エンジンを持たず、電車のように「架線から電気を取り入れて走る」という構造を持つ「トロリーバス」が、いよいよ今月11月末をもって廃止されます。
■日本最後のトロリーバス
道路上を走る路線バスでありながら、エンジンを持たず、電車のように「架線から電気を取り入れて走る」という構造を持つ「トロリーバス」。
かつて日本各地で見られましたが、今や黒部ダムの近くに1路線があるのみです。
その「日本最後のトロリーバス」が、いよいよ11月末をもって廃止されることとなります。
現存する最後のトロリーバスとなっているのは、富山県と長野県の北アルプスをつらぬく観光交通ルート「立山黒部アルペンルート」にあります。
路線通称は「立山トンネルトロリーバス」。立山駅から美女平、室堂とバスで登って来たあと、いよいよ3000m級の立山連峰を長いトンネルで抜けていくことになります。そこにあるのがこのトロリーバスです。
立山トロリーバスは1996年に運行開始。バス車両の上には、電車の「パンタグラフ」とも違う、独特の長腕のポールが架線へ伸びています。発車すると、まるで往年の通勤電車のような、シンセサイザーがうなるようなモーター音を楽しむことができます。
トロリーバスでトンネルを抜けたあとは、ロープウェイで谷を越えて黒部平に達し、地下ケーブルカーで黒部ダムへ到達します。
なお、黒部ダムから長野県側の扇沢へ抜ける地下トンネルバスも、かつてはトロリーバスでした。こちらは2019年に廃止され、架線を必要としない「EVバス」に置き換わっています。
そして、残された立山のトロリーバスも、2024年11月30日をもって廃止。EVバスに切り替わることとなります。
廃止の理由は、トロリーバスの施設の老朽化。今やほかに採用事例もなく、部品を調達しようとすると特注品で対応するしかないため、全国に普及しているEVバスへ切り替えることが決定されたのです。
もともと、北アルプスの環境を守るために、排気ガスを出さないバスとしてトロリーバスが採用されました。しかし時代が追いつき、EVで排気ガスゼロを達成するのが当たり前になっていきました。架線で電気を取り入れるシステムはもはや過去の遺物となっていたのです。
ネット上でも「本当に残念ですね」「行きたい行きたいと思いつつ機会が合わずトロリーバス乗れずじまいだったなぁ」「さびしすぎる」と惜しむ声が見られます。
また「昔は大阪にもあって、よく乗った」「横浜にも走ってたな。 三ツ沢行くやつと洪福寺行くやつだった」「昔々乗ったことあります。上野公園が終点で、浅草のあたりから乗ったなあ」など、幼少時の思い出を語る人もいました。
惜しむファンの声も多い中、トロリーバスを運営する立山黒部貫光は11月14日、「ありがとう!日本最後の『立山トンネルトロリーバス』」という発表をおこないました。
「1996年の運行開始からの累計乗車人数は約1990万人にのぼります」と紹介したうえで、廃止までの「最終便」への乗車募集は、定員200名に5倍近い数の応募があったといいます。
25日から廃止前日までは「トロバスラストウィーク・メモリアル撮影会」が行われ、SNS上でも「ありがとうトロバス」というタグで、運転士や駅員からのコメントも投稿されています。