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トヨタが「超スゴいハイエース」実車公開! ホワイト&ブルーボディに「画期的システム」搭載!? 「H2×HEV」仕様とは

くるまのニュース 2024年11月18日 15時10分

今後、ハイエースが進化していくうえで、重要な水素技術を搭載するモデルが公開されました。どのような仕様なのでしょうか。

■トヨタがスゴいハイエースを実車公開! どんな技術が採用されているの?

 2024年11月16日にトヨタは従来の「ハイエース」とは違う新たな技術を搭載した「ハイエース」を公開しました。
 
 今後、ハイエースが進化していくうえで、重要な技術となりそうです。

「超スゴいハイエース」実車公開

 2021年からS耐のST-Qクラスに初参戦した水素エンジン搭載のGRカローラ。

 その後も進化の手は止まることはありませんが、その裏では実用化に向けた実証実験も並行して行なわれています。

 筆者は2023年6月にトヨタが行なったテクニカルワークショップで水素エンジン搭載したレクサスLXに試乗した事があります。

 ただ、このエンジンはGRカローラに搭載される直列3気筒ターボ(G16E-GTS)ではなく、V6-3.5Lツインターボ(V35A-FTS)をべースに水素噴射インジェクターなどを装着。出力は120kW(163.2ps)となっています。

 水素タンクは床下し、ラゲッジスペースは通常の内燃機関モデルとほぼ変わらず(乗用仕様のため12人乗り)。

 排気量を上げた理由は、水素エンジンの強みである「リーンバーン燃焼」を幅広い領域で行なうためです。これはマツダの直6ディーゼルと似た思想のようです。

 この水素エンジンは同年11月にグローバルハイエースに搭載してオーストラリアの公道で走行テストを実施。

 リアルワールドでの商用利用としての実用性、運転操作性、耐久性などを進めて、実用化に向けた検証が行なわれてきました。

 実際に使った人のフィードバックは「動力性能に関しては十分なレベルにあるが、やはり航続距離はもっと欲しい」との事。

 ちなみに水素エンジン搭載のグローバルハイエースの航続距離は約200kmです。

 当然水素タンクを増やせば航続距離を伸ばすことは可能ですが、ハイエースは商用車のため積載重量や乗車定員を犠牲にしては実用化を考えるとダメです。

水素エンジンハイエースを説明するCJPTの中嶋裕樹社長(トヨタ副社長)

 そこでこのようなアイデアが生まれました。

 それはプリウスと同じ事、つまり「内燃機関+モーター」の水素版にすることでした。

 現在トヨタには様々なハイブリッドシステムがラインアップされていますが、その中で選択されたのはシリーズパラレル式のTHSII(マルチステージハイブリッド)でした。

 具体的には水素エンジン化されたV35A-FTS(120kW)の後ろにFR系のマルチステージハイブリッド(THSIIと4速ATを組み合わせたシステム)を搭載。

 モーター出力は132kWとなっています。これによって航続距離は25%アップとなる250km、走行性能は加速応答が25%アップを実現しています。

 ただ、現状はバッテリーの搭載位置が無く暫定的に助手席位置に装着しているため、乗車定員は1名減り11名(=積載性は若干犠牲になっている)となっています。

 今回、その水素エンジンハイブリッドを搭載したグローバルハイエースに特別に試乗することができました。

 ちなみに車両が完成したのは1か月前、関係者の中でも一部の人しか試乗できていないタイミングで、第三者に試乗させるトヨタの姿勢も驚きです。

 まずは比較用の水素エンジンのみのグローバルハイエースに試乗をします。

 アクセルを踏んでから「ヨッコラショ」とワンテンポ遅れてと発進。

 水素エンジンは燃焼が速いのでレスポンスが良いのが特徴ですが、このエンジンはリンバーン燃焼を実現させるためにはたくさんの空気を取り込む必要から大きなタービンを使っています。

 その弊害でアクセルを踏んでからの応答をしない間が大きい(体感的には約0.5-1秒くらい)のです。

 イメージ的には初期のターボのように途中からドーンとトルクが立ち上がる印象が似ている感じです。

 ただ、過給が始まる2500-3000rpmくらいから大柄かつ重いグローバルハイエースながらも「おーっ、力強い」と感じさせる加速力を見せてくれます。

 個人的には全域でトロいガソリン/ディーゼルのハイエースよりも不満はありませんが、商用で使う事を考えると、このドライバビリティは課題だと思います。

 試しに最後列のシートに同乗してみましたが、加速の度に前後方向に揺れてしまうため、乗員だとクルマ酔い、荷物だと荷崩れの恐れが大きいだろうと予想。

 また、官能面では高回転までストレスなく回るものの、どことなく粒が揃っていないザラつきのある回転フィールはマルチシリンダーであることを考えると気になりました。

■いざ水素エンジン+THSIIのグローバルハイエースに乗ってみると?

