポイラーと、前出の新しいウイングタイプのテールゲートスポイラーを、同じクルマで付け替えてコース内で乗り比べることもでき、“実効空力”による走りの違いを如実に体感することができました。

 新製品は、タイプR用が好評で標準のシビック用にもぜひ欲しいという声に応えるべく開発されたもので、既存品に対してシェブロン(ギザギザ)形状の“実効空力”デバイスを搭載しているのが特徴です。現物を見比べると形状とサイズがだいぶ違うことも印象的でした。

 コースには落ち葉がかなり舞っていたので、フルに全開で走るのではなく、無理せずちょっと抑えたぐらいのペースで走ってみたところ、違いは明白でした。既存品もまとまりがよく不満はないのですが、新製品ではさらに全体的に洗練されています。

 新製品は「軸」感を出すため翼断面の中央が厚く高くされているほか、翼端板を外側に伸ばし、Aピラーの角度にあわせることで、効果を最大化しています。

 これにより直進性が高まっているほか、外乱を受けても乱れにくく、安定した接地性が得られることが感じ取れました。さらに、直進から旋回に移行するときにまったくカドがなく、過渡領域の仕上がりがすばらしいのです。おかげでなんの不安もなく意のままに操ることができます。

 とくにリアのフラット感が増していることと、アクセルオフにしてトラクションがかかっていないときでもブレが小さく、スムーズに滑走するかのような走りになっていることも印象的でした。

 リアしかいじっていないのに、まるでフロントにも手を加えたかのような走りになっているのが不思議に感じられたのですが、開発担当者に聞いたところ、ダウンフォースよりもフロントから来た風をなめらかに流すことを意識して設計したとのこと。

 リアからの引っぱられ方によってフロントも影響するからで、それによりリフトバランスが変わり、荷重のバランスも変わるので、フロントの動きも変わるそうです。

 シビックの場合、ノーマルがフロント寄りのところをリアに乗せることで最適化を図っています。また、かつてはエアロキットをフルに装着することで効果が得られるようになっていましたが、最近では単体でも効果が得られるように設計しているとのことです。

 このように効果絶大でありながら、ABS素材で軽くて価格がリーズナブルなことにもあらためて感心しました。マイナーモデルチェンジ前のシビックにも装着できることも念を押しておきましょう。

■実効空力を“剛性”で体験?

 次に、ホンダアクセス試乗会恒例の、一風変わった実験試乗コンテンツを紹介しましょう。今回はちょっとしたことで変化するクルマの“バランス”を感じるのが目的です。

「実効空力“感”コアバリュー車」と呼んでいるという異様な出で立ちの車両は、テールゲートスポイラー(ウイングタイプ)の“実効空力”開発にあたって、ボディコントロール技術の研究のため、「フィット e:HEV Modulo X」をベースに週末に有志が集い半年ほどかけて製作したもの。

 実効空力のありたい姿と、ボディ剛性がクルマにもたらす影響を体感できるようになっています。

バンパーはないけどいたるところに補強が…「実効空力“感”コアバリュー車」

 お手本としたのは、今でも評価の高いメルセデス・ベンツ「Eクラス(W124型)」の、金庫のごとき走りです。

 このW124型でテストコースを走って計測したところ、けっして基本の剛性が極端に高いわけではなく、弓のようにしなってから次にコーナーに行くときにシュッと驚くほど素早く回復するので、安心して次のコーナーに入っていけることが判明。

 それを再現できるように取り組んでいるそうです。助手席にはW124型のシートをわざわざオークションで落として調達したという力の入れようです。

 走り方は60km/h+αを上限に、ぶっ飛ばすのではなく、あくまで「感じる」ことを目的に、まずベストな状態で乗って感覚を掴んでおき、そこからバーを外して走りがどのように変わるかを試しました。

 念のため、バーの有無で変化するのは剛性ですが、この車両を製作した狙いは、実効空力により変化する“感”を開発陣で共有するためです。

 最初のベストな状態では、たしかにW124型を彷彿とさせるソリッドな乗り味で、一体感があり、タイヤがしっかり路面を捉える感覚がありました。

 そこからまず、フロントの左右フレームの先端を連結するバーを外したところ、ステアリングを切ったときの応答遅れが生じ、接地感も薄れてソリッド感がなくなります。

 筆者の次に運転した編集部員も、「昔のクルマみたいになった」と上手いこと表現していました。

 このバーを外してもバンパービームがあるため、なくても大丈夫なのではと思うところですが、ところがどっこい、全然そうではありませんでした。

 これが重要な役目をはたしていて、ないとニュルブルクリンクを満足に走れないことから、ホンダでは「ニュルバー」と呼んでいるそうです。

 続いてフロントは戻して、フロントシート後方の上側と斜めに配された三角形のバーを外しました。すると操舵初期の応答遅れは解消したものの、前と後ろで位相ズレが生じ、動きにカドが出て、トータルとしては応答が遅れるようになってしまいました。

 同じコーナーを曲がったときの舵角が増えた気もしました。平らなところはまだしも、アンジュレーション(うねり)のある路面では顕著です。

 これは最初のベストな状態ではアタマから先に入力が伝わって、きれいに車体がしなっていたところ、途中でねじれて力を失い、後ろがついてこなくなって、4輪で曲がることができなくなり、予想以上に舵を切ってしまうことが要因として考えられるそうです。

 走りの一体感やコントロール性を高めるには、フロントとリアでそれぞれ剛性を上げても、途中がしっかりしていないとダメだということがよくわかりました。

 そんなわけで、今回も大いに楽しみながら学ぶことができました。毎度そうなのですが、とにかく“実効空力”は、たったこれだけでこんなに変わるのかということにあらためて目からウロコが落ちる思いです。

 ホンダアクセスの味わい深い走りは、こうした他ではやらないようなことに取り組んでいるからこそ生まれてくることもよくわかりました。

この記事の関連ニュース