スズキが世界に誇るSUV「エスクード」には、大きなボディと3列シートを備えた、一風変わった派生モデルがありました。
■スズキに7人乗れる「“3列シート”SUV」あった!
スズキは2024年10月、新型SUVの「フロンクス」を発売しました。
同車は「エスクード」の実質的な後継モデルとなりますが、そのエスクードにはフロンクスとは異なる魅力を備えた、個性的な派生モデルがありました。
エスクードといえば、長い歴史を持つ、スズキが世界に誇る名SUVです。
初代モデルは1988年に登場。国内では2024年をもって4代目の販売が終了したことで、36年の歴史に幕を下ろしました。
そしてエスクードには複数の派生モデルが存在し、その中には「グランドエスクード」という、一風変わった車種もありました。
このグランドエスクードは、スズキが2000年に発売した5ドアのSUV。
当時スズキでは、北米市場で「XL-7」という2代目エスクードをベースにしたSUVを販売していました。
同車は北米において好調な売れ行きを見せていたことから、日本市場への導入が決定。車名をグランドエスクードへと改めて日本デビューを果たします。
このグランドエスクードの特徴は、その大きなボディにあります。
エスクードのホイールベースを延長することで、全長4640mm×全幅1780mm×全高1740mmの大きな車体を実現。
これはスズキの上級セダン「キザシ」の全長4650mmや、3列シートミニバンの現行「ランディ」の全長4685mmに匹敵する値で、国内のスズキ車として最大級のボディサイズを誇るものでした。
この長いボディには3列目シートを備え、ベースのエスクードが5人乗りだったところ、グランドエスクードでは7人乗りへと乗車人数の増加に成功します。
パワーユニットには、最高出力184馬力・最大トルク25.5kg-mを発揮する2.8リッターV型6気筒DOHCエンジン(H27A型)を搭載。
本格的なラダーフレームを採用した1680kgのボディも力強く走らせるパワフルなユニットで、トランスミッションは4速ATを組み合わせていました。
そんなグランドエスクードには、さらに個性的な特別モデルも展開されています。
まずは2002年1月に登場した特別仕様車「KANSAI」です。
これは世界的なファッションデザイナーの山本寛斎氏がエクステリアとインテリアを監修したモデルで、シート表皮は山本寛斎氏がデザインした特製のものを採用。
さらに内装の至るところに木目調のデザインを配した、プレミアム性を楽しめる1台でした。
また2002年6月には、ノルウェーのアパレルメーカー「ヘリー・ハンセン」とコラボレーションした限定500台のモデルも追加。
同車はフロントバンパーをはじめとするエクステリアが専用のデザインへと変更されており、インテリアも専用メーターパネルやファブリックシートなどを備える特別仕様です。
くわえてシートに撥水加工処理を施すなど、よりアウトドア色を強めたカスタマイズが純正状態で施されているのも特徴でした。
これらの特別仕様車を追加するなど、意欲的な展開を見せるグランドエスクードですが、当時の日本市場では3列シートSUVの需要が少なかったこともあり、残念ながら2005年で市場から撤退。
3列シートを備える後継モデルも出なかったことから、日本市場と北米市場とのニーズの違いを痛感する結果となりました。
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このように、グランドエスクードはワイドなボディに強力なエンジンを搭載した、個性的な7人乗りSUVです。
現在の日本市場では、3列シートを採用した大型SUVはメジャーな存在として人気ジャンルとなっていることを考えると、グランドエスクードは誕生の早すぎた、スズキの先見性が垣間見えたモデルと言えるのかもしれません。