ガソリンスタンドでは、どこの地域でもほとんどの店舗で平らな屋根が用いられているのは、一体なぜでしょうか。
■実は合理的な「平らな屋根」の特徴とは?
クルマを給油する際に立ち寄るガソリンスタンドでは、どこの地域でもほとんどの店舗で平らな屋根が用いられています。
実はこの屋根には、安全性や機能性を確保するための様々な工夫が施されているのです。
一体どのような特徴があるのでしょうか。
まず、ガソリンスタンドの屋根は「キャノピー」と呼ばれており、建築用語からきています。
一見キャノピーは真っすぐで平らに見えますが、実は下からは見えない上の部分では緩やかに傾いており、雨水が流れて中央や外側など一部に集まるようになっています。
そこから配管を通じて排水されるので、キャノピーの上のあらゆる場所から水が落ちてくるということはありません。
また、キャノピーは雪が少し降った程度では太陽の熱で溶けるようになっていますが、寒冷地ではキャノピー自体にヒーターが備わっており、雪を溶かして雪下ろしもせずに済むようになっています。
ただ、あまりにも豪雪になった場合は、スタッフが雪下ろしをしなければならないこともあるようです。
ほかにも、キャノピーによって給油する場所を日光や雨から守られるので、仕事をする従業員の負担も減るのに伴って、セルフ式ガソリンスタンドであれば顧客も雨ざらしにならず、給油口に雨などが入るのを防ぐことができます。
そんなキャノピーですが、稀にアーチ型や普通の三角屋根のキャノピーも存在します。
アーチ型のキャノピーはあまりないので目にとまりますが、平らなキャノピーに比べて施工の費用がかかります。
くわえて平らなキャノピーの方が工期も短く済みますし、平らなキャノピーであれば寒冷地でも雪下ろしの必要がありませんが、アーチ型の場合はキャノピーにヒーターを付けられず雪下ろしを人の手で行わなければならない可能性が高く、手間もかかることでしょう。
しかし、かつて日本で庶民がマイカーをもつようになってきた1970年代は、高度経済成長ということもあり、経済的にも余裕があったのかアーチ型のキャノピーが多く施工されていたようです。
なお、現在新しくガソリンスタンドを建設するにしてもアーチ型のキャノピーはコストが高いため新たにアーチ型のものが建てられることはなかったり、1970年代に建てられたガソリンスタンドはどんどん老朽化でなくなっていったりと、アーチ型のキャノピーはますます姿を見かけなくなっています。
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ガソリンという非常に可燃性が高いものを扱う場所であるガソリンスタンドの建築仕様は、消防法で非常に細かく定められており、建築素材から面積、耐火基準など守るべき項目がたくさんあります。
しかし、ガソリンスタンドのキャノピーが平らでなければならないという法律はないので、本来はどのようなデザインでもよいですが、現在では海外のガソリンスタンドのキャノピーも平らなものが多いことからも、やはり国や地域に問わず平らな形が一番ガソリンスタンドにとって合理的なデザインということなのでしょう。