 続いて、水素エンジン+THSIIのグローバルハイエースに乗り換えます。

 外観は水素エンジン車に対しての違いはステッカーのみですが、運転席に座わるとシフトは電子シフト化、メーターはフル液晶化されていました。

 同じようにアクセルを踏み込んで発進させると、あの「ヨッコラショ」はなく「スッ」とクルマが動き始めます。

 つまり、水素エンジンの過給が立ち上げるまでの間をモーターアシストでカバーし、全域で段付きの無いスムーズな加速を実現しています。

 これはアクセル全開時よりも、最も使うである過渡領域のほうが効果てきめんだと感じました。

 THSII搭載の乗用車で感じるような電動車感よりもスバルのe-BOXERのスポーツモードのような電動ターボ車的な印象に近いかなと。

 ただ今回搭載のマルチステージハイブリッドは乗用車ではリズミカルな変速が魅力ですが、商用はそれよりもシームレスな加速のほうが合っていると思うので、むしろ通常のTHSIIのほうが相性はいいのではないかと感じたのも事実です。

水素エンジンとハイブリッドを組み合わせる新たな取り組み

 ちなみに官能面では水素エンジン単体よりも高回転域は少々苦しそうな印象がある一方で、加速時などに粒が揃っていないようなザラつき感は薄れており、V6ならではの滑かさが際立ったように感じました。

 ちなみにモーター出力は132kWですが、THSIIのシステム出力は単純にそのまま上乗せではなく、実際は約30kWアシストとの事。

 それ以上のパフォーマンスを求めるならバッテリー出力をより高める必要がありますが、商用で考えれば十分以上のパフォーマンスを備えていると言えるでしょう。

 こちらも最後列のシートに同乗してみましたが、同じように走らせても前後方向の揺れが抑えれているのが一目瞭然。段付きの無い加速はドライバビリティだけなく、乗員や荷物にも大きく影響することを改めて実感。

 モーターアシストによる燃費向上は言うまでもありませんが、筆者はそれに加えてドラビリ向上で無駄にアクセルを踏ませない走りになる事で、実用燃費は更に上がるのではないかと予想しています。

 ちなみに現状は「とりあえずできあがった状態」であり、ハイブリッドの強みとなる回生協調ブレーキの制御も組み込まれていない状態でしたが、そのポテンシャルは想像以上の完成度だったと言えます。

 もちろん、現状の250kmの航続距離で十分かと問われると、素直にYESとは言えませんが、トヨタが長年培ってきたハイブリッド技術を組み合わせることで水素エンジンの可能性をよりアシスト、実用化に向けた階段を登った事は間違いないと思っています。

 ちなみに筆者は同じ水素を燃料とするFCEVを搭載したグローバルハイエースにも試乗したこともあります。

 日常走行はモーター駆動ならではのスムーズな加速と効率の良さは水素エンジン+ハイブリッドよりも高いと感じましたが、高速走行となると内燃機関の強みは出てきます。

 もちろん、トヨタは「水素エンジンの乗用車を出したい」と言う想いはありますが、やはりメインストリームは大型トラックでしょう。水素タンクを搭載するスペースは乗用車より豊富なので、航続距離問題も解決しやすいですので。

今回の水素エンジン+ハイブリッドも「選択肢の一つ」

 ちなみに2025年年春にオーストラリアでの実証実験をスタート。実際の使い勝手や問題点を確認しながらも、フィードバックを開発に活用するそうです。

 筆者は小型車に適するガソリンエンジンと大型車に適するディーゼルエンジンと同じように、水素も適材適所で使えるシステムが必要だと考えていますが、今回の水素エンジン+ハイブリッドも「選択肢の一つ」と言うわけです。

 当然、まだまだ課題はたくさんあると思いますが、今回のトライは大きなステップアップになる事は間違いないでしょう。

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